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聖夜は戦いの果てに

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 第4章 団長バーサスGA!(ロード・オブ・ナイト編)

「剣道場!? それホント!?」
 ルカルカは携帯電話を耳に当てながら、走る。
「さっき見た時は、居なかったのになあ」

 【ロード・オブ・ナイト】が剣道場に集まった時、団長はトナカイの頭を被りなおした後だった。裂けた上半身の着ぐるみも、安全ピンで留めている。
(……誰?)
 伽羅がうんちょうに絆創膏を張ってもらっている脇で、9人は突っ込まないではいられなかった。
「来たな、9人か。思ったよりは少なかったが……前置きをしている時間はない。さあ、始めようか」
 先ほど嵩に指摘されたためか、団長は個人戦の提案はせずに剣を構える。
「一対多数はいくら団長が強いっても厳しくねーか? なんなら1人ずつ対戦してもいいんだぜ?」
 カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)の言葉に、団長はきぐるみの中で少し眉を顰めたが、気迫を込めて言った。
「構わぬ全員で来い」
 それを合図に、7人が陣形を作る。ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)、ルカルカ・ルー、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)明野 亜紀(あけの・あき)が前に。ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)と夏候 淵が中央に。カルキノスは後方へと移動し、戦闘に参加しない撮影係のクマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)と戦闘を見守る強盗 ヘル(ごうとう・へる)は壁際に退く。
「同じセイバーとして貴方は憧れ。だからこそルカルカの全てで戦う」
 宣言するルカルカに、エースがパワーブレスをかけた。続けてカルキノスが怒りの歌を歌いだす。
「自分達の絆、確かめて貰えますか」
 ザカコが轟雷閃を使う。
 同時に前衛陣の攻撃。
 扇状に展開し、ルカルカがヒロイックアサルト「疾風」で脚力瞬発力を増して団長の構えた暁の剣へと高周波ブレードを振り下ろす。高周波を防ぐ術はない。これを受ければ、いかな団長でも無事では済まないだろう。身を低くして、床の上を転がる団長。高周波ブレードは剣道場の木板を深々と切り裂き、それを抜いている間に隙が出来ないようにエースがバニッシュをかけた。目くらましと、加えてダメージ効果もある。
「くっ……!」
「団長!」
 伽羅が叫んだ。
 団長が光を覇気で飛ばし、そこを、ザカコが右からカタールで、左から亜紀が光条兵器で攻める。
 団長は一旦剣を納め、2人の武器を指で白刃取りした。茶色の気ぐるみの両手が、赤く染まる。一歩身を引き、剣でツインスラッシュを仕掛ける団長。
 ザカコと亜紀は後ろに跳び退る。攻撃の余波でカタールの片方が割れた。
 間髪入れずヒロイックアサルトとエンデュアを発動した団長は、エースの爆炎波をかいくぐってルカルカに迫る。
 引火する着ぐるみ。
 構うことなく団長はソニックブレードをルカルカに仕掛けた。手首を斬り落とさないように、高周波ブレードの柄を狙う。ルカルカも負けじと腕を振り上げる。直後、トナカイの角と超音波の刃が交差して飛び、壁に激突した。超音波を受けて、飾られていた鎧が真っ二つになって崩れ落ちる。
 着ぐるみの火は消えていた。
「すごっ……」
 ビデオカメラを構えたクマラが声を漏らす。
「団長は、まだまだこんなものじゃないわ。それにしても、彼女達の連携プレイは素晴らしいわね」
 いつの間にか来ていた李 梅琳(り・めいりん)が、腕を組んで感想を述べた。
「あれ? なんでいるんだ?」
 ヘルが驚いて見やると、梅琳は言った。
「私だって、団長の戦いを生で見たいもの。主催側の特権ってやつね」
「……ところで、団長がトナカイになってる理由知らない?」
 クマラが訊くと、梅琳はさあ? と首を傾げた。
「……」
 ルカルカは無言で、光条兵器を引き出した。カタールに近い形状は、リーチの差という意味では不利だ。
 しかし。
 合図を受けて、淵が轟雷閃を放つ。ダリルも光条兵器を構え、ルカルカと同時にレーザーを撃った。続けざまに襲いくる雷とレーザーを避ける団長。その間にルカルカは一気に距離を詰め、腕を団長の首に向けて突く。だが、団長はスライディングするようにしてルカルカの足の間を通過してレーザーを避けた。エースが再びバニッシュを使おうとするのを目の端に捉え、目を瞑ってルカルカの襟首を掴んだ。
「うわっ!」
 ルカルカは宙を一回転し、床に叩きつけられた。
 息が詰まる。
 視線の先にあるのは、天井ではなくトナカイの顔。フェルト生地の手が両手を押さえる。足も完全に固められ、身動きが取れない。凄まじい力だった。
「……参りました」
 団長が離れる。起き上がって片膝を立て、ルカルカは礼を示した。
「お手合わせ感謝します」
 だが、戦いはまだ終わっていなかった。彼女が引いたところで、ザカコがバーストダッシュで空中へ飛ぶ。奈落の鉄鎖で自らに重力をかけ、ザカコは超速で落下する。
「重覇斬!」
 団長は盾を使い、それを受け止めた。床が陥没する。余波が消える前に、団長はザカコの腹を蹴り上げた。天井に激突し、ザカコは血を吐く。力なく落ちるしかなかったが、そこを団長に受け止められた。
 ぐったりした彼に、淵が慌ててヒールをかける。
「…………」
 天井のかけらが粉になって床に舞う。金縛りにあったように、その場の人間は動けなくなった。
 団長はそれぞれを見渡すと、おもむろに頭を脱いだ。
「――どうやら終わりのようだな」
 その顔には、汗の一つも浮いていなかった。

 先にプレゼント交換を済ませていた4人は、順番に梅琳からキスを受けた。頬へのキスだったが、エースは少しどぎまぎしているようだった。
「ふむ。実に密度の濃い時間だった。君達全員に褒美をやろう」
 団長はそう言うと、剣道場の隅に置いてあった木箱を開ける。取り出したのは、マツタケだった。
「少々季節が外れているが、私の実家に山程生えていたものを冷凍保存していたものだ。日本人にとっては大層高価なものだと聞いてな。この機会にさばいてしまおうと――ん、どうした?」
 亜紀だけが目を輝かせ、それ以外の【ロード・オブ・ナイト】の面々は脱力したような顔をしていた。
「……まあ、別に褒美目的じゃなかったし良いけどな」
 エースが笑う。
 一方、伽羅はマツタケを見て何かを思い出したようで、口をわなわなと震わせた。
「団長……団長の○○こ……」
「ああああああだめでございますそれ以上はあああああああ!」