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第2章 乙女「心」はどんな色?

「ここからは、司会進行・審査員のコメントなどなど、百合園女学園放送部が担当しちゃうよ〜っ!」
 満席のスタンド席・ちょっと緊張気味の出場者席、そして審査員である静香様・ラズィーヤ様に向かって高らかにマイクを掲げて、海開き&“ミス・百合園”コンテスト開始を告げる司会者は、司会者らしくタキシードを意識して黒い水着に蝶ネクタイをつけてやる気満々です。
 静香様からのお言葉もいただき、会場のボルテージはパフォーマンス前からMAX寸前です。

「みんなぁ〜、プログラムをしっかり確認して、自分の出番を忘れないでね☆
 それでは、心の部、一番手はぁ…、蒼空学園から来てくれたこの方っ!秋葉 つかさ(あきば・つかさ)さんの登場でーすっ」
 大胆な白のマイクロビキニ姿で、小学生と見間違うくらいの小柄な体躯にも関わらず、大きな胸とピンクのツインテールを弾むように揺らしてつかさが舞台上に現れます。
「えぇとっ、つかささんはエントリーの際に歌の指定がなかったのですが、大丈夫ですか〜?」
「はい。大丈夫ですわ。マイクだけいただければ…。秋葉つかさです。よろしくお願いいたしますわ」
 つかさはすぅっと息を吸い込み、マイクに向かって歌を…歌い始めると思いきや、ぺたんと舞台上に座り込みました。
 そして、自分の肌に指を慣れた手つきで滑らせ、確実に自分の身体を徐々に華開かせる、首元から肘の内側など、自分にしかわからない秘密の部位をゆっくりと撫でていきます。
 そして、潤んだ瞳で見つめるその先には、静香様のお姿…。
 静香様の、決して暑さからだけではない、赤らんだお顔で、伏し目がちにしているお姿が、いっそうつかさの気持ちをかき乱します。
「…んぅくぅっ」
 その快楽からくる声をマイクが拾ったところで、愛くるしい姿にうっかり見とれていた司会者も我に返りました。わー、待った待ったっ!!
「つかささんっ!すとーっぷっ!!警備っ警備〜っ!!」
 誰かが舞台上のつかさにバスタオルを投げ込みました。試合終了のゴングです。
 会場内は、顔を赤らめている乙女たちの他、がっつりかぶり付きで見ている観客もいれば、好色な目で彼女を見つめているような視線もチラホラ…?
大混乱を招き起こしたことには間違いありません。
 警備を担当している崩城 亜璃珠がつかさを抱きかかえるように舞台から連れ出します。
 火照る寸前の灯の入ったつかさの身体からはとても魅力的な香りがします。
「私がいるもの、後のことは気にしないで…安心していいのよ」
 亜璃珠が優しくつかさを慰めていますが、その目の端には何か好奇な色が見えなくもありません。

「す、すみませんっ!現場が少々混乱してしまいましたが、えーっと、次の出演者に進みたいと思いますっ」
 心の部門、第二番手も蒼空学園からです。黒髪の美しいたおやかな美女である漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が舞台に現れると、先ほどまでの観客のざわめきも静まり、代わりにほぅ、という感嘆のため息の声がアチコチから聞こえてきます。
「この歌を、刀真へ捧げます…」
 マイクを握ると、細いけれど熱さを忘れていない声が、切ないメロディーをなぞり出しました。
「♪ふと目を覚まし瞼を開けば驚く表情(かお)の貴方がいて。差し出された手を掴んだその時から私の旅が始まった。
 貴方が迷い立ち止まるのなら私が背を押し励ましてあげる。だから私が泣いて立ち尽くしてたらこの手を引いて笑いかけてね。
 貴方が傷付き倒れるならば私がその身を癒し支えてあげる。だから私がつまずき転んだならば傍で抱き止め立ち上がらせてね。
 貴方が運命(やみ)を切り開くならば私がその手に剣(つるぎ)をあげる。だから私が運命(やみ)に立ち向かうときにはそっとこの身を支えて下さい。
 貴方がいればすべて大丈夫だとそう想えるの。だからずっと傍にいてね、それだけが願い。一緒に進もう、この蒼空の旅路を」
 月夜の歌声は、御神楽 環菜(みかぐら・かんな)に命じられて、警備員をさせられていた樹月 刀真(きづき・とうま)の耳にしっかりと届いていました。
 あまりにもストレートな想いに、刀真は顔を赤らめ、それでも
(ええ、一緒に進みましょう)
 と、その想いをしっかりと受け止めていました。

 月夜のしっとりとした歌声を舞台の袖で聴きながら、緊張の色を隠せないのは、次が出番のエルシー・フロウ(えるしー・ふろう)。ついに百合園女学院からの出場者の出番です。
「緊張します〜」
「コンテストの参加はきっとエルシーにとって良い経験になりますわ。さ、胸を張って練習通りにやれば大丈夫ですわよ。わたくしが見守っていますわ」
 パートナーであるルミ・クッカ(るみ・くっか)がエルシーを優しく励ましています。
 ゆっくりと手を離されたエルシーは、後ろを何度も振り返りながら壇上へ上がります。
(そうだよね。みんなへの感謝の気持ちを込めて、歌わなくっちゃ)
 上品なピンクのフリル付きワンピースを着て、胸を張ってエルシーは百合園女学院の校歌を歌い始めました。

「さって、次はファイたちの番だねっ♪楽しく歌っちゃおっ!」
 蒼空学園から参加の広瀬 ファイリア(ひろせ・ふぁいりあ)は、お揃いのパレオを身につけたウィノナ・ライプニッツ(うぃのな・らいぷにっつ)の手を取り、きゃっきゃっとはしゃいでいます。
「ボ、ボク、、ちょっと…恥ずかしいよぉ〜っ!」
「だぁいじょぶっ!ファイ、ウィノナちゃんのために一生懸命歌うんだから、ちゃんと見ててね♪」
「うん」
 ファイリアはアップテンポの曲に合わせて、愛らしく身体でリズムを刻みながら、ウィノナへ想いを込めて歌い出しました。
「♪前が何にも見えなくても♪怖くて止まって後ろを見続けるなんて♪もったいないじゃん!
 大きな壁が待ってても〜辛い出来事待ってても〜♪悩まず突っ走っちゃえば、それだけでも絶対幸せさ〜っ♪」
 明るく元気なファイリアの笑顔はまるでひまわりの花のように、見ている人たちを魅了します。
それを見ていたウィノナは、それだけでなんだか元気がもらえたような気持ちになって、自分も頑張ろうと思えるのでした。

「そっれでは、盛り上がってきましたここで、5人目の出場者を紹介しっまーす!蒼空学園のウィノナ・ライプニッツさんでーすっ」
 それまで緊張の色を隠せなかったウィノナでしたが、マイクを握ると不思議と気持ちが落ち着きました。
「♪ボクの愛しき子よ〜♪耳を澄ましてごらん〜♪」
 歌い始めると、不思議な感覚がウィノナを襲います。なんだろう…、何でか、懐かしい…?
「森のざわめきも〜♪風のささやきも〜♪
 みんな、みんなキミを祝福しているよ〜♪」
 ファイリアもウィノナが歌っている姿を始めてみました。
 理由もなく、温い涙が頬を伝っていることに気付きます。
(あれれ、なんでファイ、泣いているですかね…?ヘンですよね…?あははっ…)
 ウィノナの歌が終わると、ファイリアの涙も止まりました。
 見ると、ウィノナが真っ赤な顔をして恥ずかしそうに、舞台から降りてくるところです。「ウィノナちゃん、とーってもよかったよ♪」
 ファイリアはウィノナに飛びついて、涙を隠しました。

「6番目の出場者は〜!数少ない、パラ実からの参加のこの方ですっ!ヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)さん、どうぞっ」
 黒地に炎の紋様が描かれたビキニと、黒皮のグローブ着用した、長身の赤髪美女であるヴェルチェの姿は、百合園女学院の生徒にはない迫力があります。マイクスタンドを握る姿もさまになっていてカッコイイっ!
「♪空京で出会った時からわかっていた。飛べなかったココロを破壊する。あいつがあたしの吸精主。
 あたしの胸はマグマより。熱く燃えて噴き出しそう。
 右手に確かな覚悟を握り締め。左手に危険な媚薬を忍ばせて。
 ジャタの森より深いジャングルに熱いナイフを突き立てて。ヴァイシャリーの湖にあなたの想いが溶けて行く。
 あたしの胸は世界樹を。燃やし尽くすほどに熱く…」
 妖艶な姿に見合った、艶っぽい歌声はまさに“女としての心意気”を感じますっ!
「かぁっこいーっ!」
 百合園の乙女たちから、黄色い声が上がります。
 遊雲・クリスタ(ゆう・くりすた)もその一人。舞台に上がる出場者たちに、常に無邪気な拍手を送り続けてきた彼女も、ヴェルチェの迫力に、さらに気持ちがハイテンションにっ!
 やっぱり百合園にはない、パラ実のかっこよさに惹かれる乙女たちは多いのでしょうか。

「ああいう大胆な格好には、逆に殿方は引くものですわ。大和撫子のなんたるかを教えてあげますわ」
 不敵な笑みを浮かべてジュリエット・デスリンク(じゅりえっと・ですりんく)は、極薄の羽衣風の上着に短い腰巻の形をした水着をちょん、と引っ張って見せる。
 ジュリエットの選んだ白いスクール水着に身を包んだジュスティーヌ・デスリンク(じゅすてぃーぬ・ですりんく)は、いかにもはかなげな佇まいで脇に控えています。
「私、あの…、あんなに大胆な方の後ですと、ちょっと、、」
「大丈夫よ。世の殿方の求めるものは、チラリズムですわ。ジュスティーヌくらいの恥ずかしがり屋さんのほうが『受け』はいいものですわ」
「でも、あの…。審査員もみなさん、女性ですけれど、、」
「…いいからっ!さっさと行ってらっしゃいなっ!」
 ジュリエットに半ば押し出されるような形で、ジュスティーヌが舞台へと上がります。
 ジュスティーヌは、緊張しながらも、マイクへと唇を近付けます。
「♪あーなたがいーれば 何もいらないのー。つーいてゆきます。何度振られてもー。
 酒手がいるならー。私が稼ぎますー。
 蹴られたって・打たれたって・平気なの。だーから捨てないで・私と夢だけはー。
 あーなたをー世間は・とかくいうけれどー。わーたしは知ってます。あなたのその瞳。
 前だけ向いてて・振り向かなくていい。怒られたって・怒鳴られたって・平気なの。
 だーから捨てないで・私と愛だけはー」
 170センチいう長身に、ロングブロンドのジュスティーヌの歌がド演歌であったことは、意外も意外。
 袖で見つめているジュリエットがさまざまな決定権を握っていることを知っている人からは、もしかしたら同情の目が注がれている、かも…?

「ジュスティーヌ、ステキでしたわ。やっぱり大和撫子であるならば、日本の心を歌わなくてはね」
 そう言いながら、ジュリエットの歌は演歌とはまったく関係のない世界を歌い上げています。
「♪雲間に輝く・富士の霊峰。その白雪も・顔色失う。扶桑の伝統・伝えし指導者。万歳!万歳!桜井校長!
 パラミタの花・その愛慕う。シャンバラの地も・その美になびく。乙女の花園・築きし創造者。万歳!万歳!ラズィーヤお姉様!
 鋼の意志で・楽園を守り。我らが校名・世に轟かす。自治の旗かざす・正義の守護者。万歳!万歳!白百合会万歳!」
 目を向けると、静香様もラズィーヤ様も、笑顔で満足そうなご様子。これが大和撫子の実力ですわっ!