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第1章 カフェに立ち寄って
空京の街に、力強い太陽の光が降り注いでいる。
晩夏の午後3時。日陰にいてもまだまだ暑い時間だ。
木陰で涼む人々の姿もあれば、お茶にしようと店に入る人々の姿もあった。
駅前にあるカフェには、遊びに訪れていた若者達の姿が多くみられた。
「いらっしゃいませ。空いているお席へどうぞ」
店員のハキハキした声が響いてきた。
メイドのエリスフィア・ホワイトスノウ(えりすふぃあ・ほわいとすのう)を連れて、買い物に訪れていた白雪 魔姫(しらゆき・まき)は、店内を見回して空いている席を探す。
「空いている席は……あら」
魔姫は壁側の4人掛けの席でドリンクを飲んでいる少女に目を留めた。
「アナタもお茶しにきたの?」
魔姫が近づいて声をかけるとその少女――イングリット・ネルソン(いんぐりっと・ねるそん)は顔を上げて立ち上がり「ごきげんよう、お姉さま」と頭を下げてきた。
「ふふ、学校や事件で会ったことはあるけど、あまり話したことはなかったわよね。良かったらご一緒してもいいかしら?」
「もちろんです。1人で退屈していたので、嬉しいですわ。あ、お荷物はこちらに」
イングリットは魔姫の為に椅子をひき、エリスフィアの持つ荷物を受け取ってソファー席の上に乗せた。
「恐縮です」
エリスフィアはイングリットに礼を言うと、魔姫が腰かけた後に椅子に腰かけて、メニューを彼女の前に広げた。
「こちらのお店は、味だけではなく盛り付けも綺麗なのでとても参考になりますよ。紅茶との相性も良いですし」
料理は簡単なものが多いが、若者向けのお店というもともあり、お洒落なものが多かった。
「今日はエリスとショッピングに来たのよ。そのついでにココの店に寄ってみたんだけど、ワタシはこの店のミルフィーユが好きなのよね」
魔姫が指差したミルフィーユも、沢山の果実で可愛らしく美味しそうに飾られている。
「とても美味しそうですわ……。わたくしのお勧めは、葡萄のタルトです」
「それじゃ、今日はそれ頼んでみようかしら」
「ええ! わたくしは、ミルフィーユ戴いてみますわ」
魔姫は自分とエリスフィアの分のタルトと、紅茶を注文し、イングリットはミルフィーユを追加注文した。
「そういえばアナタは休日、どんな風に過ごしているの? 今日は買い物かしら?」
届いたケーキをフォークで切りながら、魔姫がイングリットに尋ねた。
「今日は空京で行われた格闘技の試合の観戦に来たのです。己の肉体一つを武器に、闘う戦士達のお姿……すばらしかったですわ!」
そして、普段は自己鍛錬の為に、道場に通ったり、知り合いと手合せをしたり、対戦相手を求めて、大荒野を巡ったりしているらしい。
目をきらきら輝かせて、イングリットはシャンバラの強者達について魔姫に語るのだった。
「アナタって……見かけはお嬢様なのに、パラ実生みたいなところがあるわよね」
魔姫がくすっと笑いながら言うと。
「実際、パラ実で学んでみたいとも思いますの。四天王を相手に、どこまでわたくしの技が通用するのか、試してみたいのですわ」
「いや、パラ実って一応実業高校だから、学校で学べるのは仕事に役立つ学業のはず……はず、なんだけどね」
魔姫はパラ実にも通っていたことがあり、実態を知っているからこそ、イングリットの言葉に苦笑してしまう。
「魔姫お姉さまは、買い物にいらしたのですよね? お休みの日は、ショッピングを楽しまれることが多いのですか?」
イングリットはエリスフィアが持っていた荷物にちらりと目を向ける。
高級ブランドの紙袋が多い。
「ええ。綺麗なものは見ているだけでも楽しいし……でもつい、買っちゃうのよね」
魔姫は綺麗なアクセサリーが大好きだ。
そして、エリスフィアに可愛い服を着させて楽しむ趣味をも持っているため、可愛い服もつい購入してしまう。
「っと、あら、もうこんな時間……つい、話しこんでしまったわ」
店の中に射し込んだ夕日で、魔姫は時間を知り、エリスフィアと共に立ち上がった。
「今日はありがとう、とても楽しく過ごせたわ」
そう言って、少し多めにお金を置く。
「エリスもお話を聞けて、楽しかったです」
エリスフィアが荷物を持ち、ぺこりと頭を下げた。
「わたくしこそ、お姉さま達とお話ができまして、とても嬉しかったですわ!」
声をかけてくださり、ありがとうございます、と。
イングリットは頭を下げて、2人を見送ってくれた。
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