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聖戦のオラトリオ ~転生~ 第1回

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聖戦のオラトリオ ~転生~ 第1回

リアクション


(・ベータ)
 
 
 【ベータ小隊】
 ベータ1:不知火綺雲 菜織(あやくも・なおり)有栖川 美幸(ありすがわ・みゆき)
 ベータ2:號弩璃暴流破御弾 知恵子(みたま・ちえこ)フォルテュナ・エクス(ふぉるてゅな・えくす)
 ベータ3:ダイネクサーエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)
 

* * *



『こちらベータ1。これより、敵を分断する。各位で撃破願う』
 【不知火】の中、綺雲 菜織は同じ小隊へと通信を行う。
 今回、彼女は他校のイコンと組んでいる。それもあって、即興で連携するのは難しい。
(状況に応じて、各自で判断……か)
 出撃前の五月田教官の言葉を思い出す。
 ならば、自分は敵を引き付け、他の機体が攻撃しやすい状況を作ろう。
(敵機の熱反応増大。十一時から二時の方角から来ます)
 有栖川 美幸から送られてくる情報を元に、先を読む。
 正面には十機以上のシュメッターリンクがいる。射線はバラバラであり、その中で【不知火】の進行ルートと一致しているのは三機だ。
(ならば……)
 まずはその三機を目標に設定する。
 肩部のブースターの出力を上げ、一気に敵陣へと飛び込んでいく。加速を緩めることなく突入し、敵機の眼前まで来たところで減速する。
 機関銃は間合いが近すぎると、取り回しが悪くなる。さらに怯んだこともあり、動きが鈍った。
 その隙を逃さず機体を捻るようにして、背後に回り込む。直後、ビームサーベルを抜き、右腕を斬り落とす。
 続けざまに、近くにいた機体の機関銃も同様に破壊する。
 だが数としては、依然敵の方が優位だ。
(菜織様、このまま誘導します)
 美幸の指示を受け、菜織は【不知火】の機体を急下降させる。高度を落としながら、渓谷へと入り込む。
『敵を誘い込みます。撃破願います!』
 味方の射線上に入れば、こちらのものだ。
 速度は敵よりも【不知火】の方が上だ。敵機の動きを確認しながら、アサルトライフルの引鉄を引く。

「敵さん、誘いに乗ってきたぜ。しかも、まだこっちには気付いてない」
「それじゃ、いっちょやるよ」
 【號弩璃暴流破】はスナイパーライフルで【不知火】が誘い込んできた寺院の機体へと照準を合わせる。
 元々シャンバラ大荒野で運用されていた機体ということもあり、こういう山に囲まれた場所での戦いはもってこいだ。
 迷彩塗装も施してあり、さらに地形を利用することで身を隠せている。
 そして何よりも大きいのは、敵が「地上からの攻撃を想定していない」ことにある。今も、敵は空中に展開されており、かつシャンバラ側もほとんどが飛行能力を持った機体ばかりだ。
 そこに、隙がある。
「無力化するなら、狙うのは駆動部かジェネレーターがある辺りだ。関節がやられれば引鉄は引けなくなるし、ジェネレーターを完全に壊されたらエネルギー供給がままならなくなる」
 鏖殺寺院イコンの解析資料集1に基づき、フォルテュナ・エクスが御弾 知恵子にアドバイスを送る。
 敵機の高度が下がってくる。狙いを定め、まずはシュメッターリンクから無力化していく。
 射線を合わせ、引鉄を引く。大体狙い通りの軌道で弾丸は機体へと進む。
 地に足がついているだけあって、空中に比べて射撃精度は安定する。
「一機、こっちに気付いたみたいだぜ」
 【不知火】に引き寄せられていた機体の一つが、【號弩璃暴流破】へ向けて下降してきた。
「むしろ近付いてくれた方が、あたいらにはありがたいね!」
 スナイパーライフルから離偉漸屠キャノン――『號弩魔紅南無』へと切り替え、砲撃を行う。
 それによって、シュメッターリンクの機関銃を破壊することに成功した。
 上空の方も、誘導した機体は大分減ってきている。
 【不知火】が指揮官機と交戦状態にあった。
 知恵子が照準を合わせて援護し、策敵警戒に当たっているフォルテュナが戦闘データを収集している。
 上空の【不知火】は指揮官機を誘導する――と見せかけ、機体を反転して加速した。戦い方を急に変えたことにより、敵機のパイロットは動揺したらしい。
 その隙に、蛇腹の剣で腕を斬り落とし、さらに背後のフローターを破壊する。
『後は任せる』
 フローターが破壊されても、しばらくは推進力が維持されるらしい。
 しかし、敵はまだ片腕を残していた。その腕で実体剣を引き抜き、砂埃を上げながら、【號弩璃暴流破】に突撃してくる。
 だが、敵はイコンでの白兵戦闘に慣れているようには見えなかった。
 【號弩璃暴流破】は蛇腹の剣を振るい、まずは相手の実体剣を弾き飛ばす。そのまま機体に剣を巻きつけ、一気に力を加えて地面に叩きつける。
 敵機は完全に沈黙した。
 パイロットは気を失ってはいたが、命に別状はなかった。イコンのコックピットは、直接破壊されない限りパイロットの身を守れるだけの強度を備えている。それは寺院の機体も同様であるらしかった。さすがに機体が爆発したりすれば、ひとたまりもないのではあるが。
 それにより、指揮官クラスの寺院兵を捕縛することに成功する。

「ある程度敵の戦力は分散したか。ならば……」
 敵の数が多い以上、機動力がある機体が囮、ないし陽動要員になるのは自然な流れだろう。
 【ダイネクサー】のエヴァルト・マルトリッツもその役を買って出る。敵の前に躍り出て、オープン回線で叫んだ。
『赫闘蒼騎ッ!ダイネクサーッ!! 鏖殺寺院を討たんが為、ここに推参ッ!!』
 モーションを事前に組んでおり、一見すると隙だらけに見える。が、そうではない。
 むしろそれこそが彼の狙いだ。機体のベースはイーグリットアサルトであるが、ビームサーベルを装備しているわけではない。ナックルを装備し、格闘戦向けに調整されている。
 センサーのロック距離がやや短く、代わりにロック後の追跡を強化し、ブースターは瞬発力・加速力を重視してある。
 とはいえ、敵は射撃型だ。接近するまではアサルトライフルで敵を牽制する。
(あまり連携が取れていない?)
 寺院の錬度は決して低くはなかったはずだ。だが、今目の前にいる敵はほとんど素人に毛が生えた程度に感じられる。
 おそらくは、天御柱学院の生徒ではない自分よりも操縦技量が低いのではないだろうか。
「あまり操縦に慣れてない感じだよね」
 レーダーの反応を見ながら、ロートラウト・エッカートが言う。
「あのクローン兵士がパイロットかもしれないなんて思ったけど、違うみたいだね」
「そうとも限らない。生身での戦闘力と、イコンの操縦技術は別物だからな」
 むしろ、イコンに乗っても生身で戦っても強いという人間の方が珍しい。むしろ、天御柱学院の生徒以外ではイコンに乗らない方が強いという者だって数える程度にはいるくらいだ。
「今は大したことはなさそうだが、まだ敵が隠し玉を持っている可能性はある。油断は出来ないな」
 幸い、イコン部隊の者達に油断はなさそうだ。
 これまで寺院を強敵と認識していたからこそ、かえって疑っているということなのだろう。
 ある程度引き付けたところで、他の小隊からの長距離射撃援護を受ける。敵が乱れたところで、こちらからトップスピードで接近。その勢いで頭を殴り、頭部カメラを破壊する。敵機はそのまま飛ばされ、後方にいたシュメッターリンクに激突した。
 機体数が多いと、このように敵の機体を利用することだって出来る。そして、二機が射線上に並んだところで、アサルトライフルの引鉄を引く。
 狙うは胴体。ジェネレーターを潰せば、敵はまともに動けなくなる。
 同じ要領で、敵の機体を無効化していく。