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リアクション
コルッテロ、アジトの最上階。
明人の答えにより静寂が訪れた部屋。
その静けさを打ち破ったのはアウィスの笑い声だった。
「いやぁ……俺様も舐められたもんだ」
アウィスは特に怒った風もなく、ただ単純に愉快そうに笑い続ける。
「それとも買い被りすぎたのか?
ここまで損得勘定の出来ないバカだとは思わなかった。時計塔も詰所も虫の息だってのに」
最後の言葉が引っかかり、明人はアウィスに問いかけた。
「……なんだって?」
「何度も言わせんなよ。時計塔も詰所も虫の息だっつってんだ」
アウィスは説明するのも面倒くさいのか、リモコンのボタンを押した。
廃墟前の戦いの映像が切り替わり、次に映ったのは――こちらが占領しているはずの時計塔で行われている戦い。
「な……っ!?」
「驚いて声も出ないか。ま、無理もないさ」
アウィスは嘲るように明人を見た。
「時計塔に爆弾を仕掛けて人質にしようとしてたんだろう?」
「……!?」
「とある情報屋からの垂れ込みだ。ま、爆弾を仕掛ける暇もないみたいだぜ」
くくくっと喉を震わせて笑い、アウィスは再びボタンを押した。
次に映ったのは戦場から程遠い――詰所が炎に囲まれている光景だった。
「時計塔の占領の阻止に、詰所を破壊しようとする奴ら。
俺の指示じゃねぇし、一方はコルッテロの傭兵でもねぇけどよ……まぁ、詰みってやつだ」
「…………」
「まぁ、残念だったな。とにかくだ……交渉は決裂だよなぁ!」
アウィスの言葉と同時に男達が銃を構えて明人に狙いを定める。
男達が引き金を引く寸前、明人達が入ってきたドアがけたたましく開き、銃口の照準の一部がそちらにむいた。
乱入してきたのは狩生 乱世(かりゅう・らんぜ)とグレアム・ギャラガー(ぐれあむ・ぎゃらがー)だった。
男達の武装を見ながら乱世は鼻を鳴らした。
「やっぱりこうなったか。様子見てて正解だったぜ」
「まあ、ペンダントを渡しててもこうなってた気もするし。一番想像できる未来だよね」
グレアムは自信満々に腕を組んでいる乱世に向かって余計な一言を加えてから、掌をアウィスに向けた。
バチバチと高圧電流が発生。
雷にも匹敵するサンダークラップを発射する
「っと……」
アウィスは近くに居た親衛隊の袖を引っ張り、無理やり射線に移動させる。
ドォンと花火が爆発するような直撃音が響いた。
親衛隊員は手足を投げ出して、絨毯をガリガリと削り取る。逆さのまま停止。ぶくぶくと泡を吹き、ぴくぴくと全身が痙攣していた。
即死だろう。
けれどアウィスは自分の身代わりになったその男に目もくれず、唐突に現れた乱入者の二人に非難するような視線を向けた。
「あらら。死んじまった。おいこら、どうしてくれるんだよ掃除が面倒じゃねえか」
余裕の発言に乱世は面白くなさそうにアウィスを睨みつける。
「随分と余裕じゃねえか。まさか、まだ自分が死なないなんて思ってるんじゃないだろうな?」
「もちろん、俺様がこんなところで死ぬかよ。その言葉はリボンをつけてお返しするぜ」
「確かに現状の人数を考えればこっちが不利だね。でも、質が良ければ数の多さをひっくり返せるとは思わないかな?」
グレアムが乱世の代わりに反論し、乱世はグレアムに続いた。
「グレアムの言うとおりだ。この場で部下が一人一人やられていって、同じ台詞が吐けるのか? 今から試してやろうか?」
乱世は指の骨を鳴らしながら、獣のように白い歯を剥き出しにしてみせる。
「そうかい、それならそうなる前に死体でお帰り願うぜ」
「やれるものなら試してみればいいよ。僕たちは結構手強いよ」
「言ってろ」
乱世とグレアムが戦闘体勢に入ると、アウィスの部下達も銃を構えた。
ピン、と空気が張り詰める。
どちらかが派手に動けば、それが合図になる。それを全員が肌で感じてあった。
そんな状況でも、アウィスはお構いなしに明人へと声をかける。
「それじゃあな。交渉決裂は本当に残念だった」
圧倒的に数で有利なアウィスは勝利を確信した笑みを浮かべ、命令を出そうとしたが。
獣人化した明人の言葉により、その命令は止まることになった。
「何でお前はそんな計画を企てたんだ?」
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