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イコン博覧会(ゴチメイ隊が行く)

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イコン博覧会(ゴチメイ隊が行く)
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リアクション

 
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「えーっと、模擬戦運営の方から、なんだか通信が入ってるんだよね」
「試合直前にか? なんて言ってきてる?」
 機体の起動チェックを丁寧に行っていた無限大吾が、西表アリカに聞き返した。
「ほとんどの者が実弾を使ってるので注意するようにだってさ」
「ううっ、俺はちゃんと手加減して模擬弾を用意しといたっていうのに。まったく、戦いたがりばかりだな」
「どうする?」
 あーあっと思わず顔を手で被う無限大吾に、西表アリカが訊ねた。もちろん、通常装備は、何かあったときのためにちゃんと用意してある。
「換装は任せる。どうやら、相手は手抜きを許してはくれなさそうだからな」
 そう言うと、無限大吾はチェックを続けた。なにしろ、まだまだ調整途中の機体である。出撃の度に癖が変わってしまい、調整が大変なのだ。とはいえ、それでも二人が操縦できているということは、アペイリアーとの相性がとてもいいということに他ならない。
「エネルギーバイパス、右手はサブルートを使って安定化……OK! 駆動系、左腕トルク微調整……OK! FCS、スプレッドグレネード、オートモードに設定……OK! 機晶エネルギー、出力98%。システムオールグリーン! よし、アペイリアー発進だ! 無限の名が伊達じゃないってところ、見せてやろうじゃないか」
 運営にあてがわれたハンガーで、弾薬ユニットを入れ替えていたメンテナンスアームが役目を終えて折りたたまれていった。アペイリアーが右腕を動かして、実弾が給弾されたガトリングシールドに押しあてるようした。カンカンカンとジョイントフックが次々に下りる音が鳴り響き、武装がハードポイントに固定された。肩のスプレッドグレネードのカバーがゆっくりと閉まる。
 機体固定のバーとフックが、ゆっくりと外れた。横にあったシールドを左手でつかむと、アペイリアーはゆっくりと一歩を踏み出した。
 
    ★    ★    ★
 
「忍よ、機体の調子はどうじゃ?」
 ガイドレールに挟まれるようにして専用ハンガーに固定されたブレイブハートを前にして、織田信長が桜葉忍に訊ねた。
「ああ、完璧だ。どこも異常なし」
 ハンガーにとりつけられたメンテナンスモニタで各部の最終チェックを行いながら、桜葉忍が自信満々で答えた。
「うむ、そうか。さすがにイコンに何回も乗っているからな。お前も慣れてきたのじゃろう」
「そういうことだな。さて、じゃあ、行くとするか」
「うむ」
 準備が整ったことを確認すると、二人は寄り添うようにしてリストに乗った。
 ブレイブハートの機体をゆっくりとパーンしていくかのように、リフトがハッチの開かれた胸の部分まで上昇していく。
 やや段差のあるコックピットに入ると、織田信長が前方下にあるサブパイロットシートに、桜葉忍が後方上にあるメインパイロットシートに着いた。同時に、コックピットハッチが閉まり、さらに外部装甲が閉じる。コックピット内のインジケータが一瞬すべて煌びやかに点灯し、最終チェックが行われた。
「メインエンジン出力全開。フローター始動」
「カタパルトハンガー準備よし」
「発進!」
 桜葉忍がスロットルを開くと、ハンガー自体がミニカタパルトとなって、ブレイブハートを押し上げるようにリニアリフトで射出した。同時に、フライトユニットが推進の光をあげ、推力に押し広げられた大気が、環状の爆風となってハンガーの回りに広がっていった。
 そのまま一気にブレイブハートが上昇する。
「水平飛行に移る」
 推力ベクトルを上方から前方に変化させて、桜葉忍はバトルフィールドへとむかった。
 
    ★    ★    ★
 
『あらまあ、もうぎょうさんイコンが展開しておりますなあ』
 モニタに映る各イコンを示す色分けされた輝点を確認しながら、綾小路風花が御剣紫音に精神感応で呼びかけた。
 戦闘中は、一瞬にして意志が伝わる精神感応の方が圧倒的に有利だ。そのため、二人はイコン内では極力この方法で意思の疎通を図っている。
『今のところは、狙い放題というところだな。俺の出番だ
 高高度にゲイ・ボルグ・アサルトを空中待機させて、御剣紫音がつぶやいた。
『ほなら、戦闘記録、レコーディング開始しますえ』
 
    ★    ★    ★
 
「さあ、いよいよ戦闘開始です。各イコン、現在それぞれの戦略に従って有利な位置取りを行っています。さあ、いったい、どんな結末が待っているのでしょうか。それでは、イコンバトル、開始です!」
 シャレード・ムーンの言葉と共に、バトルフィールドにサイレンが鳴り響いた。同時に、各イコンに、戦闘開始のシグナルが送られる。
「さあ、今、一斉に各イコンが動き始めました!」
 まさに開始の号砲を放ったのはゲイ・ボルグ・アサルトのビームキャノンだった。上空から見て、動きの少ない是空を狙い撃ちにする。
「ビーム攻撃だと!? どこからだ」
 様子見を決め込んでいた朝霧垂が焦る。
「上からだよ!」
 ライゼ・エンブが射角から敵の位置を計算して叫んだ。さすがにこんなに離れていては、殺気看破もあまり役にはたたない。もともと人間サイズの感知範囲なので、人の十倍はあるイコンの戦闘範囲では隣接でもしない限りはあまり効果はないようだ。
 だが、上からの狙撃は、イコンの上面面積の少なさもあって、直撃でなければ仕留めることはできない。ゲイ・ボルグ・アサルトの初撃は、是空の背後にセットされた鬼刀を吹き飛ばすに留まっていた。半分溶解した鬼刀が、くの字に折れ曲がって大地に転がる。
 即座にゲイ・ボルグ・アサルトが二発目を準備するが、さすがに是空も回避行動を取り始める。
 だが、確実にゲイ・ボルグ・アサルトは是空を照準に捉えていた。
 まさにビームキャノンが発射されようとしたとき、下から急上昇してきたイクスシュラウドが、アサルトライフルでゲイ・ボルグ・アサルトを牽制した。体勢を崩したゲイ・ボルグ・アサルトが素早く回避運動に入る。そのすぐそばをイクスシュラウドが通りすぎていった。衝撃波で、装甲表面が震える。
『風花、相手機の情報を頼む』
『敵は高機動型のイーグリット、イクスシュラウドどすえ』
 御剣紫音の問いに、素早く綾小路風花が答えた。
 たちまち、屈指の機動力を誇る二機が、めまぐるしい高機動戦に入る。
『こう接近してしまえば、銃火器は使えないだろう!』
 スラスターを使ったトリッキーな動きで、イクスシュラウドがゲイ・ボルグ・アサルトを翻弄しながら追跡する。
『射角内に敵を捉えなければ……』
 逃げに入ったため、思うようにポジションを取れない御剣紫音が焦った。
 その一瞬をついて、クレイモアを構えたイクスシュラウドが突っ込んでくる。
 反転したゲイ・ボルグ・アサルトが0レンジ射撃で一気に敵を落とそうとする。
 だが、わずかにイクスシュラウドの方が早い。
 突き出されたクレイモアの切っ先が、ビームキャノンの銃口に突き刺さり、そのまま砲身を引き裂いていった。
 その勢いのまま、敵機体を貫こうと、イクスシュラウドがさらに加速をかけようとしたときだった。
 ゲイ・ボルグ・アサルトの肩に装備されたマジックキャノンがクイと角度を変え、イクスシュラウドを捉えた。
『固定武装だと。ブースターじゃなかったのか!』
 0距離で発射された光弾が、両肩のフライトユニットを装甲ごと吹っ飛ばす。爆風に、ゲイ・ボルグ・アサルトとイクスシュラウドが離れた。推進器を失ったイクスシュラウドがそのまま勢いを失って降下していく。
『まだだ!』
 落ちながら、イクスシュラウドがアサルトライフルを乱射した。そこへ、ゲイ・ボルグ・アサルトがパージした右のマジックカノンを投げつけた。銃撃を受けたマジックカノンが爆発する。その爆炎を突き抜けるようにして、ビームサーベルを構えたゲイ・ボルグ・アサルトが突っ込んできた。迎撃しようとしたイクスシュラウドだったが背後からガトリングの攻撃を受けて動きが止まる。
 カラカラと銃身を回転させながら、アペイリアーがタイミングを計って攻撃をやめた。
 背部や脚部のスラスターの誘爆を防ぐために装甲をパージしたイクスシュラウドがほぼ丸裸になる。そこを、すれ違いようにゲイ・ボルグ・アサルトがビームサーベルで右肩から腕を切り落とした。反動で、イクスシュラウドの機体がきりもみ回転する。
 まるで墜落するかのように二機が大地に辿り着いた。
 かろうじて、イクスシュラウドが、イーグリット自体のスラスターを使って激突だけは回避する。だが、集中砲火を浴びたイクスシュラウドは、各部から白煙を上げてそのまま停止した。敵が、高機動タイプのイーグリット二機だったのが災いした。
 みごと敵を仕留めたとはいえ、ゲイ・ボルグ・アサルトも半数の武器を失い、無傷というわけにはいかない。そこへ、運悪く、マジックカノンを構えたゴッドサンダーが接近してきた。完全に出遅れてしまったために、敵を射程内に捉える前に味方をやられてしまった形だ。
『敵の射撃を避け、懐に飛び込んで斬るぞ』
 御剣紫音が、回避パターンを綾小路風花に任せる。
ちぇすとー!
 鳴神裁の叫びと共に、ゴッドサンダーがマジックカノンを突き出した。未だ衰えない動きでゲイ・ボルグ・アサルトがその射線を紙一重で避け、砲身の横をすべるようにゴッドサンダーに肉薄しようとした。
『その動きは、お見通し……』
 だが、その瞬間、ゲイ・ボルグ・アサルトが思い切り横っ面を張り倒されてもんどり打って吹っ飛んだ。予期せぬ攻撃に避ける暇もなく、転倒の衝撃で各部のパーツがバラバラと吹っ飛んで関節部が完全にいかれて停止する。
「だから、マジックカノンは鈍器じゃないって言ってるんだもん!」
「勝てばいいのよ!」
 容赦なく突っ込むアリス・セカンドカラーに、鳴神裁は言い返した。