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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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陸路 2
行軍

 
*編成*
◇先行部隊 金住少尉(50)、源 鉄心
◇中軍 比島少尉(50)、ノイエ・シュテルン(300・昴コウジ)
◇後軍 ノイエ・シュテルン(100・ケーニッヒ)、騎狼部隊(100・デゼル、林田樹)
◇輜重(輸送隊) 大岡少尉(50)、佐野葵
◇水軍(?) 龍雷連隊(100・松平、甲賀、トマス)
 
 この遠征は、いよいよシャンバラ地方を越えて外の地域へと冒険の舞台を移すことになる遠征でもある。
 現地入りしている教導団の少数が築いているクレセントベースはコンロンでも南の地域だが、そこまでもかなりの距離(一千キロメートル程度)である。
 随分遠くまでの行軍になることと、今までよりはるかに規模の大きな敵になるであろうことに、金住 健勝(かなずみ・けんしょう)は緊張と使命感に満ちている。陸路の先行部隊を率いながら、
 (シャンバラを守るために戦う……そんな事態がもう、すぐそこにまで来ているのでありますね。)と。
 一方その隣には、やる気満々のパートナー、レジーナ・アラトリウス(れじーな・あらとりうす)
 彼女の全然緊張もしていない様子に、少し羨ましいな、と思う金住。
 そのレジーナはというと、今回の出兵先のコンロン……更にその先。隣り合うのはエリュシオン帝国。だから、かの国にいる女王陛下へと、思いを馳せていたのだ。
 (陛下、必ずお迎えにあがります。どうかその時まで待っていてください。)
 女王復活の儀式を経て、彼女は以前の落ち込みからはすでに立ち直っている。
 まだ先のことだが、レジーナの予期する通り、おそらくこの出兵はエリュシオンとの何らかの関係を……呼び起こすことになるだろう。
「今は前に進みましょう。未来を手に入れるために」
 金住は彼女のその決意までは知らず、重い使命にため息まじり、しかし今はしっかりと兵をまとめなければ。
「あまり、本隊と離れすぎないように、であります」
 コンロンに近付くまでは、見知っている地域であるので、そこまで地形に気を取られることはない。
 先行部隊には、彼も斥候を願い出ている源 鉄心(みなもと・てっしん)の姿もあった。
 その姓名といでたちから、日本出身……とは思われるが、些か、まだ謎に満ちた人物でもある。パラミタには、まだやってきて間もない。
 学生か……というと、彼曰く、学生と教員の境界に潜む妖怪の様な、変な学生。教導団騎兵科に所属するが、他科にも幅広く顔を出しているようである。授業では、地球式の訓練や学科についてはすでに経験があったものを省き、余った時間をパラミタ式戦術の研究などに充てている、という。
 彼は今回の遠征にあたり、事前に騎凛教官にも会い挨拶と提案を行っていた。
 ――「あなたは、源 鉄心さんですね。よろしくお願いします」
 年齢は、騎凛教官と同「……年齢は、言わなくていいです」
「え、教官? どうかされましたか」
「い、いえ。とにかく、そうですか。学生として……
 しかし、この経歴を見ると」
「……」
 やはり、管理側の人間には知れているか。鉄心としては過去を消したがっているのだが。
「何れにしても期待が持てますね。ピンチの時には私と、学生の皆さんを率先し導いてくださいね」
「ええ、では。提案の件もご検討をよろしく願います。
 そうすれば、師団の力も……」
「そうですね。おそらく、今回の戦いでは……――
 
「うむ。勝敗は兵家の常……とは言うがね」
 おそらく、この遠征でも戦いは避けられないものになってくるであろう。兵士である以上、戦争で全員帰還など望むべくもない、鉄心は思う……だが、一人でも二人でも多く帰す。生きて戻らせる、のだと。
 パートナーのティー・ティー(てぃー・てぃー)も、自らの意思で従軍している。
 どこか不眠そうな彼女、無言で行軍する心の内に抱いていることは、こうして国家のために尽くしていれば、いつかはこの苦しみも消えてくれるかもしれない……という淡い期待。彼女を常に脅かしているのは、正体不明の罪悪感と意識が闇に堕ちることへの強い恐怖心。
 そんな彼女だが、契約者である鉄心には全幅の信頼を置いている(鉄心にしても、怪我した野生動物を保護したような心境なのだけど)。鉄心と共に今回、戦いに身を投じることが、果たして彼女に何らかの変化をもたらすだろうか。