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リアクション
序曲 〜Overture〜
――うそ……でしょ?
少女は、ただ立ち尽くしていた。
『F.R.A.G』のメンバーの中で、自分だけは「契約者」ではない。だから、何も出来ない。
目の前で、自分の大切な人が次々と倒れていく、この状況でも。
――お前はそこに隠れてろ。絶対に出てくるなよ!
「兄さん」にそう言われ、ずっと隠れていた。
今、「敵」を前に立っているのは、わずか二組の契約者。「姉さん」達はもういない。
ふと、足下を見る。
――これは、姉さんの!
一丁の拳銃が落ちていた。それを拾い上げ、握り締める。
重い。これが「戦うこと」の重みなのか。
幸い、「敵」は自分の存在に気付いていない。
込み上げてくる腕の震えを何とか抑え、照準を合わせる。
そして――
* * *
――2014年。
バッと幼い少女は起き上がった。
「どうしたの、ヴェロニカ?」
そこには、ちゃんと見慣れた「おねえちゃん」の姿がある。
今までの出来事は全部夢だったのだ。
「……どこにもいかないで」
少女の声は震え、今にも泣き出しそうであった。
「……夢を、見たの。怖い、夢」
そんな彼女をそっと抱き寄せ、女性が頭を撫でてくる。
「大丈夫よ。私はここにいるから」
微笑を浮かべる。
夢の内容はおぼろげにしか覚えてはいない。だが、自分は大切な人が死んでいくのを茫然と見ていることしか出来なかった。それだけは、はっきりとしている。
わずか十歳。だが、それでも彼女は夢の出来事が現実にならないように、こう思わずにはいられなかった。
強くなりたい、と。
大切な人を守れるようになりたいと。
「……弱いことは、悪いことじゃないわよ」
心中を察したかのように、女性が言ってくる。
「背伸びすることも、気負う必要もない。そのままでいいのよ。弱さを自覚しているこそ、実は強い……って、あなたにはまだ難しいかもね」
無理に弱い自分を捨てようとしなくていい。弱さを否定し力を手に入れても、それはいい結果をもたらさず、自分に「跳ね返って」くる。
その意味を少女が知るのは、何年も後になってからのことだった――
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