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【裂空の弾丸――ホーティ盗賊団サイド――】綺麗な花には何がある?

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【裂空の弾丸――ホーティ盗賊団サイド――】綺麗な花には何がある?

リアクション

 最高のパフォーマンスにもあくまで冷静に、平等に感想を述べる審査員。
 しかし、会場がハコ揺れしていたのは言うまでもない。
「ブラボーなパフォーマンス! 優勝は決定しちゃったかも!? しかしまだ未知なる挑戦者がいるかぎり戦いは終わりませんってことでどうぞー!」
「……で、どうしてあたしがペア扱いなのさ!」
「尺がどうとかで一緒にされてしまいましたね」
「きぃぃぃ! これがひがみ妬みってやつかい!? まあいい、あたしの名はホーティ! この美貌にとくと酔いしれな!」
「えっと、ワタシは、その……」
「……あんたももっと大きな声でしゃべりな! 一番おっきな声で自己紹介! さんはいっ!」
「わ、ワタシの名前はレジーヌ・ベルナディス(れじーぬ・べるなでぃす)です! よ、よろしくお願いしま、す……」
 語尾が尻すぼみになったが、普段のレジーヌからは想像つかないほどの大きな声で自己紹介。
「さ、さっそくです、ワタシの故郷であるフランスの歌謡曲を歌います」
「ちょ、あたしが先にっ」
 ホーティより先に歌を歌ってアピールをするレジーヌ。
 透き通るような歌声に会場は癒されていく。
 やがて歌が終わると皆清々しい笑顔でレジーヌに拍手を送る。
「あ、ありがとうございます」
「……はあ、まあいいか。レジーヌ、と言ったね。今度はあたしのアピールに付き合ってもらうよ」
「わっ」
 レジーヌの手を強引に手を取って踊りだすホーティ。
 キャラによらず基礎が整ったステップ。どこで覚えた社交ダンス。
「……ホーティさん。ベルさんの機晶石、返して頂けないでしょうか」
「なんだい、あの小娘の差し金かい? お断りだよ」
「あれはとても重要な機晶石なんです。でないと飛空挺が……」
「それ以上は聞かないよ。取りたきゃ力ずくで取るんだね。こんなに近いんだからわけないだろう?」
「……そういうことは、したくありません」
「甘ちゃんだねぇ。まっ世界のどっかにそういう奴がいるのも悪くはないだ、ろっと!」
 最後に綺麗にポーズをとったホータィとレジーヌの二人に、惜しみない拍手が送られる。

―――健気な自己紹介と歌に好感が持てますね。
―――ただ今までと比べるとインパクトがちょっとねぇ。
―――健気、それこそがたった一つの真実。えっ、ホーティさん? 知りません。

「なんでさ!」
「見事なツッコミありがとうございます! さあちょっと巻き目でやっておりますが沖にせず、次が最後! では、ラストオーダーおねがいしまーす!」
「ウィムッシュ!」
「……まあ、こうなることは薄々感づいていたわ」
 水着審査のため、ではなく常時着用の服を着て美女コンテストのラストを飾るのは、
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)
「それじゃまずは私から行くわ!」
 ちなみに出場理由は美女コンテストと聞いて『あたしが出なけりゃ誰が出る』とセレンが意気込んだからである。
 セレアナは逃げ切れず強制参加。難儀なものである。
「まったく、さっさと終わらせたいものね」
 セレアナがぼやくさなか、セレンのアピールは既に始まっていた。
 先ほどのホーティがやったダンスとはまったく違う、リズミカルなダンスミュージックに合わせての踊り、舞い。
 力強く、しなやかに、時に儚げに。ほのかに漂う妖艶さがセレンを包む。
「っとここでっ!」
 大きく体勢を崩したかと思えば、天高くスラリと伸びた足を空に蹴りつける。
 蹴りつけただけでは終わらず、またダンスへと繋げる。
 演舞とダンスをうまくミックスさせ、今にも舞台から飛び出そうなほど、ダイナミックに魅せていく。
「ハッ!」
 一際大きな掛け声と共に体を制止。美しさと、荒々しさ、その両方が絡み合い危険な香りを漂わせつつ、最後まで目を離さずにはいられなかった。

―――しなやかな女性らしい舞い、力強く男性のような演舞、その合わせ、見事です。
―――種類は違えど二回連続ダンスとは、運がなかったかしら。
―――私は言いたい。天使とダンスだ、と。

「……もういいじゃないかしら? 私のアピールは」
「何言ってんの。がつーんとやっちゃいなさい」
「とは言ってもね……なら、そうね。歌も二番煎じかもしれないけど」
 そう言いながら、迷いを捨ててゆっくりと歌いだす。
 先ほどのレジーヌのように優しげで静かな歌。ただ一つ違うところ。
 セレアナは、即興の、アカペラを歌っていた。
 誰が書き記した歌詞でもなく、誰が歌い古した歌でもなく、
 自分の頭と心の中で思い描いた旋律を自分で奏でていく。
 ただ一度のどもりもなく、音程を常に隣に、会場へと開け放っていく。
「……あの、もう終わりよ?」
 会場の誰もが、終わったことにすら気付けなかった。

―――これを即興でとは、大した力量です。
―――んーその衣装でなければいけなかったのかしら?
―――わたし、このコンテストが終わったらアカペラ習うんだ……。