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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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◇出発の章◇

 
空路 1
飛空艇
 
 
 ヒラニプラを発った武装飛空艇。
 その内の最大の艦。教導団の旗艦である。
 新星の旗も立ち並んでいるように、ここには【ノイエ・シュテルン】の隊長クレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)少尉がいる。彼のもとからは教導団の正規部隊となった新星旗に集う優秀な部下等が、各所に送られすでに任務に着いているだろう。
「異常なしであります!」「うむ」ノイエの精兵たちが彼のところへ行き来している。今回の出兵で最大の兵力を持つ部隊がノイエ・シュテルンである。
 コンロンの目的地・クィクモの雲港までの空路における第四師団旗を司ることになるのは、クレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)中尉ということになる。
「最初に寄るのは、空京だな」
「はっ。クレア様」
 クレアの忠実な部下ハンス・ティーレマン(はんす・てぃーれまん)が言う。「空京では幾らかの荷と共に傭兵勢を乗せ、速やかに発ちましょう。日暮れ前には葦原島に到着いたします」
 本校任務である第一師団の士官らである。第四師団の南部平定戦でも本営をよく務めた。
 彼らのいるのが艦長室。空路における司令部だ。
 書類を抱えた一条 アリーセ(いちじょう・ありーせ)が、リリ マル(りり・まる)今泉 ロバート(いまいずみ・ろばーと)を引き連れ、入ってくる。空路の拡充に動くことになる一条も、司令部に配属された。今後、入りきらなくなるだろう資料やデータは、リリマルに蓄積されることになる。
 また、今回の第四師団の空戦兵力として初期配備にされている鴉兵団は、南部平定戦における一条(とロザリンド)の交友・交渉がもとになっているという背景があることを付け加えておく。
 各艦、異常なしの様子。
 旗艦の左斜め後ろを飛ぶ中型艦には獅子の旗がずらりと並ぶ。
 こちらは一隻ごと、空路で兵を運ぶ【鋼鉄の獅子】の艦とされ、月島 悠(つきしま・ゆう)少尉が目下、指揮を執る。
「我々、鋼鉄の獅子は新隊長ルースの方針で空路で向かうこととなった」
 同じく空路を行くレーゼマン、ルカルカは、ルースら警備隊の駐屯するタシガンへ、他の隊員も交えた教導団の外交使節として赴いている。
 
 各艦、兵数の説明を加えておくと、大型艦には、師団の兵200にクレアの直轄となった兵50、これに新星の部隊250。他、士官候補生らやそのパートナー、兵など含めおよそ500が乗船。
 中型艦の定員は250で、二隻の内、一方には先述の通り、鋼鉄の獅子部隊200に各員ら。もう一方は、師団の兵200を運んでいる。(これに、陸路を行く部隊もあるし、空路は以降も必要な兵が運ばれることになろう。)
 尚、後衛を担う二隻目の中型艦に黒豹旗が一つ立っているのは、戦車型機晶姫ルノー ビーワンビス(るのー・びーわんびす)が積み込まれているからだ。
「うっ。はじめまして兵士の皆さん、よろしくー……」
 う……NPC兵ばかりか……無表情のようだ。
 そこへ、大人びた軍服の女性がゆっくり、近付いてくる。
「あなたはなぜ空路を選んだんですか?」
 思い切って戦車娘に話しかけてみるのは、教導団員のクロス・クロノス(くろす・くろのす)
 引っ込み思案の彼女なので、ちょっと遠慮がちに。
 でも後衛の艦はNPC兵ばかりみたいなので、できれば打ち解けたいな……
「えわ、わっ、わたくしっ? なな、なんでせう?」
 戦車子も、かなり引っ込み思案のようだった。
「え、あの……なぜ、空路を選ばれたのかな、と思いまして。私は、護衛を志願したのですが」
「わたくしは、とりあえず……船首砲としてがんばってみる!」
「なるほど」
「はーいー。わたくしたち以外、女の子の兵士がいませんことですし、がんばりましょー」
「え、ええ……。
 ですね」
 クロスはけな気な戦車娘に微笑む。