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薄闇の温泉合宿(第1回/全3回)

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薄闇の温泉合宿(第1回/全3回)

リアクション


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 建物内、周辺、温泉そして、河原を見て回り、同行希望者と合流した後、ゼスタ達は森の中へと入っていく。
「それじゃ、伝説の果物を探す奴等はトワイライトベルトの中へ。その他、山菜や薬草を探す者達はこの近辺から探してくれ。迷子になるなよ」
 山菜採りを行う女性達にそう声をかけた後、ゼスタと果物探しに訪れた者はトワイライトベルトの方へと入っていく。
「皆さんこそどうかお気をつけて〜」
 メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)はそう声をかけた後、女性陣と共に、食料になりそうなキノコや山菜探し、木の実を探すことにする。
「山菜……この時期はあんまりあらしまへんな。キノコどすなぁ」
 肉や魚ばかりになってはいけない、皆に美味しい山菜の味を教えようと、意気込んで来た清良川 エリス(きよらかわ・えりす)は、着くなり地面に目を這わせる。
「あちらから美味しい気配を感じますわ。いきますわよ」
 ティア・イエーガー(てぃあ・いえーがー)が奥へとエリスを導く。
「気をつけてくださいねぇ〜」
「おおきに」
 メイベルに礼を言った後、エリスはティアに連れられて奥へ奥へと進んでいく。
 空飛ぶ箒を持っていたので、迷子になることはないだろうとメイベルは2人を止めはしなかった。
「リーアさんはいけませんでございますよ」
 エリスのもう1人のパートナー邪馬壹之 壹與比売(やまとの・ゐよひめ)(壱与)は引率者の立場にあるリーア・エルレンの腕をぐっと掴む。
「あちらの方からは良くない気配を感じます。深入りはダメでございます」
 壱与はリーアにべったりくっついていることが多かった。
「良くない気配がするのなら、2人で行かせたら尚更危険なんじゃ……」
「いいえ、良くない気配の元凶はティアでございますわ。巻き込まれなければ良いのです。それよりも」
 壱与はじっとリーアを見つめる。
「何か問題を抱えてはおりませんか? ここに訪れてから、どことなく上の空であることが多いです」
「いやべつに……興味深い場所だなと思ってるくらいよ?」
「わたくしがリーアさ……リーアの普段との違いに気付けない様な者とお思いでございますか?」
 真剣な目で、壱与はリーアを見つめ続ける。
「うーん……なんかね、大昔、シャンバラの騎士達に、大きなダメージを与えた人物――というか魔道書が復活しているって噂を聞いてね。もしかしたらこの辺りにいるかもしれないから、ちょっと警戒しているわけ。それだけよ」
「そうですか……。大丈夫でございます。因縁のある相手と遭遇したとしても、リーアのことはわたくし達がお守りするでございますよ」
「ありがとう。大丈夫よ。可能性は低いと思うし。もし、遭遇したとしても……敵対はしたくないわね」
 リーアは弱い笑みを浮かべる。
 壱与は首を縦に振った。
「その時には古き時代を生きた者同士、共に食卓を囲みましょうとでも持ちかけてみましょう」
「そうね」
 壱与とリーアは頷き合った後、メイベル達と一緒に木の実やキノコ、それから薬草をも探し始める。
「トワイライトベルト内は光が届きませんし〜、食事用の食材は、私達が見つけませんと〜」
 メイベルは歩き回りながら、食材となりそうな山の幸を探していく。
 盗賊のアジトが近くにある可能性があるという話も聞いているので、殺気看破で警戒もしておくが、変な気配は今のところなかった。
 野生動物にも、メイベル達は接触しないよう、今日は奥には入らない方針だった。
「あっ、キノコ、キノコいっぱいです……っ」
 シャーロット・スターリング(しゃーろっと・すたーりんぐ)が、木の根元に沢山のキノコを見つけて指差す。
「ホントだ〜!」
 セシリア・ライト(せしりあ・らいと)が、元気に飛びつくように近づいて、じろじろキノコを見定める。
「平茸、かな? 食べられるはず」
 セシリアは手にとって、皆にも見てもらう。
「大丈夫だと思いますぅ」
 図鑑を開いてメイベルは確認して頷く。
「とりあえず誰かに試食してもらって、大丈夫そうなら料理に使えばいいわ。毒の治療くらいなら、私に任せて!」
 リーアがちょっと怖い冗談を言う。
「致死量の毒が含まれていたらどうするんですか。ふふ……」
 フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)は微笑ながら、皆を見守り、ふと上を見上げる。
「……あのあたり、木の実、でしょうか」
「あ、ホントだ!」
 また真っ先にセシリアが近づき、全員が見上げる。
 大きな実が垂れ下がっているそれは――アケビだった。
「戴いていきましょう〜。食べごろの分だけ貰って、場所を覚えておいて残りはまた今度、ですぅ〜」
「うんうん。いただきっ!」
 メイベルが言い、セシリアが手を伸ばして、実を包み込んでもぎ取った。
「色々持ち帰って豪華な食事にしようね! 晩餐会に負けないくらい」
「初日からは無理ですから、少しずつ探索範囲を広げていきましょうね」
「うん……あっ、あんなところにも何か生ってる! 届かなーい!」
 フィリッパの忠告に頷きはしたが、セシリアは探索に夢中になっていき、高い場所に生っている木の実を落とそうと悪戦苦闘を始める。
「キノコ、違うキノコもありますー!」
 シャーロットはまた別のキノコを見つけて、目を輝かせていく。
「それでは、木の実はセシリアにお願いして〜、先にキノコを採りますぅ」
 メイベルは籠と図鑑を持ってシャーロットと並び、一緒に毒キノコではないことを確かめると、キノコを採って籠の中へと入れていく。
「はい、面白いですね。食べ物ってこんな風に生えているんですね……」
 封印されていた期間が長く、人間達と一緒に食料を探すことなどなかったシャーロットには、何もかもが新鮮で、とても楽しかった。
「木の実、沢山生っていますし、休憩も兼ねて、ここで味見をしてみるのも良いかもしれませんね」
 フィリッパは穏やかな目で皆を見守りながら、ティータイムの能力でお茶の準備をしていく。
「では、この辺りの果物と、キノコを採り終わったら休憩にしましょ〜」
 メイベルが言い、少女達は「はい」「うん」と明るく可愛らしい返事をしていくのだった。

「エリス、アレはああ見えて実はお互い四桁生きたお年寄りですのよ」
「長年生きているからこそ、分かり合えるんでっしゃろね。何時までも若々しゅうて羨ましいどす」
 壱与がリーアにべったりなところに嫉妬して、エリスにそんなことを言ってみたティアだが、エリスからは返ってきたのはつまらない言葉だった。
「ん……この山菜はあまり見たことあらへんどすなぁ、地球には無い物どっしゃろか」
 エリスは蕨のような細長い山菜に顔を近づけて眺めてみる。
 毒などはないと思うのだが、料理に使えるだろうか。
「……!?」
 そんなことを考えていたエリスの背に突然冷たいものが流れ込む。
「ひ、ひやっ」
 悲鳴を上げて、エリスは木にしがみつく。
「何や入った。動いてるっ。ティア、ティア、ティアー!」
 とってとってと叫ぶエリスを、楽しそうに微笑み、彼女がもだえる姿を十分に堪能した後、ティアはエリスの背の中に入れた蛇を引っ張り出して、足元に落とした。
「ひぃやあああああー!」
 叫び声を上げて逃げようとしたエリスは、ティアが仕掛けておいた草を結んだ罠に引っかかり、転倒。
「毒蛇じゃありませんわ。大丈夫です」
 倒れた彼女に抱きついて、身体を撫で回しながらティアはエリスを起こしていく。
「そういえば、盗賊のアジトがあるかもしれないという、噂がありますけれど……捕まったらどんな大変ないやらしい事をされるのかしらねぇ」
 そんなことを言いながら、エリスの身体にティアは手を這わせる。
「や、やめ、やめておくれやすー。ティアーっ!」
 真っ赤になって悲鳴を上げるエリスを、妖艶な笑みで見つめながらティアは存分に2人きりの探索を愉しんでいくのだった。

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「……天音、先ほどから楽しそうに何を見ているのだ」
 伝説のスイーツを求めて、トワイライトベルトの中へ入ったゼスタ――それから、彼を追いかけて現れたファビオ・ヴィベルディの後姿を黒崎 天音(くろさき・あまね)は、なにやら楽しげに観察していた。
 パートナーのブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)はそれが気になるのか、ずっとソワソワしている。
「ん? なんだい、ブルーズ……もしかしてヤキモチかな?」
 微笑みを見せる天音とは対照的にブルーズは軽く口を尖らせる。
「む。そ、そのようなものではないぞ」
 そして、腕を組んで語り出す。
「我はパートナーとしてお前の動向をきちんと把握しておく必要があるからだ。大体お前は放っておくと、ろくな事をしでかさないのだから……」
 長々と続きそうな彼の言葉を「はいはい」と、くすりと笑いながら天音はさえぎった。
「ブルーズが僕の事、すごく気にしてるのは分かったよ」
「だから、そういう意味ではなないと。いや、気にはしてるんだが、警戒心が足りないというかな……」
 ぶつぶつと続けられる言葉を聞き流しながら、天音は再び前を歩く同じ学校に通う男達の背を眺める。
 ファビオは一言二言、ゼスタと会話した後は、彼の後ろについて彼を見守りながら歩いている。
 天音は早歩きで彼の隣に近づくと、歩調を合わせて肩を並べる。
「伝説によると君は熱心な女王の信奉者だったようだけれど。それって恋慕のようなようなものだったのかい?」
 歩きながら、天音はファビオに問いかけてみる。
「彼女は美人だったしね。……もしかして恋人だった?」
 そう言葉を続けると、ファビオはクスッと笑みを漏らす。
「まさか。遠い存在だったよ」
「アムリアナ女王には別に良い人がいたとか?」
「さあ、プライベートに関しては、俺は何も知らない。特に親しかったわけじゃない……というか、恐れ多くて気軽に話しかけられる相手じゃなかったよ、俺にとっては」
 騎士といっても、十二星華ほど近くにいた存在ではなく、ファビオにとって女王陛下は遠い存在であり、女王の記憶にも、自分は残っていないだろうとのことだった。
「そういえば、君が鏖殺寺院と戦って討たれたという時の話も、詳しく聞きたいな。どんな敵と戦ったのかとかね」
 その問いに、ファビオの眉がピクリと動く。
「こんな場所で気軽に話せる内容じゃない。自分が死んだ時の話なんて」
「そう。それじゃ、合宿所に戻ってから改めて聞かせてもらうよ」
 遠慮のない数々の質問に、ファビオは苦笑する。
「まあ……話してもいいけど。1つ頼みがある」
「何?」
「ちょっと出かけてくるんで、その間彼を頼む」
 言って、ファビオは前を歩くゼスタを指差す。
「頼むって?」
「……護衛。俺は護衛として彼について回ってる。でも、監視でもある」
 小声でファビオはそう言った。
「そう」
 軽く目を光らせて天音は微笑む。
「何事もないとは思うけど、もしもの場合は頼んだよ」
 そう言うと、ファビオは光の翼を広げて空へと飛び立った。
「いいけど。もしもの場合、どうしてほしいのかな?」
 空へと消えていくファビオを見ながら天音は呟いた。