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リアクション
第4章 ソーセージ争奪戦
■□■1■□■ ヴァイシャリー湖・包囲
ヴァイシャリー湖、ヴァイシャリーの町周辺にて。
「大丈夫よ。エレーンルナは、あなたの――私のでもあるのよね――娘は、必ず私が助ける」
ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)は、
未来の自分にそう言い、懐柔して寝返らせた攻撃型原子力潜水艦に搭乗して、
ヴァイシャリーの沖合からウェットスーツを着込んで密かに上陸していた。
レジスタンスの一党と合流したローザマリアは、
全周波数で作戦開始コードを流す。
娘のいる建物に潜入したローザマリアは、未来の娘にねぎらいの言葉をかける。
「――ええ、そうよ。ママよ。よく、頑張ったわね……
全く、こんな状況下でも泰然と出来るなんて、
誰に似たんだか……本当に、優しげな目元とか、あの人そっくりだわ。
エレーン、ラズィーヤに御別れは言わないでいいの?」
ローザマリアの未来の娘は小ラズィーヤの学友であった。
「そう……
なら、此処からの展開は少しハードになるわ。
何があっても、私の手を離しちゃダメよ」
★☆★
一方、未来・ローザマリアは、
レジスタンスが蜂起するのを見計らい、
あらかじめシャンバラ各地からレジスタンス勢力を
揚陸艦で収容したり決起に際して
彼らを迅速に運搬するためのヘリコプターや
高速揚陸ホバークラフトを多数手配して派遣していた。
その上でレジスタンス要員をヘリコプターで効果的に運送しておいたのだった。
さらに、
レジスタンスから決起の日程を聞き、
それにあわせて、
前回懐柔した海軍将兵達に艦艇の乗組員の懐柔も依頼しておきつつ、
海軍将兵達に決起の日に観艦式を行うよう
軍上層部にけしかけるよう仕向けておいたのだった。
未来・ローザマリアは、
静香の傀儡の艦隊司令を極秘裏に拘束して、
特殊メイクでその司令官に変装し密かに入れ替わっていた。
そして、演説を開始する。
「先のヴァイシャリー以外全部沈没に伴う混乱は、シャンバラにとって最悪の一年であった。
その困難を乗り越え、いままた数年ぶりに、
海の一大ページェント、観艦式を挙行できることは、
シャンバラの安定と平和を具現化したものとして、喜びに堪えない。
私は今此処に、元シャンバラ大荒野の茫洋たる海原へ、
我等がシャンバラ王国海軍の勇壮なる姿を誇示すべく、
観艦式の開催を高らかに宣言するものである。
諸君。煌めく星々の光を、恵の光を放ち続ける太陽を、
そして目映くも美しい母なるシャンバラを見てほしい」
未来・ローザマリアは、一旦、演説を切って、
フェイスマスクを外して正体を明かす。
観衆にどよめきが走る。
「この共有すべきパラミタの大地の恩恵を、
一部の矮小なる“奸臣”らの蹂躙にまかせることは、
即ち、人間としての尊厳を捨て去ることに他ならない。
諸君、我々は新たなる決意の時を迎えたのだ」
未来・ローザマリアは演説を続ける。
「シャンバラ王国海軍全艦隊の全艦艇将兵諸君に告ぐ。
私はローザマリア・クライツァールである。
これより本艦隊は王国軍総司令部からの命令を変更し、
現在、レジスタンスと名乗る志士たちと合流する。
今回の事件に於いて、小官は“義”はレジスタンスに在りと見た。
彼らの主張する通り、
パラミタはあくまでパラミタの物であり、このシャンバラこそがその中心なのである。
先の混乱に乗じて台頭してきた“奸臣”にそそのかされ、
“奸臣”の言いなりとなった王国の……
いや、実体は“奸臣”らの傀儡政権が下した命令に王国海軍は従うことは無い、と小官は判断する。
また“パラミタ人”である誇りが有るならば、決して従ってはならない。
故にこれは王室政府、及び王国海軍への抗命ではない。
シャンバラ王国海軍はシャンバラ王国の為に戦う軍隊なのである。
あの「独立の為の戦争」を想起せよ。
正義は我等とエリュシオンのいずれに在ったのか?
小官の決定に不服な者は数時間以内に艦隊より退去せよ。
真にパラミタ人たる誇りを持つ者のみ、小官と共に行動せよ。
諸君の英断を期待する。シャンバラ王国海軍万歳。以上」
演説終了とともに、地響きのようなシュプレヒコールがあがる。
「ローザマリア! ローザマリア! ローザマリア!」
かくして、未来・静香が、ソーセージ争奪戦のために動いている間、
ヴァイシャリーは艦隊に包囲され、
大変なことになっていたのであった。
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