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嫉妬にご用心!?

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嫉妬にご用心!?

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囮としての潜入

 このころ、蒼空学園の生徒の中には、自ら誘拐犯の懐に飛び込んで、潜入を試みようとする者が出てきていた。

 橘 舞(たちばな・まい)も、それを画策するひとりである。

「親戚の友達が、行方不明になった子の同級生なんです。だから、私もなにか解決に役立てることをしたいと思ってるのよ」

 舞の話を聞いていたのは、シャンバラ教導団からやってきたジーク・スカイウインド(じーく・すかいういんど)と、パートナーのシルヴィス・アークウインド(しるう゛ぃす・あーくういんど)だった。

「なるほど、それは感心なことだな。オレ達も、どれだけ力になれるか分からないが、できるだけ事件を解決できるように努力するぜ。な、シルヴィス?」

「うん、僕、ジークさんと一緒に事件の犯人を見つけ出せるように頑張るよ!」

「ジークちゃん、シルヴィスちゃん、ありがとう。何か事件解決に役に立つ情報があれば、お知らせするわね・・・・・・そういえば、ブリジットは、白い服を着た女性が鍵を握っていると言っていたわね?」

 話を振られたパートナーのブリジット・パウエル(ぶりじっと・ぱうえる)は、自信たっぷりに言った。

「その通り。謎は全て解けたわ。その白い服を着た女は、人身売買組織がターゲットを探す為に学園に送り込んだエージェントね。狙われるのが美少女ばかりというのもその事実を裏付けているわ。女が姿を消していない以上、まだ少女たちも近くに監禁されていると思うのよ。」

「そ、そうなの?」

「ええ、だからここは私の出番でしょ! 舞だと、そのまま誘拐されちゃいそうだから、私が囮になって、潜入するから」

 ブリジットは、そう言うが早いか、飛び出していった・・・・・・。

 誘拐犯に捕まらなければ、おそらく潜入に成功したのであろう。

 ・・・・・・後日、ブリジットの話を聞きつけた鬼崎 洋兵(きざき・ようへい)が、橘 舞のところへやってきた。

「キミのパートナーが立てた推理は外れだったようだぜ。あれは、人身売買のエージェントなんかじゃない。いってみれば、雪女だよ」

「雪女ですって!?」

「そうなんだ。おじさんもこの事件は気になってね。白い着物を着た女性の正体を見てやろうと思って、マリエルに頼んで囮になってもらったんだ・・・・・・マリエルも美少女だから、きっと犯人も食いつくはずと踏んだのでね」

「なるほど」

「で、放課後、マリエルに一人で出歩いてもらって、おじさんは付かず離れずの距離を保ちながら見守っていたのさ。そうしたら・・・・・・」

「そうしたら?」

「出てきやがったのさ、雪女が。そいつは、マリエルに吹雪を吹き付けると、そのまま連れ去ろうとした。幸い、すぐに俺が飛び出して行ったんで、事なきを得たけどね」

「ということは、やっぱり白い着物の女性の噂は本当だったんですね」

「ああ、間違いない。おじさんがこの目でしかと見たからな」


※ ※ ※


 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)も、自ら囮となって潜入を考えているひとりだった。

「マリエル、私、囮に立候補するよ。だって、いつも仲良くしているマリエルを危険な目にあわせられないからね。アイドルとしての魅力で、犯人を誘き寄せちゃいます。」

 こういうと、美羽は放課後の校舎を後にした。

 マリエルは、心配そうな、でも、うれしそうな表情で、美羽の後姿を見守っていた。

※ ※ ※


 事件の解明に向けて、組織的に動くグループがあった。

 名前は【光刃武装・百花繚乱】。

 メンバーたちは、各々役割を持ち、内部班・外部班に分かれて効果的に動こうというものだ。

 内部班のリアトリス・ウィリアムズ(りあとりす・うぃりあむず)は、シスター服を着ての参戦。その下には、白の執事服を着用している。

 また、リアトリスの携帯電話には、小型探知機が装着されている。

 これは、外部班の飛鳥 流奈(あすか・りゅうな)に、自分の居場所を知らせるためだ。

 もちろん、犯人にそれと察知されないため、探知機は触れてもわからないようにしてある。

 パートナーのモナルダ・ヴェロニカ(もなるだ・べろにか)も同じくシスター服姿。こちらは、蒼空学園の制服を下に着用。

「モナルダ、僕たちは、犯人にわざと捕まって、アジトに潜入しようと思ってるんだ。それで、今までに囚われた女の子たちの状況を調べよう」

「オーケー。あたいはリアトリスの援護をするよ」

 栂羽 りを(つがはね・りお)サバト・ネビュラスタ(さばと・ねびゅらすた)も、内部班のメンバーである。

「じゃあ私は、わざと捕まるんじゃなくって、サバト兄ぃと一緒に犯人のアジトへこっそりと潜入するね。で、つかまった女の子たちがいる場所の構造がどうなっているかを調べて、脱出ルートを確保しまーす」

「俺は、りをと一緒に調査のサポートをするぜ」

「・・・・・・でも、もし私が途中で捕まっちゃったら、大人しく他のみんなと合流かなぁ? ・・・・・・って、そうならないようにがんばらなきゃっ!」

 リアトリス・ウィリアムズは、にっこりとりをにエールを送る。

「大丈夫だよ、りを。君なら捕まったりしないよ」

「ありがとう。リアトリス」

※ ※ ※


「何!? カリンがいなくなったって?」

 ソルジャーの鬼崎 朔(きざき・さく)は、激昂していた。

「きっと、今話題の連続誘拐事件に巻き込まれたに決まっている! ・・・・・・自分の可愛いカリンをさらうとは。誘拐犯、許さん!」

 朔の様子を隣で見ていた尼崎 里也(あまがさき・りや)は、戸惑っていた。

 実は、ブラッドクロス・カリン(ぶらっどくろす・かりん)を犯人につかまるように仕向けたのは、ほかならぬ里也だったのだ。

『こういう事件は早めに解決した方がいい。かわいいものを愛でるには、犯人のような存在は消しておかないとな』

 ・・・・・・そう思って、里也はカリンに内部潜入を頼んだのだ。

 しかし、この作戦は里也の独断専行で、鬼崎 朔や、麒麟宮 文貴(きりんぐう・あやき)スカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)には知らせていなかった。

『これはまずいことになりましたな。朔に本当のことを言える状況じゃないし。それに内部から誘拐犯を追い詰めようにも、具体的に何をするか、まったく決めてなかったから・・・・・・』

 里也の失態を知らない朔は、怒りのやり場を探している。

「これはきっと、パラ実の生徒がやったに違いない! 誘拐犯と思しきパラ実生をみつけて、半殺しにしてやる!」

「ややっ、ちょっと待って、朔。なにも、パラ実生が誘拐したとは決まっていないだろう。ここはひとまず、スカサハや文貴が来るまで待とうじゃないか」

「里也、なぜとめる! 文貴が来るまで待てだと! ・・・・・・嫌だ! 今すぐ自分は、カリンを誘拐した奴を半殺しにするんだ!」


 朔と里也がすったもんだのやりとりをしていると、そこにようやくスカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)がやってきた。

「ああ、スカサハ。待っていたよ。これこれこういうわけで朔が怒っちゃって・・・・・・」

「ええ? カリンお姉さまがさらわれたのでありますか!」

 スカサハ・オイフェウスは、怒り狂う鬼崎 朔と、なんとなくどこ吹く風で頼りなげな里也を見比べて、少々不可解な気がしたものの、事態の収拾に乗り出した。

「朔様、落ち着いてください。ここはスカサハが頑張る他ないであります! ・・・・・・でも、スカサハは考えるのが苦手なので、文貴様の言うことを聞くであります!」

 そういうと、スカサハは携帯電話を取り出し、麒麟宮 文貴を呼んだ。

 文貴はやってくると、朔に声をかけた。

「朔さん、大変なことになったね。パートナーの身を案じる気持ち、よくわかるよ。でも、下手に動いて鬼崎さんまで被害に遭ったら、元も子もないじゃないか。だから、本当の犯人を探してカリンを助けよう。僕も協力するからさ。この状況を見て、僕も流石に見て見ぬふりはできないしね」

 青龍寺 葉桐(せいりゅうじ・はぎり)白虎洞 紗々(びゃっことう・さーしゃ)もすかさず援護射撃。

「自分も! スカサハ殿や鬼崎殿の仲間が被害に遭っているのを、黙って見ているは武人の名折れにありますっ! それに、スカサハ殿とは、同じ護衛役として、シンパシーを感じるでありますから!」

「しゃあない・・・・・・お前らが・・・・・・文貴が本気にやるんなら、な」

 これを聞いて、ようやく鬼崎 朔は落ち着きを取り戻した。

「わかったよ、文貴たちがそういうなら、一緒にカリンを探そう。協力に感謝する」

 ようやく収拾した事態に、尼崎 里也がホッと胸をなでおろしたことは言うまでもない。

 しかし、里也の横で紗々がボソリとつぶやいた・・・・・・里也の顔を見ずに。

「・・・・・・ホンマに、他人事なんやぞコッチ・・・・・・」

「ギクッ」

※ ※ ※


 天城 一輝(あまぎ・いっき)も、パートナーのローザ・セントレス(ろーざ・せんとれす)に誘われて【光刃武装・百花繚乱】の内部班に参加することにした。

 一輝には、囚われた生徒たちを救助する妙案があった。

「ローザ、おまえにこれを渡しておく」

「これは?」

「プリペイド・サンドイッチだ」

「???」

 ローザは、一輝から受け取った紙包みを見て、怪訝そうな顔をしている。

「これは少女たちを救助するときに使うものだ。一見すると、ただのプリペイドカードだが、中に剃刀の刃を仕込ませてある。ほら、ここ。横の切り込みを見て」

「あ、ホントだ」

「このプリペイト・カミソリを、普通のプリペイト・カードでサンドイッチにするんだ。さらに紙で札束のように巻けば、カミソリの刃は隠れて見えなくなる」

「なるほどー、すごいですわ。さすが一輝。じゃあ私もひとつ・・・・・・」

 ローザはそういうと、プリペイド・サンドイッチを包んでいる紙に
「マジケット用。今使うの? 新刊買えなくてもいいの?」
と書き出した。

「えへへ、こうすれば、もし犯人に見つかったとしても、心ある人なら見なかった事にしてくれる筈でしょ」

「それはどうかなぁ・・・・・・?」

「ともかく、私は打ち合わせどおり、放課後、ひとりで帰るわね・・・・・・」

 ローザはそういうと、受け取ったプリペイド・サンドイッチを羽に隠し、出発の準備を始めた。

 コレット・パームラズ(これっと・ぱーむらず)は、ローザの後姿にエールを送った。

「ローザ、気をつけてね。あたしは潜入できないけど、学園でお茶を用意しておくから、帰ってきたら一緒に飲もうね」