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かぼちゃと踊れ!?

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かぼちゃと踊れ!?

リアクション

 「あ、変熊くん」
 いつも通り、全裸の上にマント一丁の店に入って来た変熊 仮面(へんくま・かめん)を、ミス・スウェンソンが呼び止めた。
 「あなたにそういうつもりがなくても、裸のまま仔猫さんたちに抱きつくのは、一歩間違うとセクハラになってしまうから。これをはいてくれる?」
 そう言ってミス・スウェンソンが取り出したのは、立体裁断になっている、象の顔の形をした超ビキニパンツだった。
 (ミス・スウェンソン、なぜ、どこからあんなものを……)
 店内の空気が一瞬、凍りつく。
 「……どうしても、はかないとダメか……?」
 変熊は悲しそうにミス・スウェンソンを見る。ミス・スウェンソンは子供の悪戯を咎めるような表情で、変熊を見返した。
 「ただお店の中で座っているだけならいいけど、仔猫さんたちに抱きつきたいならはいてちょうだい?」
 「……わかった……」
 変熊はしぶしぶ、象さんビキニに足を通す。
 (うわーっ、よりによってここではくか!? トイレに行くとかしてくれよぅ……野郎の着替えなんて、しかもあんなビキニはくとこなんて見たくねえよ!)
 黒脛巾 にゃん丸(くろはばき・にゃんまる)は、それを見て顔をしかめた。と、象さんビキニをはき終えた変熊がこちらを見てにっこりと笑った。
 (目、目があっちゃったよ!)
 にゃん丸がおたおたしていると、突然頭上で、
ぶちっ!!
 という大きな音がして、変熊の頭にオレンジ色のかぶりものが増えた。とたんに、変熊の顔色が変わる。
 「ククククク……ワタシヲ、ワタシヲ見テーッ!!」
 変熊はマントをばっさばっさと開閉しながら、店内をぐるぐる回り始めた。マントに引っかけられて、コーヒーカップやパイの皿が派手な音を立てて床に落ちる。
 「あー、梁から下げてあった、あのランタン……」
 心配が当たってしまった、と藍玉 美海(あいだま・みうみ)がため息をつく。ミスドに運ばれた中で、たった一つ調理されずにほぼ原型を保っていたカボチャ、御凪 真人(みなぎ・まこと)セルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)作のカボチャのランタンに、悪霊が取りついてしまったのだ。おそらく、最初にミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)を襲った悪霊カボチャの悪霊が、まだそのへんを漂っていて、とりついたのだろう。
 「これがダンスというものですか……すごいですね」
 『今日はダンスパーティだから』と言われてパートナーのイーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)に連れて来られた、タキシード姿にステッキを持った機晶姫セルウィー・フォルトゥム(せるうぃー・ふぉるとぅむ)が、感情の篭らない声で言った。
 「い、いや、これは違うぞ」
 タキシードに猫耳つきシルクハット、それにマントという格好のイーオンは慌てて言った。
 (ううむ、ダンスパーティではなかったのか? ダンスパーティなら、一対一の会話や挨拶をセルウィーに学ばせるのに都合が良いだろうと思ったのだが……)
 ダンスの相手にご挨拶をして、会話をしながらダンス、という社交界デビューのようなものを想像していたイーオンは、冷や汗をかきながら呟いた。しかし勘違いでもフォークダンスとか盆踊りならまだしも、狂乱裸踊りはあんまりだ。
 必死になって、これはダンスではない、とイーオンがセルウィーに言っている間も、変熊は華麗な舞いを続けている。しかし、ぐるぐる回りすぎて目が回ったか足がもつれたか、最後にはばったり倒れてしまった。
 「ウゴカナイ、ハ、ツマラナイ……」
 カボチャは呟きながら、次は島村 幸(しまむら・さち)にとりついた。
 「フフ、フフフフ……私コソ、かぼちゃノ意思ヲ守ルモノ、カボツァンダー……変熊、魔改造シテヤンヨ……」
 頭を振って起き上がろうとする変熊に、どこからかメスを取り出した幸が迫る。
 「ああもう、迷惑だし危ないし、宿命の対決は表でやって下さい! これじゃもふもふが堪能できないじゃないですか!」
 布をかぶってお化けの仮装をしていたサーミス・エシュトリーク(さーみす・えしゅとりーく)が、かぶっていた布を幸にかぶせる。
 「そうよ! にゃんこさんたちが怖がってるじゃない!」
 サーミスのパートナーラヴィリア・ハドス(らう゛ぃりあ・はどす)も手伝って、幸と変熊を店の外に押し出す。
 「これでよし、と。落ちたものを片付けるの手伝うから、その後また撫でさせてね?」
 さっきまでサーミスとラヴィリアの相手をしていたミャオル族に、ラヴィリアは言った。
 「ありがとうニャ!」
 ミャオル族はぺこりとお辞儀をする。

 「中に入ればいいのに」
 店の外のオープンカフェのテーブルを借りて、教導団カフェ『こうもり猫亭』を開いていた黒乃 音子(くろの・ねこ)は、烏龍茶を飲みながら店の中をのぞいている曖浜 瑠樹(あいはま・りゅうき)マティエ・エニュール(まてぃえ・えにゅーる)に言った。
 「いや……今回はいいんだ……アイリたちが無事なのを確かめたかっただけだから」
 (本当は、あそこに混ざってもふりたいくせに……)
 かぶりを振る瑠樹を見て、マティエは心の中でため息をついた。
 「む、何やら店の中が騒がしいんやけど」
 パンプキンヘッドにたてがみをつけた、ゆるライオン風キャラクターの仮装(?)をした、音子のパートナーのゆる族ニャイール・ド・ヴィニョル(にゃいーる・どびぃにょる)が、首を伸ばして店内の様子をうかがいながら言った。
 「パーティの馬鹿騒ぎって言うより、何かもめてるっぽいんやけどなぁ……」
 ちょっと様子見て来よか、と店の入口にニャイールが向かおうとしたその時。店の中から幸と変熊が、サーミスに押し出されて来た。
 「フフフフ、魔改造魔改造……チョウドソコニ、改造手術ニオ誂ラエムキナ車モアル……」
 『こうもり猫亭』が移動店舗として使っていた教導団のトラックを見て、幸の目がキラーンと光る。
 「我らは、教導団のイメージアップのため、社会福祉団体への寄付を集めるためにこの店をやっているのでござる。それに、このトラックは教導団の装備、勝手に魔改造などされては困るな!」
 黒いタンクトップにジーンズ姿で調理を担当していた音子のパートナー、剣の花嫁フランソワ・ド・グラス(ふらんそわ・どぐらす)が幸に向かって叫んだ。
 「にゃんこたちに迷惑かけるのは許さない! 成敗!しちゃうよっ」
 頭に猫耳ヘアバンド、背中にこうもりの羽、腰に猫しっぽのついた黒のぴったりしたワンピース姿の音子がびしぃっ、と幸に指をつきつける。
 「……魔女っ子アニメに、こんなのなかったっけ」
 「あー、あったような気がする」
 瑠樹とマティエ、そして道行く人々が遠巻きに見物する中、幸、変熊、そして音子の三つ巴の戦いが展開され、アトラクションとして今年のミスドのハロウィンに花を添えることになったが……
 「教導団のイメージアップにはならないような気がするでござる……」
 「まったくや……」
 フランソワとニャイールは、顔を見合わせてため息をついた。

 「まあ、色々と大変だったけど、今年のハロウィンも楽しく終わって良かったわ」
 パーティが終わった後、生徒たちを店から送り出しながら、ミス・スウェンソンは微笑んで言った。
 「ご来店ありがとうございましたニャ! またのご利用をお待ちしておりますニャ!」
 アイリを先頭に並んだミャオル族の少年少女たちが、ぺこりと頭を下げる。
 (あれだけ色々あって動じない、ミス・スウェンソンて大物……)
 そんな風に思いながら、生徒たちはそれぞれ家路についたのだった。

担当マスターより

▼担当マスター

瑞島郁

▼マスターコメント

 お待たせいたしました、ミスドのハロウィンをお届けします。
 カボチャとの戦闘方面で行動を取られた方で、仮装の内容を書いて下さった方が結構いらしたのですが、パーティしながら裏で戦闘、というシナリオ経過ではなかったので、ほとんどの方について仮装の内容を取り上げていません。悪しからずご了承ください。
 あと、混乱があるようなのですが、アイリたちは『ミャオル』族です。他のマスターのシナリオで、似たような名前の種族が出ているようで、そちらの名前を書かれたり、『ニャオル』族と書いてあったりしますと、マスター側も「あれ、どっち?」となってしまいますので、アクション投稿前にチェックしていただけるとありがたいです。
 ミャオル族とミスドについては、またこういった形で単発のシナリオで扱うことがあるかと思います。またその時にはよろしくお願いいたします。