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リアクション
【6】
「雲で釣りをしたことはあるけど、まさか泳げるとは思わなかったな」
早川 呼雪(はやかわ・こゆき)とヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)、瀬島 壮太(せじま・そうた)は浜辺にいた。
雲遊び用の雲には魔法がかけられていたが、島周辺の雲にも似たような魔法がかけられている。
海のように泳げるように、という配慮で、雲は気体と液体の中間のように変化している。
「感触は液体だけど、まったく濡れないんだな」
「へぇ掬おうとしても、気体だからうまく掬えないや。量がある時は水っぽいのに少量だとだめなんだね」
呼雪とヘルは不思議そうに雲を見つめた。
「あ! イルカ!」
壮太は海を指差した。
「……あ、違う。ただのサーファーか。んだよ、期待しちまったじゃねえか」
「瀬島はよほどイルカが好きなんだな。久しぶりに遊びに誘ってきたと思ったら、これが目当てか」
「だってイルカだぞ、イルカ! 噂じゃ真っ白なイルカなんだってよ、早く見てみてえ!」
そう言って、子どものように目をきらめかせた。
この雲島では、付近に生息するクモイルカと一緒に泳ぐことが出来るのだ。
「まぁそれだけじゃねぇけどな。最近、おまえとも会えてなかったし、夏のバカンスぐらい一緒につるみてぇと思ってよ」
「それは俺も同感だ。久しぶりに瀬島の顔が見れてよかったよ」
呼雪は微笑んだ。
「……楽しみと言えば、タリアさんの空着も楽しみだなー」
「しばらく会わなくても、そこは相変わらずなんだな。人のパートナーに手ぇ出すなよ?」
「心配すんな。ダチのパートナーにはちょっかい出さねえ主義だ」
「ごめんなさい。遅くなって」
とそこに、着替えたタリア・シュゼット(たりあ・しゅぜっと)がやってきた。
タリアの空着は、胸元と背中が大きく開いた白のワンピースと同色のロングパレオ。
品のある大人の色気に、思わず壮太の顔もだらしなく緩んだ。
「やべえタリアさん超似合ってる!」
「ありがと、壮太くん。イルカも真っ白だっていうから、同系色の方が警戒されないかと思ってこれにしてみたの」
「うん、いいね。似合ってるよー」
「ああ」
ヘルが褒めると呼雪も頷いた。
「しかし、空着と言っても水着だよな、これ。一応、着用が義務らしいが……」
「別に空泳ぐのに何着ててもそう大差ねえと思うけど、まぁどっちかと言えば気分の問題なんじゃね?」
「バカンスだからか? じゃあパーカー羽織ったまま雲海に入っても大丈夫だよな?」
「ん? なんでだ?」
「……日焼けしてヒリヒリするのがヤなんだよ。だからあまり脱ぎたくない……」
とその時、後ろからヘルが呼雪に抱きついた。
「いいんじゃない、そのままで。それより、早く行こうよー」
「ダメだ。まだ準備運動が終わってないぞ」
そう言ってヘルの腕をほどく。
「ちぇっ。呼雪は真面目なんだから」
それから4人は準備運動を始めた。
「……ところで早川。空大に入学したって聞いたけどもう慣れたか?」
「学外での活動も多いけれど、最近は大分慣れてきたと思う。雰囲気も開放的で落ち着くし。瀬島はどうなんだ?」
「オレは蒼学の大学部で幼稚園教諭の資格を取ろうと思ってるんだ」
「幼稚園の先生か」
壮太の面倒見の良さを思えば“らしい”な、と呼雪は思った。
「けど、ピアノが難しすぎて手に負えねえんだよな。昔っから音楽はあんまり得意じゃねえんだよ」
「ピアノか……」
「あ、そう言えば早川ってピアノ専攻だよな? なんか上達するコツとかないのか?」
「どの段階で詰まっているかにもよるけれど、もしかしてピアノに苦手意識とか……妙に気を張って弾こうとしていないか?」
「?」
「楽器は自分の心や状態を音で返してくる。初対面の人に自己紹介するような気持ちで椅子に座ってみたらどうかな」
「ふぅん。自己紹介か……」
「俺はピアノは友達みたいなものだったから分かり難い感覚かも知れないが」
「んなこたぁねえよ、参考になった。ためしてみるよ、ありがとな」
「準備運動終わったよ。早く海に行こうよー、呼雪ぃ」
ヘルは唇を尖らせて、呼雪のパーカーの袖を引っぱった。
「せっかくこんなところにまで来たんだから、僕としては早く思いっきりキャッキャッしたいんですけどー」
「しょうがないな……」
2人の様子に、あいつらも変わんねえで何よりだなあ、と壮太は思った。
ただ同時に、オレもせっかく恋人出来たんだからもうちょいリア充してえなあ……という想いもよぎった。
「なに羨ましい?」
壮太の視線に気付いたヘルがニヤニヤと笑った。
「ま、まぁな……」
「壮太の方は最近どうなのー?」
「え? まぁ幸せだけど、ちょっとだけ物足んねえかな……」
「ふぅん。まだまだこれからって感じかな。もっとイチャイチャ出来るといいねっ☆」
「イチャイチャもいいけど、その前に紹介してほしいな」
「?」
不意に聞こえた女性の声に、ヘルは辺りを見回した。
「ああ、ここだ」
壮太は、左手の人差し指に装着した指輪型機晶姫のフリーダ・フォーゲルクロウ(ふりーだ・ふぉーげるくろう)を見せた。
ヘルも、そしてタリアもまじまじと指輪を見つめた。
「初めて見る顔の子もいるのね。こんにちはヘルちゃん、タリアさん」
「壮太がお洒落な指輪してるなー……と思ったら、そっか、フリーダちゃんって言うんだ」
「こちらこそよろしくね、フリーダさん」
ヘルとタリアは微笑んだ。
「壮ちゃんね、久しぶりに遊びに連れて来てくれたのよ。恋人と過ごすのに忙しいから、私はいつも後回し」
「あら……それは寂しいわね」
けど、私も分からないでもないわ……とタリアは呼雪とヘルを見た。
「ところで、紹介がまだって……?」
タリアは尋ねた。
「そうなの。他のパートナーは会ったことあるらしいのに、私はまだ紹介すらされてないの。不公平よね」
「まぁそうだったの。私は会ったことあるけど、背が高くて……でも、可愛らしい子よ」
それから壮太を見た。
「壮太くん、後でちゃんとフリーダさんにも紹介しなきゃダメよ」
「わ、わかってるよ……」
皆の前で叱られて、壮太はちょっと落ち込んだ。
「あら、ちょっといじめすぎたかしら。壮ちゃん、そんな顔しないで。ごめんね」
5人は、ガイドブックにあったクモイルカがよく現れるという小さな浮遊岩の島に向かった。
クモイルカは空に棲む不思議なイルカで、真っ白な神々しい姿から幸せを呼ぶ生き物だと言われている。
生態はあまり知られていないが、雲の中を好んで住処としているそうだ。
「見つけた。イルカの群れだ」
呼雪は、静かに、と唇に人差し指をあて、岩陰からその様子を見つめた。
しばらく雲の海を気持ち良さそうに泳ぐ彼らを見守っていると、向こうがこっちに気付いて寄ってきた。
「随分、好奇心が旺盛な生き物なんだな。人を恐れてはいないようだ」
「か、かわいい……」
呼雪とタリアはそっと背中を撫でた。イルカの肌はたまごのようにすべすべしている。
「うわー、イルカいたよ! 本当に真っ白だよ!」
ヘルは目を輝かせ、イルカに抱きつく。
それに、壮太はぎょっとした。
「こ、こら。あんまり乱暴するんじゃねぇよ。イルカが驚いたらどうすんだ」
「でも、別に平気そうだよ? ほら見て、お腹を擦ると気持ち良さそうに鳴くんだよ」
「ほんとだ……」
壮太もおそるおそるイルカに触った。イルカは、キュウキュウ、と甲高い声で鳴いた。
「海のイルカは鳴き声と超音波でコミュニケーションを取っているそうだが、このイルカはどうなんだ?」
呼雪はふと疑問に思った。
鳴いてるところを見ると声で仲間と意思疎通するんだろう。超音波の有無はわからないが、海のイルカとそう変わらないように思える。
「なぁヘル。一緒に泳いでみようぜ」
「うん」
壮太とヘルは、イルカと並んで泳いでみた。
イルカを怖がらせないよう気を使って泳ぐが、壮太の目はきらきらしてその興奮を隠しきれていなかった。
呼雪は別のイルカを撫でながら、子どものような2人を温かく見守る。
「やっぱり……この世界は、人だけのものじゃないな」
イルカを見て、呼雪は思った
「保護だの何だのは範疇外だ。でも……パラミタを失わせるわけにはいかない」
決意を新たにする。
その時、ふと自分達以外のグループも浮遊岩にいるのに気が付いた。
浮遊岩の小島の反対側から、時折キャッキャッと聞こえる楽しそうな声は女の子の声だった。
「野郎の声が聞こえない、と言うことは女子だけのグループだ。それも20代前半〜半ば。人数は4〜5人ってところだな」
「壮太くん、今の声だけでわかるの?」
目を丸くするタリアにフリーダが言う。
「こういう才能だけは人一番あるのよね、壮ちゃんは」
「うっせえな。だけ、は余計だ、だけは。まぁこんなとこで会ったのも縁だし、ちょっと挨拶してくるわ」
「いや、必要ないだろ」
呼雪の突っ込みをスルーして、壮太は小島の反対側に。
そこには彼の目利きどおり、イルカと戯れる20代半ばのお姉さんたちがいた。しかも全員美人だ。
これでは尚のこと声をかけなくては。
「えー、ナンパ?」
「そんな警戒しないでよ、お姉さん。ここで一緒になったのもなにかの運命だし、挨拶ぐらいしとこうかなって思っただけだって」
「ほんとにぃ?」
「ほんとほんと。で、お姉さんたちどっから来たの? どこ住み?」
「空京よ。空京大学病院って知ってる? そこのナースなの」
「空京大学病院……?」
壮太は勿論その名前を知っている。
知っているが故に表情が翳ったその時、ピンクの象の獣人がイルカと泳いでこちらに来るのが見えた。
「あ、ファン子先輩。おかえりなさい」
「!?」
彼女の名はアエロファン子。
空京大学病院精神科権威スーパードクター梅の右腕的存在であり、全ナースから羨望の眼差しを送られるスーパーナースだ。
「イルカと泳ぐの楽しかったわ……あら? 私が泳いでいる間にナンパされてるの、あなた達?」
「ええ。この男の子が……」
「ひ、ひさしぶり……」
「そ、壮太きゅん!?」
黒めがちなファン子の瞑らな瞳がクワワッと見開いた。
実は、壮太とファン子は知らない仲じゃない。
話せば長くなるので割愛するが、鼻を股間にあてがうような関係……とでも言っておこう。何も間違いではない。
「こんなところで会うなんて完全に運命ねっ!」
「い、いやー……ただの偶然だと思うぜ……」
力なく笑って目を逸らす。
しかし、その隙をファン子は見逃さなかった。彼女の長い鼻が壮太の唇を狙って襲いかかる。
「ひっ!」
間一髪、回避する。
「ファン子、もう我慢出来ない……!」
大分前の宴会で恋に落ちてから、ずっと放置されていた彼女の恋は、ここに来て地獄の業火よりも激しく恐ろしく燃え上がった。
爛々と血走った目を向け、鼻からなんだかよくわからない汁(興奮すると出てくるのだろう)がだらだらと流れ出している。
「壮太きゅん、ファン子をめちゃくちゃにして!」
「む、無理っ!」
悲鳴のように叫ぶと、壮太は後ろに向かって全力クロール!
「壮太きゅん……。あなたが私をめちゃくちゃにしてくれないなら、私が壮太きゅんをめちゃくちゃにしてあげる……!!」
3+
「さーて、何が釣れるのかなー」
雲釣りに挑戦することにした生駒は良さげな岩場を見つけて腰を据えた。
借りてきた竿をひと振りして、キャスティング。ルアーを付けた釣り針は雲の海に沈んでいく。
そして、ジョージはと言うとイッチニサンシと準備運動を始めた。
「何してんの?」
「見りゃわかるじゃろ。素潜りの準備じゃよ。1個500Gのウニと聞いたら、手ブラで帰るのはもったいない」
「ああ、例のやつ」
「これでお前さんの破壊した備品代も払えるし、生活も楽になるわい。今夜はぱーっと遊ぶのじゃよ」
そう言うと、雲海にざっぱんと飛び込んだ。
「あーん、またダメだ」
岩場で雲釣りをしていた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は、奇麗なままエサの残った釣り針を見て、唇を尖らせた。
ここの魚は好き嫌いの激しい偏食家ばかりなので、テキトーに針を投げてもなかなか当りがこない。
「美羽ー」
そこに、コハクとJJが様子を見にやって来た。
「あ、ゴリラくんだ!」
美羽はJJの姿を見つけるや、彼のふさふさの胸に飛び込んだ。
「ゴリラくん、ひさしぶりー。元気だった?」
「ええ。変わりありません。美羽さんもお元気そうで何よりです」
「ねぇ美羽」
コハクは何も入っていないバケツを覗き込むと、ぽりぽりと頬を掻いた。
「どう、釣れてる?」
「うーん全然……。エサがよくないみたい」
「それは……困ったな。せめて一匹でも釣ってくれないと、せっかくの鍋が野菜鍋になっちゃうよ」
とその時だった。美羽の持っている竿が大きくしなった。
慌てて竿を握りしめる。伝わってくるこの凄まじい当たりは、間違いない、大物だ。
「逃がさないわよ、晩ごはん! こなくそおぉーーー!!」
力の限り竿を振り上げた次の瞬間、真っ白なクモイルカが頭の上を飛び越えていった。
イルカは岩場に激突する前にぴたりと空中で止まり、そこでじたばたともがいた。
そもそも空に棲む生き物なので、別に雲からあげられても弱ったりすることはないようだ。
「やったぁ! さっすが美羽ちゃん、大物げーーーっと!」
「これは立派なお魚ですね。おめでとうございます」
大喜びの美羽にJJは拍手を送る。
「ちょ、ちょっと待ってよ。これイルカだよ?」
コハクが声を上げた。
「へ? うん、イルカだけど?」
「だけどじゃなくて、美羽。イルカを食べるのは可哀想だよ」
「イルカを解放しなさぁーーーーいっ!!」
突然、東の空に無数の小型飛空艇の機影が現れた。
ゆったりワンピースに重ね着、一眼レフのカメラや大きめ眼鏡の森ガールたちが飛空艇にのってこっちに向かってくる。
ただし、ただの森ガールじゃない。透明感のある彼女たちは皆一様に軍用アサルトライフルをぶら下げている……!
彼女達こそ巷を騒がせるエコテロリストグループ!
そして、先頭に立つひと際巨大な影はクレイジーエコロジストにして森ガールの指導者、C.W.ニコリーナだ!!
重ね着に重ね着を重ねたその姿はまるで要塞。
飛行スラスターを搭載した古代機神ゴリアテが彼女を背の乗せ、機動力を犠牲にした鉄壁の守備コーデを補っている。
「皆さぁん。イルカをとってる悪い人達にお仕置きしちゃいましょうね〜。照準合わせ〜☆」
「はぁ〜〜い」
ニコリーナの号令で森ガールは銃撃を始めた。ゴリアテも小型ミサイルを次々と発射する。
「……なんか撃ってきた!」
雨のように降る銃弾から、美羽とコハクとJJは急いで身を隠す。
「……ん、あのゴリラ」
かわいいニコリーナの顔に青筋がぴきっと浮かんだ。
「見覚えがあると思ったら、あのクソビッチ、汚ギャル、アゲハちゃんのペットじゃないですかぁ……!」
森ガールとギャルは犬猿の中、血で血を洗う仁義なき戦いを空京で繰り広げているのだ。
美羽のほうもニコリーナの姿を見つけた途端、眉間にしわを寄せた。
「あの重ね着女! 前にゴリラくんを誘拐した奴じゃない!」
ここであったが百年目。美羽は飛んでくるミサイルを足場にして駆け上がり、ニコリーナの目の前に躍り出た。
「今度は私のイルカを奪いに来たのね! そんなのゆるさないんだからー!!」
拳に宿った獣の力が幻になり、襲いかかる! 美羽から放たれる幻はアゲハとJJの姿をとった!
「必殺“百獣拳”!!」
「!?」
次の瞬間、目にも止まらぬスピードの百烈拳が、幻を突き破って、ニコリーナに叩き込まれた。
「ぎゃあああっ!!」
鼻っ柱にパンチを食らった彼女はピューッと鼻血のアーチを描いた。
そして、失速。くるくると回りながら雲海に落ちていく。
「も、森ガールのカリスマのわたしが汚物臭いギャルの仲間にぶたれるなんて……ちくしょう! 許さねぇぞ、ゲロブス!!」
ブリブリしていたニコリーナの表情が一変、凶悪な鬼の形相に!
ゴリアテのスラスターを全開にして急上昇すると、美羽のドタマに機械アームのチョップを振り下ろした!
「痛あぁぁぁーーーーいっ!!」
美羽は頭を押さえて飛び上がる。
「何すんのよ! ゴリラどろぼう!」
「うるせぇ、ゲロブス! 透明感がウリのあたしに鼻血なんか噴かせやがって! 挽き肉にして豚のエサにしてやるから覚悟しやがれ!」
「ぬははは! 見とくれ、生駒! 大漁じゃぞぉ!」
雲の中からジョージが顔を出した。その腕には赤ん坊を抱くように大切にフウセンウニの詰まった袋が抱えられている。
「おお、すごいね」
「そうじゃろそうじゃろ」
生駒はまだ何も釣れないのか、ジョージが潜る前と同じ姿勢で糸を雲の中に垂らしている。
ジョージは平らな岩の上にウニを並べてみた。
「500G1000G1500G2000G……この海は宝の山じゃのぅ! 生駒よ、お前も釣れない釣りなんぞしとらんでウニをとれ、ウニを!」
「うるさいなぁ……」
とその時、生駒の竿がぐわんと大きくしなった。
「来た……!」
生駒は糸から伝わる獲物の息遣いを感じ、呼吸を合わせ……全力で竿を引き上げる。
すると雲間にクモイルカの姿が見えた。
「イルカ……?」
小首を傾げたその時、空気をつんざく銃声が走り、生駒のいる岩場に銃弾の雨が降った。
ライフルから火を吹き出しながら、森ガールたちがこっちに向かってくる。
「イルカ漁を止めなさぁ〜〜いっ!」
「なんだよ、人の獲物に。魚ドロボウか?」
ムッとした生駒は森ガールを無視して竿に力を込めた。
ジョージは慌ててそれを止めさせようとした。
「ば、バカ! 早くそのイルカを放すんじゃ!」
「なんでだよ?」
「あの女達、格好こそ重ね着と小物にこだわったかわいい女子じゃが、テロリストなのじゃぞ!」
「知らないよ、そんなの。針にかかったものはワタシのものだもんね」
「し、刺激するな!」
それはしっかりと彼女たちを、というか彼女を刺激してしまった。
一団の中から砲弾のごとくニコリーナが飛び出した。美羽と格闘中だった彼女は、美羽とバトルを繰り広げながら飛んでくる。
「ちょっとぉ! どこに行く気よっ!」
振り落とされないよう美羽は、ゆったりレースのワンピースにしがみつく。
「今度はどこのバカがイルカをとってやがる! ゴリアテ、デストロイモードだ!!」
機械のアームがキャノン砲に変形する。
「雲海の藻屑にしてやるぜ!!」
「……あ、嫌な予感」
不穏な気配を察知した生駒は竿を投げ捨て、スタコラと岩場の陰に。
取り残されたジョージが「え?」と言った次の瞬間、発射された砲弾はジョージと並べてあったフウセンウニを直撃した。
「のわあああぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
フウセンウニの大爆発はジョージを、
「……な、なんだこの爆発は!?」
「何してんのよ、ゴリラどろぼう! 爆発がこっちに来るよっ!!」
そしてニコリーナと美羽、森ガールたちを飲み込んで、いっさいがっさいまとめて吹き飛ばした……!!
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