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第四師団 コンロン出兵篇(最終回)

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第四師団 コンロン出兵篇(最終回)

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死闘の行く先/ボーローキョー〜ミロクシャ
 
「ええい、どけっ!!」
「させるか。てえいっ!」
 コンロンの帝に迫る神龍騎士タズグラフに、騎凛 セイカ(きりん・せいか)のナギナタが襲いかかる。ここはボーローキョー。コンロンの帝を、今にも襲い来る神龍騎士の手から守らねば。今後のコンロン統治において、必ず重要になってくるであろう人物……だが、エリュシオン帝国にとっては邪魔者でしかない。
「何。この太刀筋は……っ!」
 タズグラフは予期せず眼前に迫った得物をかろうじて交わし、自らも構え直し騎凛と向き合った。
 騎凛も、着地し構え直す。
「むう。できる……!
 女。その構え、何流薙刀術」
「天然です」
 ……
「よくわからないが、これで暫く時間が稼げるか」国頭 武尊(くにがみ・たける)は銃を構える。「よし、オレは騎凛先生を援護する」
 猫井 又吉(ねこい・またきち)もそれに続き、交戦中の騎凛らの脇へ回った。「何が『敵将を討ち取れぃ!』だよ。騎凛先生はホント余計なことしか言わねーな。俺たちは帝国と殴り合うためにここに来たんじゃねーんだ。だが、今は先生の護衛が仕事だから、仕方ねぇ、やるか」
 シーリル・ハーマン(しーりる・はーまん)は、国頭と又吉を見守りつつを魔力を高める。「武尊さん……! 相手は神龍騎士です。どうか……」
 ミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)は、シェイド・クレイン(しぇいど・くれいん)ルイーゼ・ホッパー(るいーぜ・ほっぱー)らに帝の方を任せた。
「騎凛先生の方は、ミレイユ。お願いね。あの先生、突っ走りそうだから……ってもう突っ走ってるけど」ルイーゼは言う。
「無事に終わったらブーケちょうだいね〜♪」
「えっ?」いつの間にか、ウェディングドレスで打ち合っている騎凛先生。
 帝の馬車に続く、ルイーゼ。さて……と……。嫌な予感するし、ピンポイントで帝を守るか。
「……」シェイドも、その反対にしっかりと付ける。ルイーゼも何か気付いたようですね……と。周囲には、龍雷連隊も帝を守る兵力として付き従ってきている。帝の馬車には、ナナ・マキャフリー(なな・まきゃふりー)が同乗した。
 馬車は、神龍騎士に対峙して残った者たちの視界から見えなくなろうとしている。だが、飛龍に跨るタズグラフは皆よりまだ暫くその姿を捉えているだろう。
 まずは、その飛龍を何とかせねば……
「えっ」
 そのとき。騎凛のナギナタが、弾かれ宙に舞う。
「なっ、何〜〜!」
 まさに今から援護せんと騎凛の後方に付いた国頭は目を丸くする。「先生、レベル140とか150じゃねぇのかよ!」
「違います! 私だって、わりと普通の女の子だったりもするんです!」
「そんなこと今、宣言されてもなあ……」
「フン、たわいもない。その程度であったか。もらった!」
 神龍騎士は長剣を振り上げた。 
 


 
「ボーローキョー? やっとセイカの居場所が……!」言うより早く、朝霧 垂(あさぎり・しづり)はワイバーンにまたがっていた。
 ボーローキョーからは対岸にあるミロクシャから廃都群にかけて。廃都群の西に、教導団の部隊。東に陣取る夜盗勢との間に、いつ交戦が再開されてもおかしくはないムードが漂う。
 この状況は、本営にも既に伝わっている。【ノイエ・シュテルン】はこれを聞き、コンロンの中心となるミロクシャから夜盗を駆逐することの必要性とも併せ、兵力二千はあるこれら夜盗勢に対しミカヅキジマより千二百、クィクモより五百を持ってこれを挟撃し叩くこととした。しかしクィクモからの五百が到着する前に再び交戦になれば、教導団の部隊は持ち堪えることができるのか。対峙する教導団は、相手が立て直しを行う間に、旧軍閥の救出と全隊の収拾や回復をひと通り終えていた。依然、敵勢に対し数は少ないが……クィクモからの更なる援軍もやがて到着する。
 一方、行方不明の騎凛師団長が一部の兵と合流しボーローキョーにいるが、苦境にあるとの報を聞いたところだ。
「セイカ! 俺は……」
 久多 隆光(くた・たかみつ)は一瞬、何か迷う素振りを見せるも、
「久多? どうすんだ」ワイバーンの上から、朝霧が問う。
「……勿論だ。決まっている!」
 朝霧のワイバーンのしっぽに掴まった。
 源 鉄心(みなもと・てっしん)は、騎狼部隊の内から50を率い飛び立っていくワイバーンに続く。
「トマス君、あとは林田少尉と共に、廃都群で……大丈夫か?」
「は、はい!」
「まだ、回収した旧軍閥には負傷者も多く、実質、戦えるのは騎狼部隊のみ。(それに、パラ実勢もいるが……彼らは共に戦ってくれるのか。)」
「はい!」
 トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)がこの間、対夜盗勢の指揮を預かる。旧軍閥の兵を中心に負傷したメンバーは悟られないよう、軍の後方に回した。林田少尉は旧軍閥上部との対応にあたっている。トマスには、ミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)や名軍師・魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)が付いてはいるが。
「怪我人、それから壊れた銃器や武器も、私に任せなさい」「最後の決定をするのは、自分の責任ですよ。トマス」
「はい!」
 それから魯粛はボーローキョーへと発つ鉄心と言葉を交わし、
「コンロン軍閥は、各自の正当性の裏付けに「帝」は必要な筈。野心は多かれ少なかれ、行動させるには帝を保護し、帝を教導団が手が引いた後も安全な場所を確保すべく、有力な軍閥の保護下にまるごと収まるのが好いのでは。
 ボーローキョーの亡霊軍閥には「野心」はないのと、既に自分たちの平穏を乱す帝国に相対する姿勢を見せているようなので、他の敵対的ではない軍閥に「身投げ」して巻き込むことを」との進言を行った。
「では! 互いに、武運を」
「ええ。鉄心殿」
 騎狼部隊から一隊が離れるのを悟られぬよう、魯粛は虚実交えて軍を展開した。だがこの段階では敵勢には動く気配はまだ、見られなかった。
 陣の後方……
 負傷した琳 鳳明(りん・ほうめい)は、
「攻めてくる夜盗勢が1500。対してこちらは鉄心さんたちの騎狼部隊350に残党兵さんたちが200。鉄心さんは騎凛先生の救助に向かうし……残党兵さんたちはほとんどが負傷してまともに戦える状態じゃない……。そして私も……。
 それでも、戦わなくちゃ。生き残る目があるのなら、最後まであがかないと!」
 琳は立ち上がった。動けるまでには、回復している。
「さいわいにも、こちらに援軍が向かっているって情報もあることだし、決して無茶な戦いじゃない。この戦いを切り抜けて、一人でも多く……いや全員で生きて戻ろう! 旧軍閥の人たちは、以前の自分たちが愛したコンロンを取り戻すために。私たちはまたシャンバラに戻って大切な人たちに再会するために!」
 琳の言葉に、少しでも戦えそうな者たちは、武器を手に立ち上がった。 
「援軍到着まで私たちが耐えることが出来るか……それとも私たちが耐え切れずに力尽きるか。勝負だよっ!」
 ――ミロクシャ。
「フフゥ。いよいよ決戦だ」
 夜盗の頭目は、自信満々である。
 その部屋に、客人として招かれていた道明寺 玲(どうみょうじ・れい)。調査員としてここにまで入り込んできていたのだが。
 今、この夜盗勢の本拠からは続々、兵が繰り出されている。
「……」
 その様子を眼下に見下ろしている道明寺。これだけの兵を。だが今この本拠を叩けば、手薄だ。しかし、それがしども二人では……。
「帝国は俺たちを見放してはいないのだ。じきに、龍騎士団の増援が到着するそうだ。クフフゥ。コンロンに君臨するのはこの俺様なのだ」
「……! 何と。龍騎士がまだ……」打つ手はないのか。道明寺はもどかしい思いを抑える。隣のイルマ・スターリング(いるま・すたーりんぐ)の前に積まれていた饅頭もほぼなくなろうとしている。
 
 
 廃都群に集まりだした夜盗の中に潜入しているのは、【ノイエ・シュテルン】のジェイコブ・バウアー(じぇいこぶ・ばうあー)
「くっ。まだ、増えるのか!
 何とか、踏み留めてくれよ教導団の仲間たち。せめてクィクモからゴットリープが到達すれば……。挟撃の準備が整わない内は、動けん。香取、早くしてくれ」