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リアクション
第六章 「反撃」
廃墟前。
構成員たちがじわじわと特務警備部隊を追い詰める。
圧倒的な数の暴力。警備隊が一人戦えば相手は常に二人か三人で向かってくる。これでは勝てるものも勝てない。
それでも、警備隊は諦めずに武器を持ち、眼前の敵と戦い続ける。
「怯むな! 必ず救援は来る。それまでに崩れず戦い続けろ!」
梅琳は戦いながら叫ぶが、構成員たちは包囲の輪を狭めていき警備隊たちの動きを鈍らせていく。
戦線が狭まる中──不意に車のクラクションの音が響いた。
構成員たちは音のした方を見て、目を丸くした。
車が全速力でこちらに向かってきているのだ。
「……っ! やべえぞ! 逃げろ!」
構成員の誰かが叫ぶが、すでに遅い。
無闇に相手を追い詰めて密集していた構成員たちは我先に逃げようと互いの足を引っ張り合い──人数の四分の一があっさりと轢かれてしまった。
肉と骨が堅いものにぶつかる音、宙を舞う人。
車は直進を止めると、ドリフトしながら車を止め運転席から新風 燕馬(にいかぜ・えんま)が出てきた。
燕馬は梅琳を見つけて、無事を確認すると胸をなで下ろした。
「間に合った……奇襲部隊を連れて来たよ」
そう言って車が突っ込んできた方角を見ると、奇襲部隊が列を揃えてこちらに向かってきていた。
その姿を見て、構成員は眉間にシワを寄せ、警備隊の目には光りが宿る。
数秒の睨み合いの末、奇襲部隊と構成員達は激突する。
再び燃え上がるような怒号が天まで届き、廃墟を揺らした。
「俺は廃墟の中を見てくるから、こっちは任せた」
燕馬は助手席にいたザーフィア・ノイヴィント(ざーふぃあ・のいぶぃんと)に声をかける。
「うん、気をつけてね。……ほら、君たちも行っておいで」
ザーフィアはペット用治療キットを装備させたヘルハウンドたちに燕馬の後を追わせると、自身も車から降りて戦線に参加した。
「とにかく時間を稼がないとね」
呟きながらザーフィアは最前線に立つと六連ミサイルポッドを展開し、射出した。
ミサイルは地面に突き刺さると爆発し、構成員たちは為す術も無く吹き飛ばされる。
その様を見ながらザーフィアは、
「僕は、あまり強くない――君達の命まで気にしていられないんだ」
そう呟くように言った。
「っざっけんじゃねえぞ! 殺せるもんなら殺してみやがれ!」
構成員達は額に青筋を浮かべながら吠えて、突撃してくる。
ザーフィアは奇襲部隊と連携を取りながら、構成員達を遠ざける弾幕を張り続けた。
燕馬は廃墟内に突入すると、けが人の状況や医療状態を急いで調べて苦い顔をする。
「こんなところで治療していたって埒が明かない……」
まともな医療器具も無い状況でよくやっているとは思うが、明らかにそれも限界が近づいてきているのは明らかだった。
燕馬はザーフィアと通信を繋ぐ。
「ザーフィア。梅琳を探して撤退の指示を出すように頼んでくれ」
『うん、わかったよ』
二つ返事で通信が切られると、燕馬はけが人の治療に当たった。
「まだ生きているか諸君? ――医者が来たぞ、絶望を捨てろ」
医者という言葉に何人かが安堵の表情を浮かべ、煤原大介が前に出てきた。
「救援、感謝する。フランから色々教わったが、付け焼き刃の知識ではどうにもならないと思っていたところなんだ」
「フランには随分助けてもらった。帰ったら労ってやってくれ」
帰る。
何気ない言葉ではあったが、この絶望的な状況ではそれさえ大介の心には励みとなった。
「了解! 無事に生きて帰ろう!」
大介は軍人らしいタフな笑みを浮かべ、燕馬の手助けに回った。
その数分後、梅琳を先頭に特別警備部隊は撤退を開始した。
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