リアクション
合衆国の守護者たち .「これは……やはり撤退も視野に入れたほうがいいかもしれませんね」 ルカルカに対して進言するのはエールヴァント・フォルケン(えーるう゛ぁんと・ふぉるけん)中尉だ。 エールヴァントは万が一に備えてパワードスーツを着用しながら司令室で待機しつつ、ベルゼビュートの襲来中はそれらの駆除を行っていた。そしてまた、念のためにとハイナに【プロフィラクセス】を施していたのだが、現状を見ると幾度にも渡るダエーヴァとの戦闘で大切な人を失った米兵は多く、そんな彼らに対してベルゼビュートの精神攻撃は多大な威力を発揮していた。 「そうですね。万が一の場合は基地の放棄も視野にとは大統領にも何人かが進言していますし、中尉はそちらの準備をしてください」 「はっ!」 ルカルカの指示を受け、エールヴァントは万が一の撤退の準備のための活動を始めようとする。 「って、何やってんだよ……」 そのエールヴァントが飽きれるように声をかけたのは、パートナーのアルフ・シュライア(あるふ・しゅらいあ)で、アルフは司令室の美人オペレーターにちょっかいをかけていたのであった。 「おい、行くぞ!」 「はいはい。じゃ、また今度ね!」 アルフはオペレーターの女の子に声をかけると、エールヴァンとともに活動を開始した。 その一方で真面目に(?)というか普通に軍人らしく基地を防衛しているのがシャンバラ教導団大尉の水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)とそのパートナーのマリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)。そしてシャンバラ教導団歩兵科曹長のジェイコブ・バウアー(じぇいこぶ・ばうあー)とその妻であるフィリシア・バウアー(ふぃりしあ・ばうあー)であった。 ゆかりは【防衛計画】を用いて基地内部の見取り図を元に、「敵が攻めるとしたらどのポイントで基地の攻略を図るのか?」や「敵が基地内部への侵入を果たした場合、どこが構造上のウィークポイントなのか?」そして「攻守両面で、ここだけは絶対に陥落してはならないポイントはどこか?」などを事前に割り出し、それぞれのポイントで特に、絶対に陥落させてはいけないポイントを中心に適切な防御プランを立案し、それを契約者や米軍の隊長クラスと共有していた。 カルたちが防衛していたのもそんなポイントの一つだ。 ゆかりの割り出した要所を防衛するその戦術は、普通に通路を移動するコパワードコープスや多脚戦車コープス、そしてその他の怪物たちに対してはそれは有効に働いた。しかし、排水口や通風口などおよそ台所の黒い悪魔の如き行動範囲を持つベルゼビュートにとってはさすがの防衛網も意味をなさなかった。 それでも、ゆかりと麾下の部隊にとっては、ゆかりの戦況把握のお陰で適切な防衛が出来た。そして、その周囲ではマリエッタとフィリシアが怪我をした兵士たちの治療していた。 ヒールやナーシング、グレーターヒールに命のうねりなどを使って次々と怪我をした兵士たちを治療していく。その様子に彼女たちの戦場の天使や女神などと呼ばれ、兵士たちから信仰と感謝の対象となったのだった。 「もうだめだ……」 そんなふうに泣き言を言う兵士に、マリエッタはちょっとしたからかいを込めたジョークを言って見せたりする。 「その程度で泣き言を言うようじゃ、好きな女の子をベッドで喜ばせることすらできないわよ。それくらいの怪我ならまだ大丈夫頑張りなさいな」 マリエッタはその技術の関係上、治療を施すのは主に傷の軽い兵士である。従って、大したけがでもない兵士たちが泣き言をいうと、普段はやさしい目つきを厳しくして、厳しい口調できついジョークを飛ばすのであった。 「こんなところで休んでる暇はないんだ」 そんなふうに再度出撃しようとする兵士にはフィリシアがやさしい言葉をかけて宥めるのであるが、フィリシアの夫であるジェイコブが、兵士のことを複雑な視線で眺めているので、フィリシアは苦笑しつつジェイコブに優しく微笑みかけるのであった。 「あらまあ、嫉妬なんて嬉しいですわ」 フィリシアのその言葉にジェイコブは違うなどと言いつつも、米兵たちとともに侵攻してくるダエーヴァの怪物を押しとどめている。 「連中もなかなかガッツのある奴らじゃねえか! 俺たちもそれ以上のガッツを見せつけてやれ!」 全長20cm、重量4kgの二丁拳銃を器用に駆使しながら、ジェイコブはダエーヴァの怪物たちに応戦する。築き上げた防衛網は鉄壁を誇り、並み居るダエーヴァの怪物たち寄せ付けない。 そのようにして防衛する士官、下士官、兵士たちのおかげでリバイバルストライプの基地は守られているのだ。 「Do you want to live forever?(お前ら、永遠に生きたくないのか?)」 ジェイコブはダン・ダリー海兵隊軍曹が叫んだ言葉を拝借し、兵士たちにハッパをかける。 「フランスのベローの森ですな?」 それに対し薀蓄のある兵士がニヤリと笑って答える。ジェイコブが笑い返すと、少尉の階級章を付けた年若い士官は、配下の兵士たちに対してさらなる攻撃を指示したのだった。 |
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