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リアクション
「女王器に大いに興味があるけれど、それより先にする事があるかな」
黒崎 天音(くろさき・あまね)は、自分が黒髪の剣の花嫁と入れ替わる作戦を提案した。
天魔衆の黒幕を探るために、潜入作戦を行おうとしているのだった。
「運ばれた先に吸血鬼がいるかもしれないからね。
安眠と、暗示にかかりにくくするために、
吸精幻夜をあらかじめかけておいてくれないかな」
パートナーのブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)は、眉間にしわを寄せる。
「そう単純に上手くいくとは思えないが、止めたところで無駄なようだな。
しかし、吸精幻夜か……」
特別な存在である天音に、吸血行動をするというのには、穏やかな気持ちではいられない。
「面白いですね。ぜひやりましょう」
西条 霧神(さいじょう・きりがみ)は言う。
「じゃあ、鬼院、お願い」
天音は、にっこり笑って、自分の首を指さす。
「オ、オレが黒崎に……!?」
鬼院 尋人(きいん・ひろと)は、激しく動揺する。
パートナーの霧神に助けを求めて視線を送るが、拒否される。
「のど仏が動いてるような首を吸うのは嫌ですー」
呀 雷號(が・らいごう)は、パートナー達の様子を見て、
何か言いたげにするが、無言でいる。
(ジェイダス校長といい、薔薇の学舍の生徒というのはちょっと変わっているな……)
剣の花嫁襲撃で、天音がさらわれた際には、雷號は雪豹の姿で追跡するつもりだった。
ブルーズは、謙信が黒髪の剣の花嫁と天音が入れ替わったのを、
感付かれないように注意するつもりである。
「じゃあ、はじめようか」
剣の花嫁に薔薇の学舎の制服を着せ、
その衣装に着替える間に、天音は尋人を促す。
(こ、こんなことなら、練習しておくべきだった……)
尋人は、吸血鬼の霧神とパートナー契約しているものの、
吸精幻夜には、行為自体が恥かしく、苦手意識がある。
しかも、相手は、憧れの先輩である天音なのだ。
天音は、尋人の自分への気持ちを知っており、それでいて翻弄しているのであった。
これが、二人のいつもの関係なのである。
自ら襟元を広げて、天音の白い首筋があらわになる。
笑みを浮かべて、天音は尋人の手を取り、抱き寄せる。
尋人は、至近距離にある天音の顔と、薄く浮かび上がった首の血管を見比べて、
顔を紅潮させる。
「う……あ……」
言葉にならないうめきがもれる。
「はじめてかい?
さあ、力を抜いて。
……そう。
焦らず、傷をつけないよう、やさしく、ね」
天音に促されて、吸血を行う尋人だが、
まるで、吸精幻夜で幻惑されているのは自分の方のような気分になる。
(眠ること。
あと、目覚めたら、真実を探求すること……)
微笑を浮かべて、天音は眠りにつく。
ぼんやりした気分になり、幻を見たり、相手に心酔することはあるが、
具体的な命令の暗示にはかからないのだった。
(まあ、実は普通にキスしたり、手を握るだけでも発動できるんですけど、
面白いので、当分の間、黙っておきましょう)
霧神は、真っ赤になって、天音を棺に寝かせる尋人を見ながら思う。
「あ、あとは我がやっておくからいいぞ」
吸血行為をやきもきしながら見守っていたブルーズは、
尋人と天音の間に割り込み、
あらかじめ言われていたとおり、天音の顔を髪で隠す。
そして、吸血の痕が見えないように、襟を整えるのであった。
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