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続・冥界急行ナラカエクスプレス(第3回/全3回)

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続・冥界急行ナラカエクスプレス(第3回/全3回)
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第4章 魔将君臨【5】


 ナラカエクスプレスは火花を散らして急停車。
 進行方向の線路が奈落掌によって瞬時に蒸発、いやその先の森も灰燼に帰し、これ以上は進行不能となった。
『お急ぎのところまことに申し訳ありません。線路に異常が発生したため本車両は運転を停止しております』
 アナウンスを行うトリニティ。
 と、その横をすり抜けて、包帯ぐるぐるのヒーローガール飛鳥 桜(あすか・さくら)が走った。
 そのあとを、アルフ・グラディオス(あるふ・ぐらでぃおす)クルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)が追いかける。
「……待て……、その傷で戦闘は無茶だ……帰ったほうがいい……」
「ああ、クルードの言うとおりだぜ。おまえが出てったところで足手まといになるだけだって!」
 その言葉に足を止め、桜は振り返った。
「し、失礼じゃないか……!」
 むっとしてアルフに詰め寄る。
「僕は足手まといじゃない……! このまま帰るなんて、何も出来ていないのに帰るなんて、そんなのは嫌なんだ!」
「桜……」
「ただの意地だってのは分かってるよ……。でも……それでも、僕は、守るために戦いたい……!」
 アルフはグッと拳を握り、足下に視線を落とした。
 俺が反対したのは、おまえが傷つくのはもう見たくないからなのに……、何で分かってくれねーんだよ……。
「……お前の脳味噌はどこにあんだよ」
「え?」
頼むから!! あんなでけえ奴相手に一人で突っ込もうなんてすんな! 自分の状況よく考えろ!!
 それはアルフの本気の言葉だった。
「……ごめん」
 それに気付き桜はうつむく。
 心のどこかで、アルフなら分かってくれるだろうなんて、甘えてた……。それで本気で怒らせて、本気で心配させて、僕はなにやってるんだ。僕、いつも守られてばっかりだ……、こんなんじゃ本当のヒーローにはなれないよ……。
 自問する彼女に気付いたのか、はぁとため息しアルフは突然、桜の細い身体を抱きかかえた。
「ふえっ……!? な、何するんだい!? お、下ろしてくれよ!!」
「あ? こうでもしねーとお前突っ込むからだろ阿呆。黙って俺に抱えられてろ」
 桜は顔を赤らめドギマギ、アルフもまた内心ドギマギ。クルードは肩をすくめやれやれ……。
「……まったくおまえ達、ここが戦場だと忘れてるんじゃないか……?」
「わ、忘れてないよ!?」
「そ、そうだぜ! 俺達マジでやる気だって、ホント!」
「……アルフまで……、まぁいい、分かった……そのつもりなら俺にも止められん……」
 それからアルフを見る。
「……おまえもあまり抱え過ぎるな……、もっと仲間を……俺を頼れ……それとも俺は、頼りないのか?」
「いや……おまえさんほど頼りになるヤツはいないさ。悪かった、早速でなんだがひと暴れ手伝ってもらえるか?」
「……当然、もとよりそのつもりだ……」
 アルフは桜を抱えたまま小型飛空艇オイレで発進。クルードはワイルドペガサス『ティア』で戦いに赴く。
 その行動を察知し、ガルーダは掌に集中した炎を拡散させ、無数の炎弾を雨のように降らせた。
「……ここは俺が行く……あとはおまえ達に任せるぞ……」
 突出するのはクルード。『月閃華』と『陽閃華』を二刀に構え、炎弾を八つに裂いて二人を守る。
「クルード、ありがとう……」
 桜は呟くと、ガルーダに光条兵器『輝銃黒十字』を向け、全能弾を発射した。
 ほとばしる光の中創造されたのは『戦闘機Fー22』、USAFだった亡き桜の父が生前に乗っていた戦闘機だ。
「僕は……この戦闘機で勝負する!」
 オートパイロットで動くFー22は高速飛行でミサイルを発射、続いて機銃掃射でガルーダに攻撃を仕掛ける。
 その速度はあまり速く、ガルーダと言えど捕らえるのは難しい。
「攻撃の好機はまさに今、ですね……」
 距離を保って飛空艇を飛ばしながら、御凪 真人(みなぎ・まこと)はポツリ言った。
 しかしマハースリスティに無駄弾はない。ことは慎重に運ばねばと真人は緊張し、飛空艇の進路をガルーダに向ける。
「……真人、失敗のことなんて考えてちゃダメよ」
「セルファ?」
 後部に乗る相棒のセルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)が言った。
 飛来する炎弾を盾で防ぎ、あるいは剣で弾き落とし、飛空艇を直撃からガードしている。
「今は勝つことだけ集中しなさいよ。何かを創造するならその意思の強さが一番重要なんじゃないの?」
「……ええ、その通りです」
 彼女に励まされ、真人は強く弾丸に念を送る。
 ガルーダを捕らえる、そのイメージは……前回、自分の前に立ちはだかったナラカの世界樹『アガスティア』!
 投げられた弾丸は地上に触れると同時に閃光を放ち、アガスティアに酷似した巨大植物を発生させた。
 人智を超えた速度で根を下ろし、枝葉を広げ、ガルーダの身体を取り込むようにまとわりつく。
「これで多少時間が稼げれば……」
「真人!」
 セルファの声に真人ははっとする。
 急成長を遂げた植物はその瞬間、噴き上がる紫炎に飲み込まれてしまった。
「このオレ相手にこんなもの、何の意味があると言うんだ……?」
 炎の使い手たるガルーダに対し、植物は圧倒的に相性が悪い。ただでさえ彼の火力は普段より上昇しているのだ。
「し、しまった……」