天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

【裂空の弾丸】Dawn of Departure

リアクション公開中!

【裂空の弾丸】Dawn of Departure

リアクション


第二章 ホーティ盗賊団 1

 飛空艇の外に飛び交う謎の飛行生物たち――
 戦いを得意とする契約者たちは、迎撃に乗り出した。
「やれやれ……。このまま、正体もわからないものたちに、好き勝手されるわけにはいきませんね」
 飛空艇の穂先に当たる場所に身を乗り出しながら、御凪 真人(みなぎ・まこと)が言った。
 その手には、魔杖と呼ばれるシアンアンジェロの杖。氷雪比翼と呼ばれる氷の翼の生えたマントが、ばさばさと音を立てる。真人は杖を振って、召喚獣たちを召喚した。サンダーバードとフェニックス。二体の召喚獣は、飛行生物たちに向けて攻撃を仕掛けにいった。
 その間に、真人は飛空艇上から魔法攻撃を仕掛ける。
 セルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)が、突破口を開くために空中に飛び立ってから加速した。
「真人! 遅れないでよ!」
「わかってますよ」
 真人は杖をかかげた。
「我は雷光操る者……我の名において、空飛ぶものに滅びを与えん……サンダーブラスト!」
 凄まじい雷光が空を割り、飛行生物たちに襲いかかった。
 電撃に撃ちぬかれて、次々に地上へと落下していく飛行生物たち。撃ちもらした敵を、セルファが自慢の槍で切り倒した。その周囲で、召喚獣たちが飛行生物たちとつかみ合い、炎や雷撃を繰り出す。真人たちは、確実に敵を仕留めていった。
 そのとき、旋回した小ドラゴンたちを見て、清風 青白磁(せいふう・せいびゃくじ)がさけんだ。
「マズイ、こっちを狙っておるぞ!」
 素早く動き回る飛行生物たちは、口から光線を放った。
 光線が飛空艇の船頭や甲板に当たり、どぉんっと船を揺さぶる。
 間一髪で光線から逃れた騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は、槍を構え直しながら言った。
「これは、機晶エネルギー……? 相手はエネルギー波を使うよ! 気をつけて!」
 詩穂は迫りくる飛行生物の攻撃を避けると、さっとミルバスに乗り込んだ。トビのような形をした一人用の飛空艇みたいな乗り物だ。詩穂は上空へと舞い上がった。続くように、青白磁がブラックダイヤモンドドラゴンに乗り、セルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)が六熾翼の三対の翼を広げて飛び上がった。
「連中、いったい何が目的なのかのぉ……」
 青白磁がつぶやいた。詩穂は肩をすくめた。
「さあね。どっちにしたって、敵なのは間違いないよ。油断ならない」
「その通りですわ。同じ空中戦とはいえ、こちらは小回りの利く飛行翼……さて、どこまでついてこられますか!」
 セルフィーナはそう言うと、びゅんっと飛行生物たちの間を縫うように飛んだ。
 並の小型飛空艇では追いつけない凄まじいスピードには、飛行生物たちも翻弄される。右を向いたり左を向いたり、上を向いたり、セルフィーナの姿を捉えるのは困難だった。
 なにか光るものがきらめいたかと思えば、飛行生物たちの翼や身体が切りつけられている。セルフィーナの脚部に取りつけられた刃が、瞬時に敵を切り裂いたのだった。
 詩穂が負けじと、ミルバスの機動力を上げた。スピードを増したミルバスが素早いドラゴン型の敵を追い、詩穂は聖槍ジャガーナートと呼ばれる槍でとどめを刺した。
「わしも負けてられんのぉ」
 二人を見ていた青白磁がそうつぶやく。
 ドラゴンの上で構えを取ると、無数の、小さな鳥のような飛行生物たちが襲いかかってきた。しかし、青白磁は逃げなかった。腰だめに落とした仁義の大太刀を武器に、飛行生物たちの群れに突撃していく。大太刀に切り裂かれた飛行生物たちが、次々と地上へ落下していくのを、真人たちが見ていた。
「さすがに……詩穂さんたちはやりますねぇ……」
「私たちも負けてられないわよ!」
 セルファが言う。真人はしかとうなずいた。
「もちろん。――行きますよ!」

「敵戦力は謎の飛行生命体だけだ! ただし、他に一部の馬鹿どもが出てくる可能性はあるがな! どちらにしても構わん。最大戦力を活かしてぶちのめせ! order! the! only・one! search&deatroy!」
 甲板から飛びだした味方戦力たちにかかる突撃の声。
 告げたのは、シャンバラ教導団所属の相沢 洋(あいざわ・ひろし)という男だった。
 小型飛空艇ヘリファルテに乗りながら、洋は周りの仲間たちに鼓舞の声を出していく。小型飛空艇オイレに乗って、洋の隣を飛ぶ乃木坂 みと(のぎさか・みと)は、心配そうにつぶやいた。
「ついに戦いが始まりましたか…………無茶なことにならなければ良いのですけど」
 そのとき、小型飛空艇アルバトロスに乗ってその近くを飛んでいた相沢 洋孝(あいざわ・ひろたか)が言った。
「ばっちゃん! そんなこと言ってる場合じゃないって! 敵が来る!」
「ばっちゃんではありませんわ! わらわはまだ若いと何度言ったら……」
 みとは怒り狂ったような声で言うが、いまはそれどころではなかった。
 うなりをあげた飛行生物たちが二人目がけて飛んでくる。くちばしや爪の攻撃を間一髪で避けて、二人は反撃に転じた。
「対空砲火を実施します。友軍の皆さんは被弾しないように注意してください」
 みとの漆黒の杖から、ブリザードやファイアストームといった魔法攻撃が放たれた。警告を発せられた友軍の小型飛空艇が避けた後で、魔法は次々と飛行生物たちを撃ち落としていった。
「俺も負けてられないって! 五〇〇年先の未来の銃! 受けてみろ!」
 未来から来た洋孝のみが持つことを許される、フューチャーアーティファクトと呼ばれる銃からビームが飛ぶ。ビームは次々に飛行生物たちを撃ちぬいていった。と、洋孝の後ろに、小型飛空艇ヴォルケーノに乗ったエリス・フレイムハート(えりす・ふれいむはーと)がついた。
「洋孝様。援護します」
「ああっ! 任せたぜ!」
 洋孝の返事を聞くと、エリスはヴォルケーノのミサイル発射口の照準を敵に合わせた。
「空対空ミサイルポッド、目標補足、順次発射開始します。以上」
 エリスはミサイルを撃ち出すと、さらに狙撃銃型の光条兵器も体内から生み出した。形となった狙撃銃型光条兵器は、洋孝の後ろから敵を狙撃していく。そこに、洋孝のアーティファクトから発射されるビームがとどめを刺した。
 それを見ていた洋は、感心したようにつぶやいた。
「ふむ……みなやるではないか」
「洋さま。そう悠長に構えている場合ではありませんわ。まだまだ敵の数は多いのですから」
 みとが助言すると、洋はふんっと顔をそむけた。
「わかっている! この相沢洋、油断などせんわ! 全軍突撃ぃ! 機体の破損など気にするな! 飛空艇の突破口を開くぞぉ!」
「さすがですわ、洋さま! それでこそわらわの選んだお方……!」
 ドドドドと飛行生物たちに突撃する洋たちを見て、みとは恍惚に満ちた顔でそう言った。

 その様子を、アルテミスボウの矢で敵を射貫いていた清泉 北都(いずみ・ほくと)が見ていた。
「向こうは派手にやってるね。怪我でもしなければいいんだけど……」
「それは無茶な話というものでございます、北都」
 レッサーワイバーンに乗って空を舞っていたクナイ・アヤシ(くない・あやし)が言う。
「あれだけの特攻をするのですから、多少の被害は覚悟の上でしょう。ほら、ごらんください」
 クナイの言う通り、突撃をかけた洋たちは多くの飛行生物を倒したが、その代わりに乗っていた小型飛空艇やドラゴンたちが大破と負傷を繰り返し、ついには地上に落下しているものもあった。
 パラソルチョコに乗って緊急脱出した洋が、フワフワと漂いながら落ちていくのが見える。
「ふむ……能力は悪くないな。問題は材質がチョコであることとデザインか。次回、チャンスがあればパラシュートザックを開発してもらおう……」
 と、洋はつぶやいていた。
「ともかく、こちらも負けてられません、北都。同じドラゴン同士、どちらが上か決めようじゃありませんか。いきますよ、レイ」
 クナイが、レッサーワイバーンの名を呼んだ。
 ワイバーンが高速で飛ぶ。風術で突風を起こして敵の動きを乱すと、クナイはシーンリングランスを撃ち込む。小さなドラゴンたちは、エネルギー波を放つ時間さえなかった。北都も宮殿用飛行翼で空を飛び、敵の攻撃をたくみに避けながら攻撃した。アルテミスボウの弓矢が、飛行生物の身体を射貫いていく。
 機晶ドラゴンに乗る早川 呼雪(はやかわ・こゆき)たちも、それに続いた。
 エメラルドセイジの矢を放ったり、機晶ドラゴンにブレスに攻撃させたりする。ひるむことない、敵の口から放つエネルギー砲を見ながら、呼雪は考えた。
(あれは機晶石の力? いずれにしても、可能なら捕獲するのが得策か)
 攻撃を受けて地上に落下していく飛行生物たちを見ながら、呼雪はしかし、考えを切り替えた。
 いまはそれどころじゃない。捕獲は後で考えることにしよう。呼雪の顔色から思考を読んだのか、聖邪龍ケイオスブレードドラゴンに乗るヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)が言った。
「そういうこと、呼雪。いまは連中をどうにかするのが先さ」
 ヘルの周りに飛行生物たちが集まってくる。さらに、飛空艇のほうへも足止めに回っているのが見えた。
「なーるほど。すんなり到着させてはくれないわけか」
 ヘルはそう言って、大魔杖バズドヴィーラをかかげ、召喚獣バハムートとフェニックスを召喚した。
 バハムートとフェニックスは雄叫びをあげ、ヘルの周りを旋回して飛行生物たちに攻撃を仕掛ける。バハムートの口から放つ強烈な波動砲と、フェニックスの炎が、次々に飛行生物たちを堕としていった。
 それを見ていた、炎水龍イラプションブレードドラゴンに乗る遠野 歌菜(とおの・かな)が、感心したようにつぶやく。
「うわ〜……バハムートくんもフェニックスちゃんも、強烈だぁ……」
 ヘルと同じ聖邪龍ケイオスブレードドラゴンに乗る月崎 羽純(つきざき・はすみ)が、それを咎めた。
「そんなこと言ってる場合じゃないぞ、歌菜。敵はこっちにもくる」
「わかってるってばっ……じゃあ、いくよ! 戦場に響け! 私の歌!」
 歌菜はドラゴンに騎乗したまま立ち上がり、飛行生物たちに向けて歌を響かせた。

響け 祈りの声
解き放て 内なる力

私は 誓い 祈る
私は 戦い 掴む

歌は雨 雨は光
光は闇 闇は歌

祈りの声よ 我が力よ 降り注げ 
阻むものを 退け 勝利をこの手に


 ハーモニックレインと呼ばれる魔力の込められた歌は、歌声の響く範囲にいる敵にダメージを与える。
 まともに歌声の攻撃を受けた飛行生物は、まるで強烈なハンマーで殴られたかのように頭をくらくらさせて、落下していった。
 歌菜が歌っている間、それを邪魔しようとする飛行生物もいる。それを阻むのは羽純の役目だった。近づいてくる飛行生物を、羽純は両手に一本ずつ握った聖槍ジャガーナートで切り裂いていった。
「いくぞ、歌菜! 遅れるなよ!」
「うん! わかったよ、羽純くん!」
 歌声が終わると、二人は同時に槍を振るって飛行生物たちに攻撃を仕掛けた。羽純と同じように、歌菜も二つの槍をたくみに操る。薔薇一閃――赤い閃光を放ちながら、二人で同時に息の合った乱撃を放つ技は、次々に飛行生物を切り倒していった。
 そのとき、仲間のほうから甲高いさけび声が聞こえた。
「まずい! 船内に乗り込んだやつがいるよ!」
 北都の声だった。羽純も歌菜も、攻撃をやめて飛空艇のほうを見る。
 飛行生物たちの一部が、隙を突いて、飛空艇へと乗り込んでいた。