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黄金色の散歩道

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黄金色の散歩道
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完璧なデート


 秋の休日、蒼空学園校門前。

「今日は誘ってくれてありがと、優夏♪(出掛けるっていったらデートよね。服装もバッチリお洒落もしたし、優夏も喜ぶはず♪)」
 お出掛けに誘われたフィリーネ・カシオメイサ(ふぃりーね・かしおめいさ)は喜びお洒落にも気合いが入っており、ミニスカートに活動的で可愛いながらもそれなりに露出が多い物である。
 当然お洒落をしたのなら
「どう? 優夏。似合ってる? 優夏のために頑張っちゃった♪」
 デートの相手にお披露目と共に聞いちゃうもの。しかも浮かべる笑顔は最高に可愛い。
「……行くで。まずはショッピングからや……その次は」
 優夏は思わず照れ、視線を逸らし話題を変えて本日のデートコースを話す。自宅にて二人で暮らしているため出発地点はここなのだ。
「……そうね(もう、優夏ったら照れてるわね。ふふふ……というか、デートコース、相変わらずギャルゲー知識ね……)」
 お見通しのフィリーネはクスクス笑って
「今日は一日楽しもうね。優夏、エスコートよろしくね」
 と言った。
「あぁ、任せてや」
 優夏はエスコートする気満々でどんと胸を叩いた。
「えぇ(優夏のエスコート……やっと優夏がマトモな男の子になってくれたわね)」
 フィリーネはますますにっこり。
「……行くで」
 優夏は意気揚々と歩き出した。まずはショッピングだ。

 ツァンダ市内を歩く道々。
「なんちゅーか、ホンマに平和な秋やね、せやけどHIKIKOMORIな俺がここまで来たかって感じやなぁ」
 優夏は行き交う人々や澄んだ秋空に目を向けつつしみじみと言葉を洩らした。
「優夏?」
 フィリーネがどうしたのかと聞き返した。
「……4年や。フィーと出会って契約かわしてから」
 優夏は何気なく言葉を洩らした。
「優夏と出会ってもうそんなに経つのね。時間って早いわね(出会った時は理想の男の子だって思うもダメ人間と知って言いくるめて契約を結ばせて、真人間に更正させる日々を送ってたけど……まさかこうして楽しいデートが出来るなんてね)」
 フィリーネも思い出し、昔と今の優夏を比べてクスリとする。昔は思いもしなかったのだろう。こうしてデートを楽しんでいるとは。
「確かにそうやな。今は蒼空学園大学部に入学する為の受験勉強中やけど何とか順調や……だから、何となく出掛けてみたいと思ったわけやけど、出掛けて良かった。息抜きも出来たしな」
 優夏も時間の流れにしみじみすると同時に今楽しい時間を過ごしている事も喜んだ。
「……私も今日は優夏と過ごせてすっごく嬉しい♪」
 フィリーネはこの時間を楽しんでいると分かる満面な笑顔。
 その笑顔を見つつ
「……(フィーがこうしていたからこそ、俺はここまでなんだかんだで楽しい学生生活おくれて来たんやな……ここまでくると俺はHIKIKOMORIはともかくとして、リア充なのは認めるしかないか)」
 自分がフィリーネに随分に助けられ、ここまで来られた事や生活が出会う前とは変わった事を思い知った。

 そうこうしている内に家族や友人の他恋人達で賑わうショッピング街に入り込んでいた。
 フィリーネとの話が一段落し
「うわ、ショッピング街ってマジでリア充の巣窟やんか……」
 優夏が改めて目的地のショッピング街の光景に唖然としてからちらりと隣のフィリーネを見やり
「そして違和感なく溶け込める俺はもはやリア充は否定できない事実やね」
 何とも言えぬ顔で洩らした。まさにその通り。端から見たら行き交うカップルの一組にしか過ぎないだろう。
「ふふふ、そうね♪」
 優夏とは違いフィリーネは心底嬉しそうに笑うなり
「ならこのままリア充を満喫させてあげる☆」
 そう言うやいなや優夏の腕に自分の腕を絡ませた。
「ちょ、フ、フィー!?」
 突然の事に優夏は慌てたが
「さぁ、このまま行くわよ、優夏♪」
 フィリーネは優夏に構う事無く腕を組んだまま付近の適当な洋服店に突撃した。
 店でフィリーネはあれこれと物色して興味を引かれた服があれば手に取り
「……こういう感じもいいかも」
 試着しては楽しんでいた。
「……楽しんでるな」
 優夏は満喫するフィリーネを見て今日誘った事を満足していた。
 たっぷりとあちこち歩き回りショッピングを楽しんでから
「買い物もええけど、今度は体を動かしに行くんはどうや?」
 優夏が次の予定である温水プールに誘うと
「いいわよ♪」
 フィリーネは反対なんぞはせず一層ワクワクしていた。変わらず腕は組んだままだった。

 温水プール。

 到着した二人はそれぞれ水着に着替えるために一度別れた。
 そして先に着替えを終えたのは
「……フィーはまだか」
 優夏だった。
「……今日はゆっくり出来るな」
 フィリーネが来るのを焦らずにのんびりと待つ事に。
 それ程待つ事無く
「優夏、おまたせ☆」
 弾んだフィリーネの声が背後からして
「フィー、やっと来……」
 振り向いた優夏は発した言葉が止まった。
 なぜなら
「……」
 瞳だけでなく心までフィリーネの水着姿の虜になっていた。
 なぜならフィリーネが大胆にもビキニで整ったプロポーションをいかんなく晒していたからだ。
「優夏?」
 反応の無い優夏に迫りフィリーネは僅かに小首を傾げる。その仕草もまた可愛らしい。
「……いやぁ、思わず見惚れてしまったで」
 優夏は我に返ると同時に
「相変わらずフィーはホンマにスタイルええなぁ……並のアイドルじゃ太刀打ちできんくらいに」
 ポロっと本音を洩らす。
「ふふ、あたし魔法少女だし、恋する乙女は可愛くなれるのよ。だから優夏に褒められると凄く嬉しい(この水着選んで大正解ね! ぽーっとするくらい優夏が私に見惚れちゃったんだもの)」
 フィリーネはぱぁと花が満開に咲いたような輝く笑顔で言った。
「……そうやな」
 優夏は自分に向ける言葉と笑顔に少し照れつつも嬉しかったり。
「それじゃ、行こう♪」
「あぁ、楽しむで」
 フィリーネと優夏はプールに向かって駆け出した。
 優夏とフィリーネはきゃっきゃっと仲睦まじく遊んだ。
 途中、お昼時となり
「美味しいわね。やっぱり体を動かしたからかしら」
「そうやね。この後は遊園地でたっぷり遊ぼうか」
 フィリーネと優夏は思いっきり遊んで空腹となったお腹を満たした。
「えぇ、いいわね♪」
 フィリーネは浮かれながら即答。
 昼食を終えて少し遊んでから遊園地へ行った。

 遊園地。

「優夏、次はあれね!」
「フィー、その次はあれや」
 フィリーネと優夏は入園するなり、ジェットコースターからティーカップ、メリーゴーランドに箱物など片っ端からあちこちの乗り物や施設に挑戦して満喫した。
 遊ぶ以外に食べ歩きも忘れない。
「ん〜、さすが限定スイーツ美味しい」
 フィリーネは手に持つ限定スイーツを頬張り幸せな顔。
「フィー、どうする? もうそろそろこの先のレストランでショーがあるけど」
 優夏もスイーツを食べながらパンフレットに書かれている園内マップを確認しながら隣のフィリーネに言った。
「もちろん、行くに決まってるわ。優夏と」
 フィリーネの答えはただ一つ。楽しむ以外ない。それも優夏と。
「しゃーないな。エスコートする身としては断れんからな」
 優夏はパンフレットを畳みスイーツを頬張った。レストランに辿り着く前に消化しなければと。
 そして消化を終えた所で二人はショーが行われるレストランに到着し、素敵な音楽と貴重なショーを見ながらレストランで美味しいひとときを過ごした。
 その後も二人は遊園地をあちこち楽しみ、時間はすっかり空が茜色に染まる頃になっていた。場所は遊園地から蒼空学園が見える丘になっていた。

 蒼空学園が見える丘。

「……オレンジ色に染まって綺麗ねぇ」
 フィリーネは茜色に染まる自分達が通う学園を眺め感動し
「……今日はありがとう、優夏」
 隣に立つ優夏に笑顔で礼を言った。
「お礼を言うんはこっちや。いいや、今日に限らずや。フィーがいてくれたおかげで俺は何とか楽しい学生生活を送れたからな……まぁ、これからもよろしくや」
 優夏はふとデート出発時に一人胸中でつぶやいていた事を言葉にして大切な人に伝えた。
「……優夏、こちらこそこれからもよろしくね」
 フィリーネも伝えた。これで夕陽を見ながらエンディングとなると思いきや
「これからもと言うたけど……やっぱり働いたら負けかなと思っとる……」
 優夏はおもむろに自分の発言の続きを口にし
「まぁウェブデザイナーやったらHIKIKOMORIしながらお金稼げるしフィーを養うくらい!?」
 思わず言ってしまった事に恥ずかしくなって口を閉じてしまった。健全なのか不健全なのか分からぬがフィリーネを大切に思う気持ちは真摯で本当であった。
 それに対して
「……いい事言ってるって思ったけど、結局最後にそういうオチくるのね。分かってたけど」
 フィリーネはやっぱりな優夏に親しみある苦い笑いを浮かべた後最高に素敵な笑顔を浮かべて
「でも優夏があたしとの将来考えてくれてる事が嬉しいわ」
 優夏の頬にキスをした。
「……フィー」
 想定外の事に驚きながらも優夏は幸せそうであった。