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イルミンスールの日常~新たな冒険の胎動~

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イルミンスールの日常~新たな冒険の胎動~
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●地球:『ホーリーアスティン騎士団』
 
 イギリスのとある一画に建つ、白塗りの塀で囲われた中、やはり白を基調にした、まるで教会のような佇まいを見せる建物。
 それこそが、現在EMU内で反シャンバラ勢力の筆頭として位置付けられ、ミスティルテイン騎士団と激しく覇を争う魔術結社、『ホーリーアスティン騎士団』の本部であった。
 黒塗りで揃えられたミスティルテイン騎士団と対照的なのは、何らかの皮肉にも映るその建物の前に、メニエス・レイン(めにえす・れいん)の姿があった――。
 
 
 アーデルハイトがEMUについての特別講義を行う、という知らせは、鏖殺寺院の手の者からメニエスにも知るところとなった。
(特別講義ねぇ……。聞けばミスティルティン騎士団もワルプルギス派も、今や権威など無きに等しいと聞いたわね。
 差し詰め、パラミタの学生を使って何か考えている、と言った所かしら)
 
 元イルミンスール生であること、そして、『十人評議会』の一席に名を連ねる者であること。それらがメニエスに、そのような判断をさせるに至った。
(今のうちにあたしも手を伸ばしておいた方が、後々よさそうね。
 EMUそのものを反シャンバラ派で塗り替えてしまえば、イルミンスールの学校そのものをパラミタから追い出すことも可能だわ)
 ふふ、と不敵な笑みを零したメニエスが、早速手を下す――。
 
 
 メニエスが召使いに案内され、扉の開かれた応接間に辿り着くと、そこには既にローブを深く被った人物が一人、窓から外を眺めていた。
「エーアステライト様、メニエス様をお連れしました」
 召使いの声に、エーアステライトと呼ばれた人物――覗く口元、胸部の線から、メニエスは女性と判断した――が振り返り、召使いを労う言葉をかけ、退出を促す。
 パタン、と閉まる扉の音を聞きながら、メニエスは自分に歩み寄ってくる女性を注視する。
(この者が、現在の欧州魔法議会の議長を務めているという話だけど……)
 事前に調べさせたところ、この『ホーリーアスティン騎士団』がEMUにおける反シャンバラ勢力の筆頭であり、そして目の前に立つ女性、エーアステライトが結社の代表兼、欧州魔法議会の議長を務める人物、というところまではアッサリと掴めた。
 しかし、それ以上のことは分からなかった。エーアステライトで検索をかけても、全くヒットしないことが伝えられた。おそらく偽名であろうと推測はつくが、何故そうするのかの理由は、メニエスをもってしても分からなかった。
「こうしてお会いすることが出来て光栄ですわ」
 まずは様子見、とばかりにメニエスが笑みを浮かべ、一礼する。
 と、そこでエーアステライトはスッ、と身体を折り、まるで目下の者が目上の者に対するような態度を取る。
 
「ようこそおいでくださいました、メニエス・レイン様。
 いえ……十人評議会第六席に名を連ねる御方様」
「……知られていたなんて、ここの諜報機関は随分と優秀なのね。
 いえ、だからこそミスティルテイン騎士団と渡り合えているのかしら?」
 
 名乗った覚えのない役職を口にされ、メニエスが動揺を受けつつ表面には出さずに言葉を降らせる。
「アーサー様がたいそう目にかけていらっしゃるようですから。私はただ、話をお聞きしたに過ぎません。
 ……と、失礼いたしました。メニエス様には、クロウリー卿、とお伝えするべきでした」
「な……!」
 
 十人評議会のみならず、『クロウリー卿』という単語をここで聞くことになるとは、という思いだろうか、メニエスも流石に驚かされた様子であった。
「クロウリー卿は、我らがホーリーアスティン騎士団の真の代表。私は仮の代表、言わば傀儡といったところです。
 クロウリー卿が特別に目をかけていらっしゃるメニエス様にお会いできたことを、私の方こそ光栄に思います」
 
 エーアステライトの言葉を真に受けるなら、このホーリーアスティン騎士団を束ねるのは、メニエスと同じ十人評議会の一員、『クロウリー卿』。
 つまり、この場においてメニエスは、『クロウリー卿』と同列、地位的には目の前の女性より上ということになる。だからこそ、エーアステライトは身を伏せたままでいるのだ。
 
「……事情は把握したわ。
 だけど、あたしはこちら側、EMUの事情に詳しくない。それはあなたの方が詳しいのではなくて?」
「誠に恐縮でございます。では、メニエス様にも現状をお知りいただき、是非我々の行動にご助力賜りたく思います。
 私の話にしばし、お付き合いいただけますでしょうか」
「ええ、お願いするわ」
 
 その言葉を待っていたように、扉が開かれ、召使いが数名、二人の前に会食の席を用意する。
「勝手ながら用意させていただきました。今日の巡り合いをより実りあるものとするために……」
 並々と注がれた葡萄酒を持ち上げ、エーアステライトが口元をフッ、と微笑む形に歪める。
「……あなたたちのおもてなし、お受けしますわ」
 心に複雑な思いを抱きつつ、メニエスもそれに応え、二つのグラスがチン、と音を立てる――。
 
 
 同時期、自らの目的を果たすために地球を訪れていたブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)は、マヌエル枢機卿と接触を図ろうとして「イエニチェリ? ……知らんな」と配下の者に一蹴され、フードを深く被った姿で街中を、全てを呪うかのごとく何かを呟きながら彷徨っていた――。

担当マスターより

▼担当マスター

猫宮烈

▼マスターコメント

猫宮・烈です。
参加していただき、どうもありがとうございました。

『日常系は長くなる』という格言があるようですが、その例に漏れず案の定、長くなりました(汗
書けるところまで書いたつもりなので、ご了承くださいませ(ぺこり

ここから舞台は地球、EMUへ……とシフトしていくかと思います。
……まあ、その前にイナテミスで一大防衛戦が展開されるようです。そこに繋がるような展開にもなっているはずなので、楽しみに?(戦いを前にして楽しみ、というのもおかしな話ですし)していてください。

・奈落人の書き方が、『憑依されているPC名(憑依している奈落人)』という書き方になっています。
 今回が初なのでこうしていますが、変更があれば変わるかも知れません、ご了承ください。

本文が長いので(あと、書くことが思いつかなかったとも言う)、この辺りで。
それでは、次の機会がありましたら、よろしくお願い致します。