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【裂空の弾丸】Dawn of Departure

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【裂空の弾丸】Dawn of Departure

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第三章 科学者と蒼き空を喰らうモノ 3

 飛空艇の上で、夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)たちが飛空艇に近づく敵を排除していた。
「どけぇっ! わしらの邪魔をするなぁ!」
 甚五郎が獣のごとき声でさけび、飛空艇にへばりつこうとする飛行生物たちを拳で撃退する。
 草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)ブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)が、互いに協力しあって遠距離攻撃に打って出た。マスケット銃で敵を撃ちぬくブリジット。羽純が光の刃の魔法を放つ。次々と飛行生物たちを倒していくが、もちろん、攻撃ばかりできるわけでもなかった。飛行生物の反撃が、二人に襲いかかる。
「羽純さん! ブリジット! あぶないです!」
 飛行生物の攻撃を受け止めたのは、ホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)だった。
 ホリィの手からあらわれ出た闇の帳が、飛行生物の攻撃の衝撃を吸収する。その間に、甚五郎が攻撃を仕掛けてきた飛行生物に反撃した。拳がめり込み、飛行生物は飛空艇から殴り飛ばされた。
「ホリィ、助かった。感謝する」
 羽純が言う。
「ありがとうございます、ホリィ」
 ブリジットも、お礼を言った。ホリィは照れくさそうに頭をかきながら笑った。
「い、いやぁ……良いんです。これがワタシの役目ですから」
「みんな、気を抜くな。連中の動きが活発になってきてるぞ。うかうかしてると、こちらも危ないかもしれん」
 甚五郎が三人に言った。三人はうなずき、気を引き締めて、再び飛行生物の迎撃にかかった。
 四人の近くでは、シャノン・エルクストン(しゃのん・えるくすとん)たちも飛空艇に乗り込んでこようとする飛行生物たちの迎撃に出ていた。
「ゼノビアさんの発案した作戦でいこう。グレゴさん、頼んだわよ」
「うむ、任された。このテンプル騎士団、グレゴワール・ド・ギー! たかが魔物の群れ程度、恐れることはないわ!」
 グレゴワール・ド・ギー(ぐれごわーる・どぎー)がうなずいて答えた。
 テンプル騎士にいたという勇敢な英霊は、輝くオーパーツソードを手に、飛行生物たちにその切っ先を向ける。ワイルドペガサスに乗って、グレゴワールは臆することなく飛び立った。
「ゼノビアさん」
 シャノンが横にいたゼノビア・バト・ザッバイ(ぜのびあ・ばとざっばい)にふり向く。ゼノビアは弓矢をかかげて言った。
「わかってます。それじゃあ、真柄さん、護衛をお願いしますね」
 巨大な太刀を手に構える真柄 直隆(まがら・なおたか)が、うなずいた。
「任されよう。この真柄直隆。グレゴワール殿には負けん!」
 直隆が言うと同時に、飛行生物たちがシャノンたちへと襲いかかってきた。
「さあ来い、物の怪共! この鬼真柄がお相手いたそう!」
 直隆が巨大な太刀のリーチを活かし、近づいてくる飛行生物を払いのける。その間に、ゼノビアは弓矢、シャノンは天のいかづちで、囮役となったグレゴワール目がけて飛んでくる飛行生物たちを狙った。孤軍奮闘するグレゴワールの間を縫って、放たれた矢や、天からの電光が、次々に飛行生物たちを攻撃する。シャノンとゼノビアに近づいてこようとする飛行生物は、直隆が果敢に退けた。
 戦いながら、シャノンはまるで自分の気力を回復させるかのようにつぶやいた。
「早くハンバーガー食べたいなぁ……」
 ゼノビアが呆れたように言う。
「そんなこと言ってる場合じゃありませんよ、シャノン。戦いが無事に終わったら食べられますから、それまで我慢してください」
「うん、わかってるって。ただ、言ってみただけ。よっしっ! 来い、飛行生物ども!」
 シャノンはさらに気合いを入れて、魔法を放った。翼を撃たれた飛行生物たちは、飛ぶ力を失って地上へと落下していく。
 風宮 明人(かざみや・あきと)が、双眼鏡でそれを見ていた。
「飛行生物は……まるで本当の動物みたいだな。それにしては、胸にある石みたいなものが気になるけど……」
 つぶやいた明人の一言に、パートナーのソニア・クラウディウス(そにあ・くらうでぃうす)が言った。
「あれは、機晶石なのでしょうか? なんだか、似ている気がしますけど」
「そうだね。遠くからだからなんとも言えないけど、確かにそんな気がする。もしかしたら、ベルの機晶石ともなにか関係が……」
 と、明人が言ったとき、飛行生物が近づいてきた。もう一人のパートナー、ユーリィ・サファイロス(ゆーりぃ・さふぁいろす)がそれを見逃さなかった。
「明人様! 飛行生物が近づいてきています!」
 ユーリィはすかさず、小型列車砲で攻撃を仕掛けた。発射された弾が飛行生物を撃ち、ソニアと明人はなんとか難を逃れる。間一髪で横っ飛びに飛んで逃げた二人は、ユーリィの後ろに回って反撃に打って出た。
「明人、どいてください。いきますよ、ユーリィ」
「はい、ソニア様」
 二挺拳銃のように二つに分裂していた失われし文明の機晶銃を組み立て、両手銃にしたソニアは、小型列車砲を構えるユーリィとタッグを組むようにして銃を構えた。一度は攻撃を受けてひるんだ飛行生物が、再び襲ってくる。ソニアはタイミングを見計らって、引き金を引いた。
「今です!」
 同時に、ユーリィの小型列車砲も猛り吼える。
 ダンッと、両手銃の弾丸が飛行生物の額に穴を穿つ。それから二つ目の弾を受けた飛行生物は、どぉんっと音を立て、ぷすぷすと焼け焦げながら落下していった。
「僕の出番がなかったじゃないか……」
 天のいかづちを放とうと、魔法の準備を整えていた明人が言う。
 ソニアはちょっと悪戯っぽい笑みを浮かべてから言った。
「明人ではなく、私があなたの剣ですからね」