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終わりなき蒼空、涯てることなきフロンティア

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終わりなき蒼空、涯てることなきフロンティア
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リアクション


●みんな仲良し計画
 
 二年の時間が過ぎた。
 とても充実した時間だった。あまりに活発にしていたものだから、あっという間という印象があった。
 それは、吉木 詩歌(よしき・しいか)がかねてからのプロジェクト、つまり、みんな仲良しだったらいいな……という夢を実現するための『みんな仲良し計画』の一環として、2024年末からザナドゥの学校に編入してから経過した時間だ。
 なお、この編入に詩歌は、不知火 緋影(しらぬい・ひかげ)を伴っている。
 二人揃って新しい制服に袖を通し、笑いあったのが昨日のことのようだ。
 
 本日、二年ぶりに詩歌と緋影は、ニルヴァーナ創世学園を訪れていた。
 空京 たいむちゃん(くうきょう・たいむちゃん)(こと、ラクシュミちゃん)に近況と成果を報告しに来たのだ。パートナーにして旧友のセリティア クリューネル(せりてぃあ・くりゅーねる)と再会するという目的もあった。
「どう? その後は」
 久々に顔を合わせるのだが、それでもラクシュミは、連休明けに再会したクラスメートのような笑顔を見せてくれた。
「二人とも、背は少しだけ、伸びたかのう?」
 セリティアのほうはといえば、言い回しがなんだか、正月に出会う親戚のようだったりする。
「みゅう? 背? 背かー……うーん。少しは」
 詩歌はあいまいに笑った。見た目は中学生のようだがもう詩歌も二十代なかば、そろそろ成長は止まっているかもしれないが、そう言われるとちょっと嬉しい。
「ラクシュミさんも、クリューネルさんも、お元気そうでなによりです」
 ぺこりと緋影は頭を下げる。
「おっと、それで活動の報告なだけど、なんとか波に乗ってきた……っていう感じかなー」
 詩歌は語った。
 地球人とパラミタ人がどんな存在なのかを再確認してもらい、さらにパラミタの文化を伝え、ザナドゥの文化も改めて知っていくことで少しずつ仲が深まっていくことができれば――と考えてとこれまでの期間、詩歌と緋影はがんばってきた。
 具体的には、交流会など各種の催し物をひらいたり、交換留学生をあっせんしたりといった活動である。むろん、その間に詩歌も緋影もたくさんザナドゥについて学んでいる。
 こうした行いが認められて、今年詩歌はパラミタ―ザナドゥ間の親善大使に任命されていた。大使といっても実質的な特権がなにかあるわけでもなく名誉称号のようなものだが、そのことで活動がよりしやすくなったのも事実だ。
「……というわけで私たちの『パラミタ・ザナドゥ仲良し計画』は順調に進行中なのです」
 と詩歌は締めくくった。なお、この計画の命名者は緋影だったりする。
「なんとも結構なことじゃて。さて教員としての立場から見たニルヴァーナ創世学園の近況も説明しておくか」
「ありがたいことに、少しずつだけど生徒も増えてきたのよ」
 セリティアとラクシュミが交互に語っていく。説明する息もぴったりだ。
 こうしていくらか政治的な話を終えると、あとは友人同士として世間話に花を咲かせた。
 話題は共通の友人のその後や、身の回りでおこったちょっとした事件などで、世界情勢を揺るがすようなテーマはひとつも入っていないけれど、それだけに気楽で、楽しい。
「そういえば」
 とさりげなく緋影は言った。
「クリューネルさんとラクシュミさんの仲の深まり具合についても知りたいですね」
「おおう!?」
 セリティアは食べていた茶菓子を、いきなり喉に詰まらせた。
「な、なんじゃだしぬけに!? わしらの仲じゃと!?」
 セリティアはラクシュミを見るのだが、ラクシュミは赤面して、
「せ、説明はお任せするわ……」
 と言うだけだった。
 こうなっては仕方がない。音飛びの激しい音楽データのようにつっかえつっかえしつつセリティアは言う。
「あー、まあ、普通、じゃよ。うん、普通。休みの日にデートをしたり、仕事の合間にちょっと睦みあったり……な、もういいじゃろこんなもんで!」
「えー。睦みあう、ってイチャイチャすることですよね? どんな内容ですか? クリューネルさん、もうちょっと具体的にお願いしまーす」
「な、なんじゃとう!?」
 これでますますセリティアは動揺し、ラクシュミともども真っ赤になってしまう。
 詩歌は頬をゆるませ、満足そうにうなずきながら三人のやりとりを眺めている。
 幸せなひとときだと思う。
 お金では絶対に買えない、なにものにも替えがたい大切なひととき。
 こんな幸せが、仲良しの関係が、これからもずっと続くといいな。