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黄金色の散歩道

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栗々食い尽くせ


 午前、ツァンダ、店舗兼住居の雑貨「いさり火」。

 大皿にどどんと山脈連ねる栗の山を前に
「ふはー、これだけあれば一週間は栗だけで生きていけるのぉ。料理スキルの高めなハイコドに色々作ってもらわねばな」
「くーり、くーり、くりぱーてぃー♪ ハコ兄様が来たらご飯とか色々作った上で半分くらい持って行ってもらいましょう」
 エクリィール・スフリント(えくりぃーる・すふりんと)白銀 風花(しろがね・ふうか)は美味しい予感に浮かれはしゃぎハイコド・ジーバルス(はいこど・じーばるす)の到来を心待ちに待っていた。
「……二人共、随分浮かれてるな……ハイコドもそろそろ来るか」
 藍華 信(あいか・しん)は二人の浮かれぶりを見つつ時間を確認し連絡を入れたハイコドがもうそろそろ来るのを待つ。

 少しして
「来たぞ……って、なんだこりゃ」
 ツァンダ東の森にある集落ジーバルスの里から遙々やって来たハイコドはテーブルの荘厳たる栗の山に来て早々にびっくりする。
 なぜなら
「風花がご近所さんから栗を沢山貰ったから取りに来いって聞いて来たが……」
 連絡を貰った時にハイコドが想像した量とはあまにりにもかけ離れた量であったからだ。
「……おすそ分けでこの量ってどんだけ採ったんだよ。そのご近所さんは」
 ハイコドは栗を一つ手に取りまじまじと見ては大皿にある他の栗にも目を向け
「しかも、どれもこれも見事な大粒だな」
 上質である事にさらに驚く。
「はい。大収穫だと大変喜んでいましたわ!」
 風花は渡された時にご近所さんから聞かされた栗の話を打ち明けた。
「それより早く何か作るのじゃ!」
 待ちきれないエクリィールが言った。
「分かった、分かった。とりあえず作れるだけ料理作ってみるか。栗ならご飯もデザートにも使えるだろうからな……何かリクエストはあるか?」
 ハイコドは手に持った栗を皿に戻しながら皆にリクエストを訊ねた。
 すると
「そうじゃな、栗ご飯、焼き栗、煎った栗粉末、甘露煮、モンブランにマロンクリームに……とにかく作れる物全部じゃ!」
 エクリィールがいくつか列挙するも最後は面倒臭くなり少し偉そうに言って片付けた。
「全部か。しかし、全部作っても余りそうだが……とりあえず作ってからだな」
 ハイコドはあまりの栗の多さを改めて確認するが、何はともあれ作ってからと。
「今日は色んな栗料理が食べられますね。お手伝いしますわ、ハコ兄様」
「甘露煮作りは俺も手伝おう」
 風花と信が栗料理の手伝いに名乗りを上げる。
「……わらわは片付けを担当する故、皆頑張ってくれなのじゃ」
 エクリィールは片付けに立候補し料理担当の三人に栗料理を期待しながら言った。
「あぁ、早速作るか」
 ハイコドの合図で美味しい栗料理作りが始まった。

 料理中。
「沢山、栗入れて贅沢な栗ご飯にしますわ」
 風花はこれでもかと言う程栗を大量に入れて贅沢な栗ご飯を作り
「……甘露煮なら保存もきく。多めに作るか」
 信もまたこれでもかと言う程に栗を大量に剥き
「こりゃ、店に売っている物より豪華な物になりそうだな」
 ハイコドは大量の栗を使い店なら高そうなモンブランを作る。
「どれもこれも美味しそうじゃな」
 エクリィールは使用を終えた調理器具や食器を片付けながら出来上がる栗料理に目を輝かせていた。完成してすぐに食べられるように片付け要の物が出る度に細かく仕事をしていた。

 思いつく限りの料理を作り終えた所で
「……まだ残っておるが、思いつく物は全て作ってしまったようじゃな。どうするんじゃ?」
 エクリィールは後片付けをしながら料理人達に訊ねた。栗はまだまだ大量に残っている。
「……ネットでレシピを調べるからちょっと待ってろ」
 ハイコドは近代機器を使い栗料理のレシピを片っ端から拾っていく。
 するとひょっこりと風花と信だけでなく仕事を一時中断してエクリィールの三人が覗き込み
「栗きんとん蒸しケーキ、美味しそうですわね」
「……牛乳で作る茹で栗のスープ。食べ物だけじゃなく飲み物もいいかもな」
 風花と信は出て来た大量の栗料理レシピに目を走らせ美味しそうだったり興味を持ったレシピをチョイスする。
「茹でるならついでに栗マヨサラダはどうじゃ?」
 エクリィールも指し示しながら言った。
「その三つとあと一つ二つ選んで作るか……と言ってもまだまだ栗が余りそうだが」
 ハイコドは追加で二つほど栗料理を選んでから料理再開。それでも栗が余りそうな予感は消えないが。
 何とか作り終え、あらゆる栗料理そろい踏みな賑やかな昼食を迎える事が出来た。

 昼食時。
「程良いおこげに栗がごろごろで美味しいのじゃ……これはおかわりものじゃ」
 エクリィールはもしゃもしゃと栗ご飯を頬張り
「蒸しケーキも美味しいですわ」
 風花はほくほくと蒸しケーキを食べ
「……ん、このスープもいける」
 信はスープを飲んだ。
「食べ物から飲み物まで栗づくしだな……この甘露煮、なかなかだ」
 ハイコドは『調理』を有する信作の美味が保証されている栗の甘露煮を食べる。
「こんなに色んな栗料理を食べる事が出来るとは思いませんでしたわ」
 風花は蒸しケーキの次に焼き栗を頬張りながら幸せそうに言った。
「そうじゃな。まさに栗日和じゃ」
 うなずくエクリィールは栗ご飯のおかわりを食べていた。
「……これだけ作ってまだ栗が余ってるってすげぇな」
 ハイコドはまだまだどっちゃりと山を作る栗に苦笑していた。
 その時
「……どうした? 食事はもう食べたろ」
 物欲しそうに自分達の食事風景を見ているわたげうさぎ達に気付いた。わたげうさぎ達には自分達が食事をとる少し前に食事を与えたのだが、賑やかさと美味しい匂いに引かれたのだろう。
「……仕方無いな。でもあげていいかどうか調べてからだ」
 ハイコドはわたげうさきに与えてもいいのかネットで調べた。
 そして
「……大丈夫みたいだ。ほら、蒸しケーキだ」
 ハイコドはネットで与えても大丈夫と確認してから蒸しケーキを与え
「……スープもどうだ。食べ過ぎないようにな」
 信はスープを飲み物として与えた。ついでに食べ過ぎないように気を付ける事も忘れない。
「……折角だ、写真を撮っておくか……食べてる、食べてる」
 ハイコドはわたげうさぎ達が食べたり飲んだりするほのぼのとした光景を写真に撮った。
 そしてわたげうさきも交えて四人は美味しく栗料理を楽しんだ。

 食事後。
「むふー、食べ過ぎてしまいましたわ〜よっこいしょ、ごろごろ〜」
 満腹過ぎる程満腹になった風花はわたげうさぎの姿に獣化してわたげうさぎ達とごろごろと寝っ転がり出した。
「も、もう食えん。調子に乗って栗ご飯食べ過ぎたのじゃ」
 エクリィールは満腹になったお腹をさすっていたが、
「お、ちょうどいい所に風花枕が……」
 わたげうさぎ達と寝っ転がっている風花に気付くなり風花を枕代わりにし
「もふもふじゃのぉ〜」
 わたげうさぎを抱っこした。
 満腹感から次第に眠気が押し寄せ
「……」
 エクリィールはもふもふに包まれ眠りの世界に旅立ってしまった。
 そこへ
「俺も」
 心地良い満腹感に満たされた信が寝転がった風花を枕にごろり。わたげうさぎ姿で寝転がった風花の大きさは人間の子供が寝転がったくらいの大きさなので十分枕になるのだ。
「お腹いっぱいですわねぇ」
 二人に枕にされている風花には嫌がる様子は無くむしろ心地よさそうであった。
 そして風花もまた
「……」
 満腹感からかすやすやと眠ってしまった。

 一方。
「たはは、四人居てまだ残ってるぞ料理が……完全に作りすぎだな。というか栗自体まだ残ってるし」
 ハイコドは完全に作り過ぎで残った様々な栗料理を見渡し、苦笑していた。
 そこに
「ハイコド、甘露煮とか剥いてない栗とか半分ぐらいもってけ、ちびっことスイーツ好きな嫁さん達も喜ぶだろうから」
 信がゴロゴロしながらハイコドに言った。
「悪いな、ウチの側じゃ栗の木無いから助かるよ。遠慮なく貰う。冬になる前に山で鹿をとってお返しにでもするからさ」
 ハイコドは自宅で待つ子供達と妻達のためにいそいそと栗料理や剥いてない栗などをお持ち帰りにしていく。
「そんな事よりさっさと帰って嫁さん二人に甘えてこーい」
 信が呑気にあれこれとお持ち帰りに回すハイコドに軽口を叩くと
「お前はさっさと彼女でも作れってーの」
 ハイコドはカラカラ笑いながら軽口には軽口で答えつつも作業は止めない。
「やかましいわ、くくく」
 信はさらりといなして笑う。親しみを含みながら。
「たはは、じゃまた今度な」
 家族への美味しい土産が出来上がったハイコドは見送る信に笑いながら片手を上げて別れを言ってから愛おしい家族が待つ家路を急いだ。
 信達三人はのんびりと時を過ごした。