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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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「鉄心は先行部隊に行ったか。
 今回の遠征は優秀な新人も多く従軍しているからな……」
 龍雷連隊隊長の松平は言う。
「現地には私の知る者としては三船がいる。空路には我が隊から煙(けむい)を派遣している。ふふふ」
 松平はニタリと笑んだ。「そしてここに陸路を行く龍雷本隊も例外ではないぞ」
 トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)
 龍雷連隊の新人だ。
 トマスは英霊に名軍師魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)がついている。魯粛自身は交渉のサポート等に動くことになるのだが、その英霊効果あってか、トマス自身の行った献策には遠征の全局を見通すものがあり、松平はこれを騎凛教官に届けた。
 トマスは、表立っての協力が望めないヴァイシャリー、イルミンスール、キマクについて、行軍のことわりを入れることと表立ってではない協力を依頼することについて、本隊に先駆けて使者を遣わす必要を述べた。実際には、師団の軍師級の人物が個々に赴いていたわけだが、トマスの言うには――今回の出兵は、旧シャンバラ古王国の版図であったコンロンの、いまだシャンバラの遺徳を信じてくれている勢力からの依頼に基づいて、コンロンの内戦状態を収めにいくことを強調すべき点。また、これは言うべきことではないが、見え隠れするエリュシオンの影について指摘しコンロン内乱といえこれが間接的な対エリュシオン戦争になろうこともトマスは見通した。(これは、重要な見方になってくる。)また、コンロン動向の行方によっては、ヒラニプラ本校から更なる援助や補給物資を届けるルートとして、この陸路〜水路を使い続ける必要が出てくる。そうなれば、各地域との交渉はやはり避けて通れない。
 トマスとしては、陸路の安全確保というだけでなく、今後のために布石を置いておくこととしたかったのだ。コンロンの問題、じゃない。東西に分かれている"今の""シャンバラの"問題なんだ。トマスはそう考える。気鋭の新人の一人と言えた。
「そのためにも、近隣を通行するにあたっては、教導団員に固く軍律を守らせ、行軍のために不必要なまでには各校の領域内には近寄らせないこと等を固く約束させねば」
 これからの使命に決意を固くするトマス。その隣では、ベテラン軍師の甲賀が今は静かに己の策を巡らせている。
「龍雷連隊! 軍規を乱す者は処罰するぞ!」
 松平は厳しく言いつけた。
 
 中軍を担うノイエ・シュテルンにおいてもこの点はとりわけ徹底されていた。
 指揮を預かる昴コウジ(すばる・こうじ)
「そう、我々は王国の秩序と安寧の為に戦う集団である!
 乱暴凌辱、刈田狼藉は一切を固く禁じる! 逆らう者は斬!
 抜け駆け、首取りも禁止だ!
 教導団は統制された武力にこそ報いるぞ!」
「了解(コピー)」
 友軍の隊列維持を最優先とし命令を受領したライラプス・オライオン(らいらぷす・おらいおん)
「行軍中は。綱紀粛正を厳と成す。
 主(あるじ)および能登殿(ノリさん)に於かれては、指揮官として特に留意願います」
「う、うむ、む、無論だ!」
 後軍にかけては、同じくノイエ・シュテルンのケーニッヒ・ファウスト(けーにっひ・ふぁうすと)が100を率い昴と共に兵站物資を守ることを心がけている。
 ケーニッヒとしては、「(個人的には大いに不満ありなのだが……)リーダーのジーベックから出発前にきつく念押しされてるからなぁ。やむを得ん」。特に地元住民とのトラブルを起こさないことに細心の注意をと促されている。指揮下の兵士には勿論のこと、自分自身に対しても、とのことだ。
「おう、兵が戻ってきたか」
 ノイエ・シュテルンからは、大過なく迅速に通過できるよう、毎日、行軍ルートを地元の当局者に通告しているのだ。また、彼らの同行(実質的には監視)も受け入れる、とする。この辺りについてもさすがに新星は徹底していた。
「まあ、この辺はまだ大丈夫だろうが……」