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リアクション
曹操と共にラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)が、大軍を作り敦を董卓城前まで無傷で連れてきた伊達藤次郎正宗に合流した。
正宗軍は城前でメニエス・レインが守りにつかせていた三体のドラゴンに苦戦していた。
このドラゴンは牙攻裏塞島を攻めているものと同種である。
ドラゴンがひとたび火を吹けば、たちまち兵がやられてしまう。
誅殺槍の力で強化した兵の銃で応戦して倒しても、しばらくすれば蘇ってしまうことにストレスがたまる。
「火口は俺が預かる!」
「俺を囮にしようってのか?」
「そのための大軍じゃねぇのかよ」
言い合いを始めそうなラルクと正宗に、支倉遥が静かに割り込む。
「この戦いの勝敗の鍵を握るのは火口殿であることはわかりきっています。向こうではホウ統殿のお仲間が城内の兵を引きずり出してくださった様子。グズグズと言い合いしている暇はありませんよ。何なら私と曹操殿で参りましょうか?」
それは困る、と二人はすぐさま姿勢を正した。
遥が敦をラルク達に任せることで話は決まった。
「それじゃ、あの龍共は任せな。何度蘇ろうが、何度だって蜂の巣にしてやるぜ」
「必ず董卓を止めてみせるっス」
ここまで安全に連れてきてくれてありがとう、と礼を言った敦の肩を励ますように叩き、合流した二つの隊は再び分かれた。
オウガ・クローディス(おうが・くろーでぃす)のヒロイックアサルト『剛鬼』で身体能力を上げたラルクを先頭に敵兵の中を突き進む様は、まるで重戦車のようだった。
ラルクの配下に守られながら進む敦が振り返ると、正宗のところに残った曹操の姿がちらりと見えた。
「朕を倒せばミツエ殿にも異変が起こるであろうな!」
危険なことを言って正宗と共に囮になっている。
敦が前に向き直った時、戦闘の怒号とは違う感じの声を聞いた。
「い、石に……っ」
誰かの驚愕の声が聞こえた。
シャノン・マレフィキウム(しゃのん・まれふぃきうむ)のテレポートで、戦闘が激化しているところへ現れては、誅殺槍の力で得た『石化の瘴気』で乙軍兵を次々石像にしているのはマッシュ・ザ・ペトリファイアー(まっしゅ・ざぺとりふぁいあー)であった。
体が石になっていく恐怖に引きつった表情のまま石像となった乙軍兵に、マッシュは楽しそうに目を細めた。
「さてさて、ミツエはどこ……」
「マッシュ、今、敦という名が聞こえた。ここを離れよう」
「わかった」
誅殺槍の力の影響を受けない敦は、マッシュにとって要注意人物であった。会わないに越したことはない。
シャノンは空中に表した戦場図でまだ元気な乙軍を見つけると、マッシュを連れてそこへ跳んだ。
「ミツエの恐怖に歪む顔、見たいなぁ……ふふふ」
着いた先でニヤニヤしながら、マッシュは石化の瘴気を撒き散らした。
これに便乗してさらに乙軍を混乱させてやろうと、エフェメラ・フィロソフィア(えふぇめら・ふぃろそふぃあ)がゆったりと歌い始めた。
『こころのこえが きこえますか
あなたのやみが きこえますか』
この歌には、ミツエに対する敵意が乗せられている。よって、聞いた者はミツエを攻撃したくなって仕方なくなるのだ。さらに、歌を聞いた者は十秒間この歌を歌いウイルスのように広めていくという効果があった。
ガイアの今後は彼女次第だが、できることは終えたミツエが董卓城へ乗り込もうという時のことだった。
まだ遠いが、確かに不穏な気配は漂ってきていた。
「ミツエさん、嫌な感じです。少し離れましょう」
珍しくピリピリした風祭優斗の勧めにミツエも頷いた。
しばらくして、
「ミツエはどこだー!」
という声から身を隠すので精一杯になり、とても董卓城へ乗り込むどころではなくなるのだった。
味方が敵になったりランダムに石化の輪ができる中、ラルクは後方で敵になった配下から敦を守りながら舌打ちした。
「あいつらミツエを探してやがる」
「えっ。戻ったほうが……」
「駄目だ」
止まろうとする敦を叱り付けるラルク。
と、そこにオウガの怒鳴り声が届く。
「うるせぇのは我が引き受ける! 先に行け!」
敦は戸惑ったがラルクは「任せた!」と一言返して敦の腕を引っ張った。
後方で「ミツエはここにいるぞー!」というオウガの声が響いた。
振り向きかけた敦の頭を痛いほどの力で押さえるラルク。
「あいつ、キレると怖ぇんだよ。心配ない」
屈託のない笑みに敦の心配もほんの少し和らいだが、董卓側の猛攻が終わったわけではない。
「あれが原因か……」
ふと漏れ聞こえた剣呑な声音の呟きは、ラルクではなくアイン・ディスガイス(あいん・でぃすがいす)のものだった。
アインの見る先は敦には見えないが、ラルクには見えた。
高笑いしている小柄な女の子。
「石化か歌か……歌だろうな。チッ、めんどくせぇ」
アインは睨みつけつつも敦の傍から離れることはしなかった。
代わりに周囲をうろつくモヒカンやゴブリンにアシッドミストを吹きかけ、道を開けさせた。
その先に見えたのは董卓城入口で、そこで戦っていた誰かがふっ飛ばされた瞬間だった。
虫の息となった駿河北斗と切縞怜史を見下ろし、皮肉げに口の端を歪めるロザリアス・レミーナ。
「あんたら馬鹿だろ。誅殺槍の力を素直に借りればいい戦いになっただろうに」
「そんなもんに……頼ってるほうが、馬鹿だぜ。くだらねぇ……」
デタラメな怪力を得たロザリアスに、北斗と怜史は自分の力のみで挑んだ。
しかし、拳一撃で地面にクレーターを作るような相手には敵わなかったのだ。それでも誅殺槍の力を利用しようとしなかったのは、意地とかプライドとかそういうものだ。
「ふん、つまんねーの」
ゴミでも見るような目でロザリアスは石ころを蹴るように、北斗と怜史を城門前から脇へ蹴飛ばした。
そこに現れたのがラルクとアインだった。
新たな遊び相手にロザリアスは舌なめずりをする。
「あんたらは、楽しませてくれるんだろうな?」
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