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リアクション
念願の御神楽 環菜(みかぐら・かんな)とのデートとあり、影野 陽太(かげの・ようた)はドキドキしながら、校長室に向かった。
「環菜会長とデートできるなんて……ま、まさかドッキリ企画じゃないですよね?」
臆病な陽太は校長室に行くまでの間、何度も後ろや周囲を見回した。
今までの人生で、陽太はモテたことがない。
これまでの学園生活で恋の相手を見つけ、ラブラブな学生生活を送ってる同級生もいるが、陽太はそんなこととは無縁だった。
だから、本当にもう緊張して、いろいろな期待が膨らむと共に、不安も膨らんだのだが……校長室についたとき、陽太は心を決めた。
「もうドッキリでも何でもいいです! 環菜会長とデートできるなら!」
陽太は勇気を持って、校長室のドアを叩いた。
ツアンダ商業組合お勧めのデート定番コースをなぞるように陽太は環菜と一日を過ごした。
映画を見て、食事をして、夕暮れ時の公園に入り、一緒に公園のライトアップを眺めて……。
陽太はどこかに行くたびに、環菜の様子を窺っていた。
環菜は特にすごく楽しそうと言うわけではないが、つまらなそうでもなかった。
映画を見に行けば「今一番話題のものね」と言ってくれたし、食事に行けば「なるほど、今はこのタイプのものが人気なのね」と言ってくれたり、いろいろと興味を持ってくれているようだった。
「……おもしろいですか?」
考えていたことが思わず口をついてしまい、陽太は慌てる。
しかし、環菜は気にせずに返事をした。
「そうね。イベントのときに街に出れば、経済動向をこの目で見ることになるから、やはり役に立つわ。こういったイベント時に行く場所にしても、流行り廃りがある。それは現在のパラミタの情勢を知ることにも、経済動静を知ることにもなるしね」
「な、なるほど……」
それだとデートと言うよりも市場調査と言う感じだなと思いながら、ひとまず環菜が興味を持ってくれたなら良かったと陽太は思うことにした。
「あの……今日のデートは何点でしたか?」
他の人と比べて最低点かもと思いながら、臆病な陽太は確認せずにいられない。
「62点」
環菜はばっさりと言った。
「コースがそのまますぎるわ。せめて一つはアレンジすることね」
「……はい」
「でも、自分が慣れないことをする時に他を参考にするという姿勢はいいと思うわ。模倣から始まるものだし、分かりもしないのに突飛なことをするよりずっといい」
環菜に褒められ、陽太は顔を上げ、ここだっ、と思って口を開いた。
「俺は貴女のことが大好きです」
ライトアップされた公園の中で、陽太は告白した。
「彼氏……候補の補欠の次点の二軍ベンチウォーマーのマネージャーの弟子の末席、くらいには認めてもらえると非常に嬉しいと言いますか、なんと言いますか」
嗚呼カッコ悪い告白……と自分でも思いながら陽太は返事を待った。
「……自分の企業の事業に興味を持って欲しいときね」
少し間が空いた後、環菜は言った。
「我が社はこれに関しては大いなる自信があります! どうぞ見てください! くらいの気概と売りがなければ、なかなか投資をしてくれる企業家に相手にしてもらえないの」
環菜の言葉の意味を図りかねてる陽太に環菜は尋ねた。
「あなたにはそういう売りはあるかしら?」
何もないけど一生懸命頑張ります、が通じるのは小さい子のお遊戯会だけよ、と環菜は言ったのだった。