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砂上楼閣 第二部 【前編】

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砂上楼閣 第二部 【前編】

リアクション

一方そのころ、サフィ・ゼラズニイ(さふぃ・ぜらずにい)は、
黒髪の剣の花嫁と入れ替わっている天音を着せ替えて、マネキンにしていた。
「はい、こちらが地球で700年前から100年前に存在していた
 オスマン朝の花嫁衣裳となっておりまーす!
 大変貴重な物なのでお触れにならないでくださーい♪」
文化祭らしくするということと、
近づく人にディテクトエビルを使用して、引っかかる人は牽制するという作戦であった。
サフィのディテクトエビルが反応する。
メニエス・レイン(めにえす・れいん)と、
パートナーのミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)が堂々と現れたのだった。
「ちょっと、何たくらんでるのよ。
 花嫁には触れないでくださーい!」
「やーね、文化祭見に来ただけじゃない」
「メニエス様に薄汚い手でさわらないでくださいます?」
サフィに、メニエスは余裕の笑みを浮かべ、ミストラルは従者としてメニエスを護衛する。
メニエスは、アディーンの姿を認めると言う。
「こっち来ない?
 薔薇学なんかにいるより、あたしと一緒の方が、いろいろ楽しいわよ」
「えー、でもなー、俺……」
「あら、迷ってるの?
 これが最後のチャンスよ。
 あなた、結局、流されてばっかりよね。
 あたしは違うわ。
 自分の生き方は自分で決めてる。いつだってね」
メニエス達が押し問答してるところに、大きな音が響く。

パワードスーツを着用した国頭 武尊(くにがみ・たける)と、
猫井 又吉(ねこい・またきち)が、薔薇学の敷地に光学迷彩を使用して潜入し、
派手に現れたのだった。
「第六天魔衆。招きに応じて推参なり」
芝居がかった台詞で武尊は言う。
武尊はパワードレーザーを撃ち、周囲の物を派手に破壊する。
「燃えろよ、燃えろ、炎よ燃えろ。火の粉を巻き上げ薔薇学焦がせ〜ってか」
又吉は、火炎放射器を振り回す。
恐慌状態になった人々が逃げ惑う。

「始まったみたい。
 あなた、綺麗な顔してるから、側に置いておきたかったのに」
メニエスは残念そうに言うと、
アボミネーションで恐怖を撒き散らし、
地獄の天使で異形の翼を生やす。
「お、お姫さん……!?」
「言ったわよね、アディーン。これが最後のチャンスよ。
 今、あたしと一緒に来るか。
 それとも、死ぬか」
メニエスは、ブリザードを放つ。

武尊と又吉は派手に暴れまくる。
「こっちにゃ、イルミンのコントラクターや、
シャンバラの獅子が付いてんだ。
薔薇学の青瓢箪如きに遅れを取る訳ねーだろ」
武尊は、ケイやレオンハルトの潜入捜査には気づいていないため、
ついうっかり二人のあだ名を口にする。
しかし、「獅子」はともかく、
「コントラクター」は「契約者」を意味する一般名詞であり、
誰かを特定できる言葉ではない。

仁藤 輪子(にとう・りんこ)と、
パートナーのイルミース・アンダーワン(いるみーす・あんだーわん)は、
有利な立場と情報を得るため、
アーダルヴェルトと鏖殺寺院に協力し取り入りたいと考えていた。
(アンダーワン卿が仰るには……。
 『女王器にせよ神子にせよ、
 正しい知識も無く手に入れても持て余すだけだ。
 先ずは知識と情報を得ねばな。
 狙うのはその後で良い。
 最後に我が笑えればそれで良いのだ』……だそうですから)
輪子は、自分を認めてくれた唯一の存在であるイルミースに従う。
天魔衆の本隊に先立って襲撃して、
謙信により警備の目を自分達に向けさせるつもりであった。
「ははははは!
 消えうせろ、地球人ども!」
イルミースは高笑う。
小型飛空艇に乗った輪子とイルミースは、顔を隠し、地球人排斥派を装っているのである。
輪子は、ライトニングウェポンを纏わせたリベットガンを撃ち、
イルミースは、アーミーショットガンを乱射する。

吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)は、襲撃時の混乱を招き、
謙信が動きやすいようにしようとする。
「天魔衆! オレの前に現れて生きて帰れると思うなよォ!」
血煙爪を振り回して、竜司は武尊と又吉に突っ込む。
「って、野郎、何考えてやがる!?」
武尊は、竜司にパワードレーザーを叩き込む。
「うおおおおおおおおお!!」
竜司は本気で戦い、わざと怪我をする。
さらに、爆炎波で建物の壁に穴を開けるなど、派手な破壊活動をする。
「竜司!」
竜司に剣の花嫁を守るよう言われていた謙信だが、
怪我をするのを見て動揺する。
(ったく、ムカつく薔薇学をタシガンから追い出すより、
 アイツのためにアーダルヴェルトをぶっ倒そうかと思ったが、
 そしたら今度はまた薔薇学がのさばるかもしれねえしな……)
「めんどくせえんだよ! ごるうあああああ!」
竜司は、迷いを振り払うように、暴れ続けた。

クライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)は、バーストダッシュで現場に急行する。
(騎士として、提案者として、今回の文化祭は絶対無事に済ませる!)
クライスは、住民とメニエスの間に立って、ディフェンスシフトを行う。
「何? 死にたいの?」
メニエスは笑う。
「今のうちに、避難、してください!」
クライスの目的は、一般人の壁役になることであった。
ローレンス・ハワード(ろーれんす・はわーど)は、
あらかじめ複数の避難経路を準備しており、
高い場所から拡声器で呼びかける。
「恐れながら紳士の方々、御婦人方の避難を優先させて下さい!」
ジィーン・ギルワルド(じぃーん・ぎるわるど)は、
巨大な剣を腕一本で構え、大上段から力任せの一撃で敵を叩き潰す面打ちを、
メニエスに喰らわそうとする。
ミストラルは、カタールで防ぐ。
「おっと、よけたか。流石に素直にくらってはくれないな」
「わたくしはメニエス様の盾。何人たりとも触れさせはしませんわ。
 メニエス様に歯向かったこと、
 後悔しながら死ぬがいいですわ!」
ミストラルはジィーンに反撃する。

「おい、あんなガキが前線に……俺達にできることはないか!?」
タシガンの民が叫ぶ。
「ありがとうございます! 
 けど、襲撃がここ一箇所のみとは思えません。
 ですので、ここは僕が食い止めますので、避難する皆様の護衛をお願いします!」
クライスはタシガンの民の助力に礼を言う。

本物の剣の花嫁達の周囲で、
警備を行っていた、高月 芳樹(たかつき・よしき)と、
パートナーのアメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)
伯道上人著 『金烏玉兎集』(はくどうしょうにんちょ・きんうぎょくとしゅう)
マリル・システルース(まりる・しすてるーす)
比島 真紀(ひしま・まき)と、
パートナーのサイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)は、一緒に戦闘を行う。

「また、君か、メニエス!」
芳樹は、遺跡で対峙した時のことを思い出し言う。
「それはこっちの台詞よ!」
メニエスは芳樹をにらむ。
「アディーンも、他の剣の花嫁達も、
 君達には渡さない!」
芳樹はライトブレードを振るい、爆炎波を放つ。
「一般人を守るのが、軍人である自分の任務であります!」
真紀は、ヘキサハンマーを構えて、傷ついたクライスにヒールをかける。
「タシガンの皆さんを早く安全な場所に誘導してください!」
真紀は叫ぶ。
「誰かにとって大切な居場所を、
 壊す権利など誰にもない。
 空京の虐殺の悲劇を……繰り返させるものか」
「何それ、いつの話よ」
「君は……!」
芳樹に、メニエスは薄笑いを浮かべる。
「邪悪な者よ、退くであります!」
真紀はバニッシュで、メニエスとミストラルを攻撃する。
「……痛いじゃない」
「分をわきまえなさい、下郎が!」
メニエスに傷が付けられたのを見て、ミストラルは真紀を狙う。
「……ッ!
 相手は少人数であります!
 連携して攻撃を!」
真紀は周囲に呼びかける。

「ヒャッハァー!!」
南 鮪(みなみ・まぐろ)が、火炎放射器を振り回して現れる。
「ヒャッハァ〜、
 人のシマに後から来て好き放題ってのは、
 パラ実の野盗と差が無いってのは判るぜ。
 追い出されても仕方ねえよなァ〜?
 俺も何時も追い出されるから判るぜ」
鮪は、火炎放射器を上空に向けて、火柱を上げる。
「ヒャッハァ〜信長のオッサンが話があるってよ」
上空の飛空挺から、織田 信長(おだ・のぶなが)が現れる。
「タシガン民意を完全に無視した思想体制の押し売り。
 問題解決したとの主張も、
 明らかに一方的な勝利宣言であり、
 民は力付くで押え付けられ何も納得していない。
 地球人勢力によってパラミタの、
 このタシガンの住民の主権が、
 騒乱に紛れた心無き一部地球人勢力によって脅かされている!
 特に現在の薔薇学はその巣窟である!」
南蛮鎧にビロードマントをひるがえし、信長は堂々と演説する。
「ならば契約者が暴力に屈せしタシガンが民の剣となるは我等よ!
 誇りある民よ、おぬしらも憂国の士よ。共に立ち行こうぞ」
恐慌状態から、一転、演説を聞き入り、
呆然としていたタシガンの民の中から、声があがる。
「そうだ……。
 地球人達さえ来なければ!」
「俺達はこんな争いにも巻きこまれなかったんじゃないのか!?」
ハーリー・デビットソン(はーりー・でびっとそん)は、信長を乗せて、
軽身功と加速ブースターを使用し、
建物を伝わって地上に着地する。
「ドルンドルンドルンドルンドルン!!」
ハーリーはエンジン音を轟かし、信長を乗せて走る。


松平 岩造(まつだいら・がんぞう)は、ちょうど、ジェイダスに、
前回集めた証拠は教導団の査問委員会に提出した事を報告していたところだった。
「レオンハルトの行動は薔薇学への敵対行為です。
 天魔衆は全校に指名手配し、放校処分にすべきです」
岩造は言う。
ファルコン・ナイト(ふぁるこん・ないと)の連れてきていた二匹の犬がけたたましく吼える。
「天魔衆か!?」
ファルコンは、メモリープロジェクターで撮影をしようとするが、
プロジェクターは映像を投影、再生するための機器であり、
撮影を行うことはできない。
しかたなく、ファルコンは携帯のカメラを手にする。
ドラニオ・フェイロン(どらにお・ふぇいろん)は、
獅子小隊の姿をカメラ、ICレコーダーに記録しようと考えていたが、
薔薇学に天魔衆に潜入捜査中の獅子小隊メンバーの姿はない。
ドラニオは、味方の教導団員も警戒していた。
獅子小隊の侵入や、今回限りの愉快犯が現れるのではと思っての行動だった。