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リアクション
第3章 「友達がアイドルデビューするっていうんで、せっかくだから観て行ってやって」
■□■1■□■「本当は僕は君のことが大好きなんだあああああ!!」
一方そのころ、【イルミンの良心】ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)は、
霧雨 透乃(きりさめ・とうの)にちぎっては投げられたつぁんだ軍地祇達の治療を行っていた。
(前回からつぁんだ軍に協力してた地祇さん達は、
律儀で良い人達みたいですね。
それなのに、争いに巻き込まれてさんざんな目にあっていたような……なんだか放っておけないですっ)
「はい、これで大丈夫ですよっ。
……なるほど、つぁんださんに借金のことで弱みを握られているんですね」
「ううう、いいやつだな、おまえ」
地祇をヒールで治療したソアは、親身になって相談に乗る。
「私達に考えがあります。
しゃんばらだいこうやさん達とざんすかさん達の争いを止めるのに協力していただけないでしょうか。
つぁんだ軍の地祇さん達には、
私のパートナーの魔道書『空中庭園』 ソラ(くうちゅうていえん・そら)に捕まったふりをしてほしいんです」
同じくソアのパートナーの白熊型ゆる族雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)も、つぁんだ軍地祇に協力を要請する。
「しゃんばらだいこうやの良心にうったえかけるために、
一芝居打ってくれよ。
しゃんばらだいこうやは悪いやつじゃないってじゃたも言ってたしな。
助けを求める小さい女の子達……これは、芝居と分かっている俺様でも思わず助けたくなっちまうぜっ!
実は良い人っぽいしゃんばらだいこうやなら、これは効くに違いないぜ!」
「こ、このペースでダメージを受け続けたら、
いくらなんでも死んでしまう……!」
ボロボロになってきまくから逃げ出したつぁんだに、
緋桜 ケイ(ひおう・けい)が近づく。
「つぁんだ、すまん」
「ぐぎゃっ!?」
ケイは後ろから雷術を放ち、つぁんだを気絶させた。
「あ、あれ!? スタンガンみたいに気絶させるだけのつもりだったんだが……」
黒コゲになったつぁんだを見て、ケイは言う。
ケイのパートナーの魔女悠久ノ カナタ(とわの・かなた)は言う。
「ふむ。雷術はスタンガンとしては使えないということだな。
コメディシナリオだから大丈夫だが、
シリアスシナリオで助けたい者に同じことをしたら危険だろう。
気をつけねばな」
「いや、充分かなりかわいそうなことをしてしまったぜ……。
でも、これもひらにぃとつぁんだを仲良くさせる作戦のためだ。
耐えてくれ、つぁんだ……!」
ケイはつぁんだを抱えあげて立たせると、獅子舞のように二人羽織した。
(以前アーデルハイトで腹話術をしていたソアから閃いたんだが、
俺ってつぁんだと声が似ているんだ。
そういえば、ソアやヴァーナーともなんとなく声質が近いような……。
それはともかく、俺がつぁんだの声真似をして、
ひらにぃに好意を伝えてやれば、二人を仲良くさせることだってできるんじゃないか?
……本当ならつぁんだが直接言ってやればいいんだが、
マジでビビってるみたいだし、余計なことを喋りかねないしな)
ケイは、そう考えて、つぁんだの台詞を言い、ひらにぃに伝えようとしているのだった。
黒コゲなつぁんだをひらにぃの前に連れて行き、ケイは言う。
「や、やめるんだ、ひらにぃー!
話を聞いてくれ!」
「オマエ、コロス」
手動ドリルを回転させながらひらにぃは言う。
「僕達、古王国時代からずっと友達だったじゃないか!
一緒に邪悪なザンスカールのラリアットじじいを倒したときのことを思い出すんだ!
僕が君の悪口を言っていたっていうのも、全部誤解だったんだよ!」
「うむ。
つぁんだが流したという、おぬしときまくの悪い噂も全て誤解なのだ。
噂には尾びれ背びれがつくもの……。
「素朴な農民娘なきまくもいいけど、素直クールで無表情キャラなひらにぃが一番かわいいんだ!」
といった感じに話していたつぁんだの言葉が、
人から人へと伝わる間に、その内容もまるで反転したものとなってしまったのだ」
カナタが援護する。
ひらにぃは黙ってドリルを高速で回転させる。
「そ、そうだったんだよ!
僕がシャンバラの地祇の長になろうとしたのも、
偉くなって、ひらにぃにもう一度振り向いてもらって、誤解を解くためだったんだ!」
ひらにぃはすごい勢いでドリルを回転させる。
「混乱しているようだな。あと一押しだ」
カナタがこっそり言う。
「……ひらにぃ!
5000年間ずっと言えなかったんだけど、
本当は僕は君のことが大好きなんだあああああ!!」
ひらにぃはドリルの回転を止め、言う。
「オマエ、スキ」
ケイの告白まがいの言葉に、ひらにぃは簡単に陥落する。
(よし、素直なひらにぃには、
きっとこういう直球的な言葉のほうが効果的だと思っていたが、
予想通りだったぜ。
これでつぁんだにケガさせてしまったのが無駄にならずにすんだな)
ケイは思う。
「はっ!?
僕はいったい!?
ぎょわああああああああああ!?
どうしてひらにぃがここにいるんだ!?」
「オマエ、スキ」
「いやあああああああああ、こ、殺さないで!
って、ええ!?」
気がついて混乱するつぁんだに、カナタは耳打ちする。
「つぁんだよ、
わらわ達の作戦で、せっかくひらにぃに好意を持ってもらえたのだ。
もし、つぁんだの好意が嘘だったと知れたら、
素直クールで無表情キャラなひらにぃは『ヤンデレ化』してしまうかもしれぬな。
とてもよく似合……いや、本気でつぁんだが殺されかねぬ。
くれぐれもバレないように気をつけるのだぞ」
「え? え!?」
つぁんだが混乱していると、『空中庭園』 ソラ(くうちゅうていえん・そら)の声が高いところから響く。
「ふふふ……まさか大物の地祇が5人もこの場に集まるとは、手間がはぶけたわ」
「むむっ、何者だ!」
しゃんばらだいこうやは言う。
「この場であなた達を抹殺すれば、残りの地祇など恐れるに足らないわ!
シャンバラ地方は地祇に代わって、私達魔道書が支配してやるのよっ!
さあ、武器を捨てなさい!
従わなければ、人質は灰になるわよ……こんな風にね」
ソラは、観光地の絵葉書を手に取ると、火術で火をつける。
「たーすーけーてー」
ソアとベアに協力を要請されたつぁんだ軍の地祇達が、棒読み口調で言う。
ケイのパートナーの魔道書『地底迷宮』 ミファ(ちていめいきゅう・みふぁ)は、
ソラに協力して悪役を演じる。
(みんなを仲良くさせるために、また自ら悪役を買って出るなんて……姉様は、やっぱりすごいです!
私も姉様や地祇のみなさんのためにも、がんばって悪役をして、
しゃんばらだいこうやさんが本当はいい人だってことを、
ざんすかさんやつぁんださんに教えてあげなきゃ!)
「売っても1Gにしかなりませんけど、こうすれば役立ちますね」
ミファは、観光地の絵葉書を集めて、焼き芋を作り始めた。
「はやくしないと地祇さんたちに、この焼き芋を食べさせますよ?
契約アイテムで作った焼き芋を食べるのはどんな気分でしょうね」
ミファは、姉であるソラを妄信しており、悪意ゼロであった。
「契約アイテムで!? げ、外道なのである!」
しゃんばらだいこうやが叫ぶ。
「ちょ、ちょっとミファ!?」
ソラもドン引きする中、ミファは続ける。
「だいたい、『えはがきうりのちぎ』とか『怪物ゴドヒなー』とか、
観光地の絵葉書を地祇のみなさんは配りすぎなんですよ。
アイテムを捨てる機能が実装されたのも、
みなさんがそれにうんざりしてのことに違いないです。
それでも、こうして焼き芋を作る落ち葉の代わりにはなるんですから、
役には立ってるってことなんでしょうね」
「ひ、ひどすぎるのだよ!
鬼なのである! 悪魔なのである!」
「ちょ、ちょっと、ミファ、いくら演技だからって、
発言が黒すぎるわよ!?
それに、あんまりメタ発言すると怒られちゃうわよ」
「お、おい、演技……だよな!?」
「そ、そう思いたい」
「こえーよ、魔道書、さすが封印されてたとかいう設定の種族だな……!」
しゃんばらだいこうやが非難し、
ソラがツッコミを入れ、人質役の地祇達がざわめく。
「ソラはどうやら、比較的雑魚のざんすかとつぁんだはノーマークみたいだぜ。
しゃんばらだいこうやがソラの注意を引いている間に、
ざんすか達が人質を救出すれば、何とかなりそうだぜ!」
ベアは、作戦実行のため、「悪の魔道書ソラ」と無関係のふりをして、
しゃんばらだいこうやとざんすかに言う。
「なにっ、ざんすか達と共闘するだと!?
しかし、巻き込まれただけの地祇を見捨てるわけには……うむむ」
「ミーを雑魚扱いするとか、
あくのまどうしょ姉妹は許せないざんす!」
しゃんばらだいこうやは迷い、ざんすかは怒る。
こうして、ソラを慕うミファの熱演に人質役の地祇達やソラ自身もドン引きする中、
ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は、つぁんだに近づく。
「つぁんだちゃんは、野心がつよいからよわいってきいたです。
野心をすてて、みんなとハグとちゅ〜して仲よくなったらいつのまにかきっと強くなってるです!」
ヴァーナーは、つぁんだをハグする。
「ボクはつぁんだちゃんが大スキだからみかたなんです♪」
「ぎゃあああああ、や、やめ、頬にちゅーとかしながらベアハッグするのは……がはっ」
「あれ? あっ、つぁんだちゃん、またケガしてるです!
黒コゲにするなんて、誰がこんなひどいことを!」
「な、なんかごめん……。
でも、ヴァーナーもそれ、つぁんだ骨折れてるんじゃないのか……?」
ケイはヴァーナーにツッコミを入れる。
ヴァーナーがつぁんだを回復させていると、
影野 陽太(かげの・ようた)がやってくる。
「あっ、師匠!
はぐちゅーの特訓ですか?」
「そうです!
地祇のみんなを仲よくさせるのに協力してほしいです!」
(一応、つぁんだの謀略力には一目置くべきところもあるので、
……今回もつぁんだを手伝うつもりでしたが、
師匠がいるんなら話は別です)
「大好きな環菜会長の好意ゲット!」を目指すための
「ミルザム・ツァンダ(みるざむ・つぁんだ)の女王就任の実現に貢献」を果たすために
「無いよりはマシだと思って、つぁんだの協力をこぎつける」構想で
「つぁんだに協力」している陽太だったが、
はぐちゅー師匠のヴァーナーがいたので、考えを変える。
「これ、つぁんだがひらにぃにって言ってました。
「ラブセンサー」をプレゼントします。
相手からの好意が具体的な数値として測れてしまう素晴らしい、そして残酷な機械です……」
「オマエ、スキ」
ひらにぃは、陽太からラブセンサーを受け取る。
陽太は、つぁんだからひらにぃへの好意が少ないのではないかと心配する。
「えーと、とはいうものの、
大切なのは数値ではなくてですね……」
「嘘でもよいからこの者を愛してみるのだ、さもなければ死ぬぞ」
「そんなことできるかあああ」
カナタに耳打ちされてつぁんだは泣く。
逃げようとするつぁんだを、ヴァーナーはベアハッグで捕まえ、
むりやりひらにぃと一緒にハグさせてくっつける。
「ひらにぃちゃんもかわいいです、みんなで仲よくなんです♪」
「オマエ、スキ」
「うわあああああ」
「どうですか、あったかくてあんしんなんです〜、こうすればみんな仲よしになれるんです〜」
「オマエ、スキ」
「安心できるかああああああ」
ハグちゅー師匠なヴァーナーは、ケイや陽太、ソアもまとめてハグちゅーして楽しそうにしている。
「ほら、みんな仲よしなんです」
「お、おい、こんな皆見てる前で……」
「師匠! これがはぐちゅーの道ですね! 深いです!」
「これで、みなさん仲良くなってくれればいいんですけど……」
ソラとミファは、その様子を見て、ヒーローショーっぽく言う。
「なんですって? 地祇達が仲良く……ち、力が失われていく!」
「ああっ、しっかりしてください、姉様!」
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