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激闘!?『変態コレクション(変コレ)』!

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激闘!?『変態コレクション(変コレ)』!

リアクション


【5】


 メタリックブルーのトライアングルビキニの上にロングコートを羽織るだけの格好。
 そんな“アレな格好”を普段着にするセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)をAIが見逃すはずもなかった。
 まさか普通に遊んでいる変コレに、自分自身が囚われてしまうなんて想定外もいいところ。
 しかしそれにしても納得がいかない。
「ちょっとばかり露出度が高いからってなぜ変態扱いされなきゃならないのよ!」
 何しろ彼女は“水着は美しい女の戦闘服”と本気で思っているのだ。
 イチ男子としては嬉しい限りであるが……まぁ世間の目から見ればそれは立派な露出狂のお姉さんである。
「何でよ! そもそも美しい女に余計な布切れは無用。美しいものは常にあるがままでいるのが自然の摂理というものよ!」
「なるほど……」
 一緒にこっちに連れて来られたセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は大体状況を察した。
 どうしてまとも側の人間であるはずの自分までこっちに連れて来られたのか。
 それもこれも、アレな格好をしている上に、自分にその格好を付き合わせるセレンの所為だ。これ完全に巻き添えだ。
「ちょっといいかしら、AIさん」
『なんでしょう?』
 目の前にAIの画面が開いた。
「私まで連れて来られたのはちょっと誤解があると思うの。セレンのは特殊な性癖で間違いないけど、私はただ付き合いでしているだけなのよ」
 黒いロングコートの下にホルターネックタイプのメタリックレオタード、それがセレアナの格好だ。
「はぁ!?」
 セレンがツカツカと靴音を鳴らしてこっちに来た。
「何よ、その言い草! 私だけが変態みたいなこと言って!」
「実際、そうでしょ。誰が好き好んで水着で繁華街歩かなきゃいかないのよ」
「はぁ!? ほんとは好きな癖に!」
「一緒にしないでよ!」
『あのー……』
 その時ふと、くすくすくす……と押し殺して笑う声が聞こえてきた。
 2人の痴話喧嘩を遠巻きに見る一般人に混じって、笑っているのはセルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)だ。
「あら、ごめんなさい。何かおもしろいお話しているのが聞こえてきましたのでつい」
「なによ、あんた……」
 セルフィーナは値踏みするようにセレンを下から上に見た。
「美しい女性に服など必要ない……? 脱げばいいなんて安直な考えですわね。まさかそれで本当の美に辿り着いたおつもりなのかしら?」
「!?」
 そう言って、薄絹のような服を纏う自らを指した。
「変態とは抑圧された願望なのです。見て下さい私の姿を。一見何ともないですが、絵師さんによってはこのとおりカットインでノーブラ、全身図ではノーパンという状態なのです」
「ちょっと私のポリシーにケチつける気ぃ?」
「大体、そんなに露出するのが好きなら中途半端に水着など着ず、いっそ全裸になればよろしいのでは?」
「そこはほんの少しだけ、見えない部分を作ることによって……つまり、あえて見えないということで美しさに不完全さをつくり、その不完全さが醸し出す想像力のエロスが眼に見えない美しさを引き出してよりいっそう自分の外面だけではない、内面の美しさも含めてひと際自分を輝かせるのよ!
 それに、この格好で一年を過ごすとなるとその辺のモデルやグラドルなど足元にも及ばない自己鍛練を要求されるんだからね! そう、女は死ぬまで、常にだれかに見られて生きる以上、最高の美しさを死ぬまで維持しなきゃならないのだから、これはいわば究極の女磨きなのよっ!」
 アツく語るセレンだが、語れば語るほど、露出狂の言い訳にしか聞えないのは気のせいだろうか。
「だったらここにいる皆にどっちが上か決めてもらおうじゃない!」
 そう言って、セレンはたわわに実った胸を突き出し扇情的なポーズ。はちきれんばかりの胸がとても美味しいそうだ。
 おお! と歓声が上がる。
 ピロリロリン♪
「望むところですわ」
 セルフィーナは腰に手を当て身体のラインを強調するポーズ。ぎりぎりのスカートに俄然、期待と興奮が高まる。
 おおお! と歓声が上がる。
 ピロリロリン♪
『おめでとうございます。以下の変態事案が確認され、変態値が加算されました』
 セレン、露出狂の意地を見せた。レアリティ【コモン→アンコモン】。
 セルフィーナ、着エロの意地を見せた。レアリティ【コモン→アンコモン】。
「……なんかレアリティ上がってるし」
 恥を撒き散らすパートナーに頭を抱え、セレアナは悩ましげなポーズ。
 おおおお! と歓声が上がる。
「え?」
 セレアナ、悩ましげなポーズで一般人を悩殺した。レアリティ【コモン→アンコモン】。
「私まで上げなくていいのよ!」
 火花散る露出VS着衣の戦いであるが、しかしそこにはひとつ根本的な問題が無視されていることにお気づきであろうか。
 セレンもセルフィーナも傍観者であるセレアナでさえ、出るとこ出て締まるとこ締まった垂唾もののボディの持ち主。
 言ってみれば、一握りの天上人である。
 そこに異議を唱える者が現れた。
「全裸だとか、着衣だとか、結局それは持ってる奴の論理なのよ! 持たざる者の気持ちなんかわかんないのよ!」
「!?」
 人垣の中から飛び出した騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は問答無用のエクス・スレイヴ!
 どんがらがっしゃーーん!!
 直撃を受けた建物はがらがらと崩れ落ち、地面にはちょっとした隕石が落ちたぐらいのクレーターが出来た。
 間一髪のところで攻撃を躱したセレン、セルフィーナ、セレアナは逃げ惑う人たちを余所に瓦礫の陰からおそるおそる顔を出した。
 土煙の中、詩穂はたたずんでいる。
「何のつもりなのよ!!」
「いくら詩穂様と言えどしていいことと悪いことがありますよ!!」
 セレンと詩穂のパートナーのセルフィーナが抗議の声を上げる。
「なによ、そっちが悪いんじゃない。スタイルの良さを見せ付けるようなことしてぇ!」
 詩穂は自らの胸を見た。
 バストアップに“おっぱい体操”なるものが効くと聞いて試してみたら、最初の「左のおっぱいを持ち上げ〜」の段階ですでに出来なくて詰んだ。
 短冊に書いた願い事を叶えてもらって、4歳ほど実年齢が若返ったけど、胸のサイズはまったく変わりませんでした。
 なにこの4年間。
 絶望しかない。

「もう息苦しい想いをするのはたくさんよ! 小学生体型による、小学生体型のための、小学生体型の理想郷をここに築くのよ!!
 貧(乳)民のための居場所を作る社会貢献!
 この変態行為により詩穂のレアリティが【コモン→アンコモン】に!!
「まずはデカパイの排除からはじめるのよ!」
 終焉剣アブソリュートをぺろりと舐め、絶対零度の刀身に舌が貼り付き、ぴぎゃあ! と悲鳴を上げつつも詩穂は狂気を振りまく。
 しかしそこに、ちょっと待ったぁ! と声を上げる者が現れた。
 建物の屋上から巨乳の敵を睨み付けるその影はソラン・ジーバルス(そらん・じーばるす)
 組んだ腕の上にGカップの巨乳を山盛りに乗せ、己の豊満なボディを誇示している。それはまさに威嚇。
「巨乳排除なんて聞き捨てならないわね」
「出たわね、デカパイ。そこの3人も一緒に乳お化けは皆、おっぱい切り落としておっぱいプリンにして販売してやるんだから!」
 瓦礫の陰で3人はビクッと身を震わせた。
 エライのに目を付けられた。
「可哀想に。普段着で外に出ると胸の小さい女性から嫉妬の目で見られ、お姉様方からは誘いの目で見られる……その快感を知らないなんて」
 ソランは憐れみの目で詩穂を見た。
「エクス・スレイヴ!!」
 詩穂の一撃がソランの立っていた建物ごと吹き飛ばす。
 しかしソランは攻撃を躱し跳躍。銘刀『光白椿・焔』を閃かせ、詩穂に一撃。
 がきぃんとソランの刀と詩穂の剣が青白い火花を散らす。
「貧乳の嫉妬はみっともないわ! 巨乳を駆逐しようなんて愚の骨頂! いい、おっぱいはお金と同じ『あるに越したことはない』ものよ!」
 きぃんきぃんと互いの攻撃がぶつかり合う。
「私のおっぱいもかなり大きいけど自分のじゃ駄目なのよ。スライムみたいに柔らかいのもあれば私みたいに弾力があるのもある。それら全ての感触を楽しむのが実にいいのよ! だから他の女の子を求めるのよ!」
「……なっ! れ、レズなの!?」
「ふふ、夫も子もいる二児の母だけどね」
 さらっととんでもないことを言う。
「ちなみに夫の性転換後の姿は絶壁過ぎて逆に触りご心地が良かったわ!」
「どんなプレイを楽しんでるの……ううん、それじゃ浮気じゃないっ!」
「違うのよ……浮気じゃないのよ遊びなの……夫が一番だから、一番だとこの体に判らせるためにやってるのよ、だから浮気なんかじゃなぃ……というかここ一年近く一度もやってないし、うん」
 現実世界にいる夫のハイコド・ジーバルス(はいこど・じーばるす)を思い浮かべる。
 きっと生まれたばかりの双子の子どもたちをあやしながら、眠ったままの自分を待っていることだろう。
 愛する家族のためにもここで負けるわけにはいかない。
 子ども達が誇りに思える母でありたい。
 うちのお母さんは巨乳のために悪い貧乳と戦ったんだよって、とびっきりの変態なんだよって胸を張れるように……。
 家族愛と変態性を一緒くたにするのはどうかと思うが、どっちも立てるのが良妻。
 己の変態性をこの一撃に込める!!
私はお尻をぶっ叩かれて喜ぶ夫限定のマゾで! その夫を性転換薬で女の子にして楽しんだり、夫がいるのに女の子に手を出しそうになるバイセクシャルで! 実の姉すら肉欲対象にしていて! マスターニンジャなのも房中術をマスターするためという徹底ぶり! はっきり言って子供も他のパートナーも居なかったら間違いなく四六時中ベッドの上間違いなしな快楽ジャンキー! こーいう女を変態って言うの!!
 とにかくこれでもかと変態性を全部乗せするその姿は変態界の二郎系!!
 これによりレアリティが大幅アップ!
 レアリティが【コモン→レア】に!!
 そして、夫への愛を込めてシャイニングラブをぶっ放す!!
 突き抜ける衝撃波とほとばしる閃光。ヴァーチャル世界に激震が走る……!!