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第四師団 コンロン出兵篇(最終回)

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第四師団 コンロン出兵篇(最終回)

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 コンロンにおける戦乱も、終局に近づいている。
 帝国は、コンロンに臨む軍事基地より龍騎士団の精鋭を繰り出し、教導団の駆逐と武力制圧へと乗り出してきた。当初コンロンを容易く押さえられると踏んでいた帝国側は、教導団に予想外の遅れを取った。帝国側にとっても最後の賭け。いよいよ、最後の戦いへ……
 
 
 


 
  
 教導団側もまた、各地へと兵を派遣している。
 教導団のコンロン出兵における本営となっているクィクモ。今までに四度に分けて本拠地(本校)ヒラニプラより兵が送られ、すでに兵力や兵器は出揃った。そして、最大の戦力になるであろう、イコンもまた。
 クィクモ本営のクレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)司令官。
「ヒクーロについては、現地にいる部隊(鋼鉄の獅子、ノイエ・シュテルン)と、増援に関しては【鋼鉄の獅子】ルース中尉に一任してある。獅子の一個中隊と共に、イコン整備士の朝野未沙が自らイコンに搭乗し支援に向かってくれるとのことだ」
 同じく本営の戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)参謀長は、
「ミロクシャ方面についてですが、こちらは【ノイエ・シュテルン】がクレセントベースからの本隊とクィクモからはゴットリープ隊が出ての挟撃作戦を行います。これにより首都を占拠する夜盗を殲滅する意向です。本隊側がイコン一機を出撃させる。パイロットがまだ不慣れかも知れない点はありますが操作を誤らねば……。おそらく、勝算は十分でしょう」
 いよいよイコンが戦闘に投入される。
「問題はおそらく、イコン同等かいやそれ以上の能力を持つであろう神龍騎士の存在……」
 更に一機、クィクモからこちらはミロクシャ方面より少し外れたボーローキョーへとイコンを飛ばせている者がいる。
 クィクモでのイコン整備に携わった叶 白竜(よう・ぱいろん)である。
 行方不明の騎凛師団長の所在が掴めたという情報。それに、旧軍閥の匿っていたコンロン帝が見つかったとの情報。その先がボーローキョーである。そして、そこには敵側の神龍騎士の一体も……
 イコンを向かわせる必要があろうとなったとき、白竜は整備作業の傍ら、コンロンの地図を開き、また、得られるだけの情報をかき集めた。「歩兵戦に適した土地形状、イコンを活用できる場所、それぞれあるはず……」土地勘はできるだけあった方がいい。それに、その後の土地開発でも必要な知識にもなるだろう、と白竜は考えていた。戦いの為だけの兵器としてイコンを使いたくはなかったが……白竜はその後も見据え、しかし今は敵を退けねばとイコンを飛ばす。最大の敵である。
「知己知彼、百戦不殆、己と相手を良く識れば必ず勝機はあるはずだ」――
 
 
 クィクモの守備に残ったのは……
 松平 岩造(まつだいら・がんぞう)率いる【龍雷連隊】。
「レイヴ!」
「はっ、はいっ!」
「貴官にクィクモ守備の為、龍雷連隊の指揮権を預けるぞ」
 レイヴ・リンクス(れいう゛・りんくす)は全兵550の指揮を隊長より任された。
 また、松平は部下の武者鎧 『鉄の龍神』(むしゃよろい・くろがねのりゅうじん)に偵察隊の編成を命じクィクモを起点に半円状に展開させた。
「展開角は、内海沿岸から90度の間隔で五班。各班は基点より18度間隔で展開しつつ偵察にあたれい。よいか。
 帝国軍の姿を確認次第、無線機と信号銃を使って味方に知らせよ?」
「はっ! よし、龍雷の兵達よ。共に奴等を叩きにのめすぞ?!」
「待て、武者鎧。己だけで帝国軍と交戦しようとすることは固く禁ず。
 仮に戦闘に巻き込まれても生き延び、我々本営に情報を伝達することを最優先とせよ!」
「は、ははぁっ!」
 松平自身は、
「私は」ニヤリ。「……龍皇一式! ふふん。準備は万全だ」
 整備の完了し準備万端のイコン『龍皇一式』に搭乗することとなる。
「岩造! 行くわよ」嫁のフェイト・シュタール(ふぇいと・しゅたーる)が松平にビシッと気合を入れる。
 彼らの他、重兵器担当を校長から命じられ最後にクィクモ入りした犬神 狛(いぬがみ・こま)が司令部に呼ばれている。彼は司令部に、クィクモの市外に陣地構築を申し出てこれを許可されていた。もともとは示威のため、市街地に戦車を配置する上申を行っていたが、こちらは却下された。クレア大尉曰く「過度の示威行為によって怯えるのはテロリストよりもクィクモ市民であるし、示威行為を逆手に取られれば、簡単にテロが市民暴動にすり替えられてしまう可能性は高い」との理由のためである。
 そう、現在、本営のあるクィクモは全面的にテロを警戒中である。龍雷連隊のレイヴより、クィクモ地下街で行われていたテロ密談の報告がもたらされているからだ。市内テロ対策課は、本営に新たに送られてきた新人候補生らを中心に運営されているがそれは後に見ることになる。クレア自身も保険として部下のエイミー・サンダース(えいみー・さんだーす)はじめ本営から女性兵を中心に選抜、100程を私服で市街に回し、かつクィクモの治安維持組織の協力をあおぎ、市民・世論を誘導しようとする流れを調べさせている。
 クレアのもと、テロ対策課を管理するパティ・パナシェ(ぱてぃ・ぱなしぇ)は言う。
「ということでぇ、教導団の示威行動を逆に利用しようという動きに要注意ですねぇ」
 戦部の方は、グスタフ・アドルフ(ぐすたふ・あどるふ)を付け兵を犬神に貸し与えた。犬神は市街地の一角に自警団本部を設け、市内の不穏分子摘発と市外の陣地構築を統括する。兵数500に及ぶ大規模な任務の統括であり責任も重大である。グスタフは兵を率い注意深く市街を回り、犬神自身は主に陣地構築の指示を出すのに暫くは忙しくなった。
 このように、クィクモの警戒態勢は相当強化されていた。
 クィクモはコンロンでも最南西に位置し、帝国側からの直接の被害を被る可能性は他の地域よりは低かった。なので帝国の攻撃よりもテロを恐れていたのだが、ここへ来て厄介な情報がもたらされたのである。
「クィクモへ向かってくる龍騎士団の一隊が確認されております。○○キロの地点まで…… 」
 偵察に出させていた武者鎧から早速伝令が来た。今、龍騎士団がここクィクモ本営にまで間近に迫ってきている。
「こんなところまで部隊を遣ってくるとは……!」
「これと併せて街でテロが起きたら……。教導団の信用にも関わることじゃ」
「何としても死守せねば。クィクモの守備は、我々にお任せあれ!」
 クィクモ本営も今回が正念場である。
 レイヴは龍雷連隊の地上部隊を指揮、犬神の構築した陣地と協力してクィクモの防戦にあたる。
「ようし。今こそ龍皇一式の力を見せてやる。フェイト!」
「岩造! いいわよ!」
 松平岩造は、龍皇一式でコンロンの空へと舞い上がるのか。