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第四師団 コンロン出兵篇(最終回)

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第四師団 コンロン出兵篇(最終回)

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 亡霊軍の攻撃に数を減らされつつも、タズグラフの指示に従い馬車を追った龍騎士団増援。少々高度を上げコンロンの空を飛ぶ。
「ちぃ、あのような亡霊どもに打撃を食らうとは。被害状況は?」
「はっ。三十騎程、脱落しました。二十騎程も、負傷しております」
「うぬうう……! むっ?」
「隊長。何か、来ますぞ」
「ぬう? ワイバーンか。
 おい、それに乗っておる者……!」龍騎士は呼び止めるが、
「どけっ、おまえら! 龍騎士?!」
 ワイバーンに乗っているのはメイド姿の女性。勿論、朝霧 垂である。周囲を、パートナーのライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)朝霧 栞(あさぎり・しおり)夜霧 朔(よぎり・さく)が飛行し追従している。「龍騎士だって?」「にゃはは〜こんなところで!」「ここで一戦ですか」
 朝霧はしかし、
「いい! 相手にするなっ。セイカのところへ一刻も早く!」
 フランベルジュを振って群がる相手を牽制する。パートナーたちもそれぞれのスキルで軽く振り払った。
「うわっ」「つ、強い!」「コンロンの悪魔か? こやつら……」
 龍騎士の方にしても、
「ええい、いい、追うな! 追うな! 我らの目標は帝。タズグラフ様の命を忘れるな。これ以上、兵を減らすな!」
 隊長は部下らに命じ、道をあけさせる。
「何。帝?」「垂っ、あっちが開いたよ!」「よし。切り抜けるぜ!」ワイバーンが加速し一気に駆け抜けてく。「うわーーー」……ワイバーンの尻尾にも何かが掴まっている。
「ぬうう……あれは雲海から流れてきた魔物だ。被害はないな? 行くぞ、続けぃ!」
 龍騎士団も、再び先へ。互いに、逆の方角へと飛び去ってくのであった。
「垂。無事?」「ああ。帝……気になるが、セイカのいる方角は、あっちだ」朝霧はハートの機晶石ペンダントを、握りしめる。
「朝霧。セイカのことを……」尻尾にぶら下がりながら、久多は真剣に思う。「セイカのことを本当に思っているのは。それに本当にセイカにとって必要なのは。……俺は。……セイカ! ……」
 


 
「俺より強い奴がいる。他に戦う理由なんていらない……!」
 風次郎は神龍騎士タズグラフへと一直線に向かっていく。タズグラフが剣を振り上げる一瞬を突いて、神速を発動。一気に距離を詰めた。
「むっ、速い! しかしスピードだけでは……」タズグラフは剣を振り下ろす挙動からまずは相手の一撃目を受け流すべく姿勢を取りにかかる。
 だがここで風次郎は思わぬ行動に出た。そのまま斬りかからずにドラゴンアーツの腕力で刀を投げつけたのでる。
「何!」
 タズグラフがこれを剣で弾く間に更に風次郎は間合いを詰めて駆け込んだ。手には光条兵器が握られる。ソニックブレードを込めた一刀両断。タズグラフの懐に斬り込んだ。一閃が走る。風次郎は、神龍騎士に確かな一撃を食らわせた。
「おお!」周囲に声が上げるが……
「くっ……だがこの程度」
 神龍騎士は、一撃くらいでは倒れない。風次郎も、わかっている。動ぜず、再び構え直す。
「風次郎さんっ」騎凛も、ここで手出しはしない。生徒だから、決して討たせたくはないが、風次郎は既に武人であろう。
「ふっ。私も、神である前に騎士であるつもりだ。貴様、名は……」
「前田 風次郎」
「ふふぅ。覚えておいてやろうか」
 周囲も、この神との一騎打ちに黙としている。「これで時間は稼げているか。前田風次郎か、さすがだ。しかし……」甲賀は呟く。「もうあの手は使えぬ。逃げることも叶わぬ。我らも覚悟を決め、風次郎殿に続く他なし」
 次の一手がもうない。関係ない。最後まで打ち合うのみ。
 風次郎は再び渾身の力で刀を振るう。
 タズグラフの剣筋の方が、断然に速い。風次郎の太刀を押しのけ眼前に迫る。終わりだ。
「でも、それでもやっぱり私の生徒だから……っ!」騎凛の振るうナギナタがそれを防ぎ斬撃の軌道を僅かに逸らせた。
「騎凛教官……!」
「風次郎さん、お願いですのでもう、下がってください……」
 尚も構える風次郎に、騎凛が並ぶ。
「私はどちらでもいいぞ。まあ、私が討ちたいのは、貴様だが」タズグラフの剣先は騎凛を指す。帝国側にとっては敵将である。
「ああ。腕がしびれている……」
「先生っ。やっぱりダメだよぅ!」ミレイユが飛び出す。
「うむ。軍師としても、やはりこのような一騎打ちは認められぬな」甲賀もタクトを抜き放ちながら出てくる。「あなたは教官である前にここでは指揮官です。ここは戦場。それをお忘れになってはなりませんよ。お下がりください」
 タズグラフは逃すまじと攻撃の姿勢に入った。
 千代が騎凛をかばう。
「仕方ねぇなあ。約束だ」国頭も銃を取った。
 タズグラフの太刀が襲う。
「セイカ!」
「新手か。また……」タズグラフは一歩退き、頭上からチャージブレイクで突っ込んでくるメイド姿の攻撃を交わし、そのまま神速の立ち回りで攻め立てる彼女を数度に渡り、受け流した。
「垂……」
「間に合ったか。セイカ」朝霧 垂(あさぎり・しづり)の到着である。
 朝霧はそのままタズグラフと打ち合う。その周囲を栞が転経杖を回して舞い、ライゼは彗星のアンクレットでスピードアップを図った。夜霧はワイヤークローを回し隙を窺う。ライゼも空に舞い「我は射す光の閃刃」にて無数の光の羽根状の刃で相手を牽制する。垂・栞・ライゼらと神龍騎士との打ち合いが暫し続く。
「ほらっ今だセイカを頼む!」
「よし!」
「きゃっ」
 久多が騎凛を抱きかかえ、その場から退いた。
 打ち合いの方は……「だめだ。速すぎて」ライゼはポイズンアローを取り出すが、狙い定めきれない。夜霧はこの相手に対しあえて一点を狙わず、肘、膝、手首などの防御の薄くなるところに攻撃を加える。朝霧は、隙を窺う。タズグラフは……「ふむ。スピードではさきのマエダよりまだ上だが……」打撃は与えられていない。ふと、栞の方の動きが一瞬鈍った。「はぁ、はぁ、垂〜勝てないよ……」
「お前から死ぬがいい!」タズグラフの剣が栞を切りつける。
「にゃはは〜……死ぬほど痛ぇ」栞はさきの段階で、すでにリジェネーションと痛みを知らぬ我が躯のスキルを準備していたのだ。
「我が剣をわざと受けただと?!」
 朝霧は隙を逃さなかった。チャージブレイクで渾身の力を込めた閻魔の掌を、必殺術で見破った一点に叩き込む。
「ぐっ……!」
 これで二撃目。タズグラフはよろめいたが、まだ倒れない。
 渾身の一撃だった、朝霧は一瞬気が遠のきそうになるが、騎凛のことを浮かべる。「なら、もう一撃食らわせるまでだ!」すぐに、パートナーらと神龍騎士に再び向かう。栞も痛みを抑え、そこに加わる。「垂……後でプリンおごってくれないと割りに合わないからなぁ!!」
 久多は、チェインスマイトの構えを取ってはいたが、この激しい打ち合いをひとまずは見守るばかりであった。無論、もし朝霧が抜かれたら、隣にいるセイカを何としても……セイカ。セイカ……
「えっ」
「なぁ、セイカ。いちばん隣にいて欲しいヤツは誰だ」
「えっ。久多さん? こんなときに……」
 久多の目には、何らかの決意が感じられた。
「性別なんて関係ないさ。一番隣にいて欲しいヤツなんだろ」
「えっ。ええ……?」
 朝霧さん……垂……戦っている垂。ああ。だけど……やはり、神には勝てないのか……! あんなに、傷ついて。だめだ。私が……
「セイカは、待ってろ。朝霧も、討たせはしないさ。セイカには、朝霧が……」
「久多さん?」
「ここは俺が、死んででも……って何?!」
 そこへ国頭が割り込み、
「くっ。ここは、もうこれしかねぇだろ! おらぁぁぁぁ
 騎凛先生は今、パンツを穿いていねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
「エ 本当 」
「久多さん何を想像してっ あっ あああーー」
 国頭は全SPをかけたサイコキネシスで騎凛のドレスを捲り上げた。凄まじい突風が巻き起こる。
「神よ。これを見ろ!!」
「な、何。馬鹿な。それは禁じられている筈……」
 まばゆい光が覆う。
「国頭。許されないけど、今は許す……!」
 再び、朝霧はチャージブレイクに最大の力を込める。
「今しかないぞ!」甲賀も両の手に炎を舞わせる。
 風次郎も、刀を握り締めた。