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ハロー、シボラ!(第2回/全3回)

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ハロー、シボラ!(第2回/全3回)

リアクション


chapter.14 新事実 


 とうとう遺跡へと到着したメジャーたち。
 その乳白色の建造物へ、彼らが近づこうとした時だった。
「……!!」
 何やら、遺跡の入口付近で、騒がしい声が聞こえた。雰囲気から察するに、何者かが口論しているらしい。
「ん? なんだろう?」
 メジャーが木陰からそれをそっと覗き込む。そこで彼が見たのは、総勢50名ほどの男女が、何かを言い争っている光景だった。片方は黒い肌をしており、もう片方は白い肌をしている。何より特徴的なのは、黒い肌の方は衣服を着ていないが、白い肌の方はこれでもかと言わんばかりに、服で肉体をアピールしている点だった。そしてメジャーは、その黒い肌の方に見覚えがあった。
「あれはさっき……」
 そう、気絶から回復した彼がその直後に襲撃された相手、その人物の特徴と合致していたのだ。さらに、一行の中にはメジャー以外にも、黒い肌の人物と接触していた者がいた。
「あの黒い肌、そして一糸まとわぬあの姿……間違いありません、あの時の原住民の方ですね」
 そう言ってメジャーの横に立ったのは、前回の探検時に原住民に襲われ、追い払った藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)だった。前回有無を言わさず殴り掛かられたこと、そしてヘマトフィリアである彼女の性癖を考えれば、危うい雰囲気になることは想像がついた。国外であるシボラで問題が起きては、取り返しのつかないことになるかもしれない。そう危惧し、彼女のフォローをすべくそばへと歩み寄ったのは、大学の後輩である白砂 司(しらすな・つかさ)である。
「藤原、まさか首を狩ろうとか考えてないよな」
「え?」
 司に声をかけられた優梨子は、笑ってその質問に答えた。
「もちろんあらゆる手段を使って友好を図りたいとは思っていますが、お話が通じないのであれば、そうするしかありませんね!」
「……そう言うと思ったよ。それじゃ同じ轍を踏むだけだし、何より変な誤解が生まれるだろ! ちゃんと意思の疎通を図って、穏便にことを運ぶんだ」
 もちろん、それが実現できる保証はない。だから、司は最悪の場合、その身を張って優梨子を守る心積もりでいた。が、どうやらそれは杞憂だったようだ。優梨子は、前回の襲撃からきちんと学び、対策を立てていたのだ。
「大丈夫です、そのへんは学習済みですから。前回揉めてしまった原因はおそらく、『服を着ていたこと』だと思うのです」
「……は?」
 信じられない、といった様子で司が優梨子を見る。しかし彼女は構わず持論を続けた。
「つまり全裸で行けば、友好を図れると思うんです。ね、サクラコさん?」
「えっ?」
 急に話を振られたのは、司のパートナー、サクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)だった。
「サクラコさんは獣人ですし、獣化すれば裸でも恥ずかしくありませんよね?」
「そりゃま、うー、確かに言われるとそうですけどっ」
「それがおそらく唯一、彼らとコミュニケーションを取る方法なのです」
 サクラコはちら、と口論になっている遺跡付近を見る。確かに、肌の色以外に、服の有無で団体が分けられている以上、それは有り得なくはない案だった。
「ええい、脱げばいいんでしょう脱げば!」
「おいサクラコ……」
「司さんも同じように、超感覚とかで獣要素を付加すれば、裸でも恥ずかしくありませんよね?」
「なっ、俺も脱げだと!? そんなはは、破廉恥な行為できるかっ!」
「女性ふたりが全裸になると言っているのに脱がない司君ですか。へー、まったくもってとんだチキンですねー。お姉さん悲しくなりますっ」
「サクラコは黙ってろ」
「まあ、百聞は一見に如かずと言いますし、実際成功しているのを見れば気も変わるでしょう。では、行ってきますね」
「え、ちょ、行ってくるって……」
 司が止めるより早く、優梨子は「物質化・非物質化」を使って着ていた乗馬服を一瞬にして消した。もちろん、服が消えたということは彼女は何もまとっていないということだ。
 間近でそれを見てしまった司はぶーっ、と勢い良く鼻血を出した。それを尻目に、優梨子は遺跡入口へと駆け寄っていく。
「先日は大変失礼致しました。今度は、きちんと正装で参りました」
 諸事情によりあまり外見を描写は出来ないが、優梨子はとても綺麗な姿でその騒ぎの中へと入っていった。一瞬ぴた、と争いが止まり、黒い肌の方の人間たちが近づく。また、襲撃されるのだろうか。
 が、彼らは殴り掛かりはしなかった。それどころか、次々と彼女に握手を求めたのだ。
「これはもしかして……さっきの推理が、当たってたんですかっ!?」
 興奮気味に話すサクラコ。そんな馬鹿な、と司はそのそばで頭を抱えていた。全年齢対象のこの世界で、服を脱ぐことが正解などということがあって良いのか、と。
 しかし現に、次から次へと差し伸べられる手に優梨子は応え、とてもフレンドリーなムードとなっている。
「これでいいのか? いや、まあ問題は起きないんだろうが、別な意味で問題が……」
 司がはあ、と息を吐いて、鼻を抑えながら優梨子の方を見る。と、そこで彼は、再び驚かされた。
「なっ……!?」
 なんと、敵意があると思われていた黒い肌の者たちとは仲良くなれていたにも関わらず、今度は白い肌をした者たちが目を釣り上げ、優梨子に敵意を向けていたのだ。今にも襲いかかってきそうな雰囲気である。
 その一連の流れを見ていた天音は、アクリトから聞いた違和感の正体を思い返し、事の真相を把握しつつあった。

 ――ミイラは、派手に着飾っていた。聞き及んだ原住民とは、まったくの真逆だ。

「そうか……分かったよ。僕たちはいつの間にか、部族が一種類しかいないとどこかで思い込んでいたんだろうね」
 その言葉を聞き、その場にいた誰しもがはっと気付かされる。真っ先に声を上げたのは、メジャーだった。
「原住民は、二種類あったッ!」
「あ、教授、そんな大きい声出したら……」
 生徒たちが注意するが、手遅れだった。遺跡付近で揉めていたふたつの部族が、木陰に隠れていたメジャーたちに気付いてしまったのだ。当たり前だが、ごく一部の生徒を除いてほぼすべての生徒が衣服を着ている。つまりそれは、黒い肌の原住民にとって敵意を向けられる対象となったということだった。
「ま、まずい……ここはミイラをどうこうより、逃げないと!」
 もの凄い勢いで自分たちに向かってくる原住民に圧倒され、メジャーたちは大慌てで逃げ出した。
 彼らにとって幸運だったのは、この遺跡が国境付近にあったことだろう。そのままシボラ国外まで走り抜けた彼らは、どうにか追っ手を振り切ることに成功していた。優梨子は攻撃対象には入っていないはずだったが、服を脱いだことで逆に白い肌の原住民から追われ、結果として一緒に逃げるはめになったのだった。
「はぁ……はぁ……みんな、無事かい?」
 落ち着いてから、メジャーが点呼を取る。ギリギリで合流できた優梨子もきちんと揃っており、一先ず犠牲者は出ていないように思われた。が、彼らはすっかり、大分前から姿の見えない者がひとりいたことを忘れていた。
 彼らにとって不運だったのは、その人物を守ろうと常に一緒に行動する者がいなかったため、さらなる事件にこの後巻き込まれるはめになったことだろう。
「ん? どうしたアグリくん」
 メジャーに向かって、ピカピカとランプを点滅させるアグリ。彼は慌てた様子でその体を動かすと、地面にガリガリと文字を綴った。
「ヨサーク さらわれた」


担当マスターより

▼担当マスター

萩栄一

▼マスターコメント

萩栄一です。初めましての方もリピーターの方も、今回のシナリオに参加して頂きありがとうございました。

約一年振りに梅村マスターと連動シナリオを出させて頂きました。
やはり大変だとは感じましたが、同時に、楽しい作業だなとも思いながらマスタリングさせて頂きました。
なおヨサークとアゲハのシーンは、チャットでお互いなりきって交互に会話したものをほぼ原文まま載せています。
それと、様々なところで連動の影響が出ているので、ぜひ両方を読んで楽しんで頂ければ幸いです。

珍獣アクションに関しては、前回に続き皆様の独創的な発想、楽しませて頂きました。
前回の秘宝アクションの時より多めに採用はさせて頂きましたが、それでも登場させきれなかった分は、
いくつか梅村マスターにお願いしてゴリラサイドで出してもらいました。
珍獣アクションの中で採用できなかったもののほとんどは、
「意外と有用そうなもの」「MCとの連携がいまいち取れていなかったもの」あたりが主な理由となっております。
もちろんそれだけが理由ではないので、そのあたりは個別コメントなどでご説明させていただいたりもしています。
なお、今回実際にアイテム化させて頂く珍獣は「シボライオン」と「イチャウイチャウ」です。
これらの珍獣は近日中に、全学校の購買に並ぶ予定です。

バタコ、オラウンコ、ドクモの3珍獣に関しては、
予想以上にドクモにアクションが集まった感じがします。
特にリアクションにもあるように、撮影関係のアクションが多く、それらを詰め込んだ結果、
予想外なことになって面白かったです。

今回の称号は、MCLC合わせて3名のキャラに送らせて頂きました。
ちなみに称号の付与がなくても、アクションに対する意見などを個別コメントでお送りしているパターンもございます。

次回のシナリオガイド公開日は7月上旬の予定です。
詳しく決まりましたらマスターページでお知らせします。
長文に付き合って頂きありがとうございました。また次回のシナリオでお会いできることを楽しみにしております。