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リアクション
第16章 いいのかな?
少人数向けの小さなレストランに、ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は1人で訪れた。
「混んでるですねー……」
お店の中はほぼ満席だった。
カウンター席も、1人客で埋まってしまっている。
「ん〜? あれは……」
4人用のテーブルを1人で利用している男性がいた。
テーブルの上には、3人前ほどの料理が並んでいるが、全部自分で頼んだものらしく、美味しそうにがつがつ食べている。
「ご一緒してもいいですか〜?」
ヴァーナーが近づくと、その男性――王 大鋸(わん・だーじゅ)は顔を上げて、ヴァーナーを見てにかっと笑みを見せた。
「おお、いいぜ!」
そしてヴァーナーの為に、テーブルを開けてくれた。
「ありがとですー」
ヴァーナーは席につくと、日替わりのおすすめランチを注文した。
ドリンクは飲み放題だったので、自分で好きな物を注いで、席に戻ってくる。
「いろいろたべてるですねー。たくさん楽しめていいですねー」
テーブルにはカキフライ定食に、サイコロステーキ、カツカレーにピラフが並んでいた。
「てめえは胃袋小さそうだからなー。大人になったら、これくらい軽いぞ。あ、女の子じゃ無理か。
で、何を頼んだんだ?」
「ボクは日替わりのオススメのにしたですよ〜。好きな料理もいいですけど、日替わりであたらしいおいしい料理に出会えるとうれしいんですよ〜」
「……なるほど、そうだな。よし、俺も食うぜ!」
呼び出しボタンを押して、大鋸はヴァーナーと同じ日替わりランチまで注文した。
今日のおすすめランチは、から揚げ定食だった。
沢山のから揚げに、キャベツ。
漬物と里芋の煮物。それとご飯とお豆腐の味噌汁だった。
ヴァーナーがから揚げを1個食べる間に、大鋸はから揚げ1個とステーキ1切れと、カツカレー、ピラフを1口ずつ食べた。
疲れないかな? と思うほどの食べっぷりだ。
「よくはたらいて、よくおべんきょうしてる、しょうこ、ですねー」
ヴァーナーはにこにこ見守っていたけれど。
ちょっと聞いてみたい事があって。
箸を止めて大鋸に話しかける。
「おはなし、いいですか?」
「ん? なんだ?」
「……最近、ちょっと悩んでるんです。ボクはロイヤルガードでいいのかなって」
ヴァーナーの言葉に、フォークを口に入れながら大鋸は目を向けてきた。
「なんだか戦争とかでお仕事があって、ロイヤルガードはみんなを守るのがお仕事ってがんばってみたけど、戦争とかイヤって思っちゃうんです……」
「まあ、そうだろうな」
ヴァーナーはまだ、中等部の年齢だ。外見年齢は11歳、身長も130センチしかない。
戦士の外見ではなかった。
「大鋸おにいちゃんは、ロイヤルガードってどんな人がやるべきだって思うですか?」
「んー、ロイヤルガードってのは、女王や代王2人の護衛みたいなもんだろ? 戦争に行けとか最近命令されたっけ? だとしたら、俺の耳には入らなかった! 都合の悪いことは聞いてないことにする。それに限る」
「戦争に行けとか言われたわけじゃなくて……皆をまもるために、戦争するってことが、ちょっとわからなくなるんです」
「んー……俺もよくわかんねぇけど。でも、守りたいヤツを守れる強さがあるのに、守る為の情報がこなくて、戦えないのはイヤじゃないのか? 俺こそ、俺の事ロイヤルガードに相応しくないって言うヤツは多いだろうし、俺自身もそう立派な志があるわえじゃねぇ。けど、ロイヤルガードだってことで、得してることも多いから、俺はまだロイヤルガードでいるつもりだ」
ヴァーナーは箸を止めたまま、大鋸の話を聞いていた。
「どんな人がやるべきかってのは、俺にもよくわかんねーが、ヴァーナーがロイヤルガードでいいのかどうかといえば、いいに決まってる。選ばれて、望まれててめぇはロイヤルガードになったんだからな」
「……はい」
「なんだァ? もう腹いっぱいなのか。残すんなら食ってやるぞ」
「あ、まだ食べとちゅうです。えっと、よくわからないこと聞いてばかりでごめんなさいです。おにいちゃんのお話が聞けてうれしかったです!」
ヴァーナーは煮物に箸を付けながら微笑んだ。
「そっか、ま、色々あるけど、これからもよろしくな!」
大鋸は明るく笑うと、ご飯を汁物のように口の中に流し込んでいく。
(選ばれて、望まれてて……ですか……)
自分が選ばれた理由は、力が強かったから、ではないと思う。
ロイヤルガードとして、何が出来るのだろうか。
ちょっと冷えたお味噌汁を飲みながら、ヴァーナーは考えていくのだった。