リアクション
※ ※ ※ 愛美を元気づけたいと考える生徒たちもいた。 松永 亜夢(まつなが・あむ)も、レイナ・ミルトリアと同じく、愛美がこの事件に興味を示さないことに疑問を抱いていた。 「なにか悩みを抱えているのかな? あたしが相談に乗ってあげてもいいんだけど。ねえ、未沙さん、あなた愛美と仲がいいのよね。最近の彼女のこと、どう思う?」 朝野 未沙(あさの・みさ)ももちろん、普段は友達想いで優しいはずの愛美に、ただならぬ異変を感じていた。 「本当に、愛美さんどうしちゃったんだろうね? ・・・・・・これはあたしが一肌脱いで、愛美さんを人肌の温もりで癒してあげるしかないかな? うん、待ってて愛美さん」 朝野 未沙はこう言うと、愛美の席に行って話しかけた。 しかし、笑顔で話しかける未沙の目を、愛美は見ようとしない。 「あたしが愛美さんに新しい世界を見せてあげるからね!」 しびれを切らした未沙は、こういうと愛美の体に抱き付いた! 「ちょっと、やめてよ!!」 愛美は怒って席を立ってしまった。 人肌作戦は、逆効果だったようだ。 ※ ※ ※ 酒杜 陽一(さかもり・よういち)も、愛美を心配して声をかけてみたが、取り付く島がなかった。 「今の愛美に正面切っての質問はムリだな。マトモな回答は期待できぬ。ここは密かに彼女の行動を見張るしかないな。あ、そうだ、参考までに、マリエルに雪女の昔話の内容を訊いておこう! 何かの役に立つかもしれないし」 ※ ※ ※ 宮坂 尤(みやさか・ゆう) も、絵に描いたような天真爛漫少女の愛美が、最近鬱ぎ込んでいるときいて、気になっていた。 尤は昼休みに愛美をお茶に誘うと、彼女が鬱いでる理由を聞いてみた。 「愛美さん、最近鬱いでるみたいですけど、何か悩みでもあるの? 今の愛美さんは、初めてお会いした時の愛美さんとはずいぶん違うようですが・・・・・・もしかして運命の人関係ですか?」 「・・・・・・」 「やっぱり、そっちの悩みなんだね?」 「私、可愛くないから・・・・・・」 愛美はそういうと、プイッと立ち去ってしまった。 「あれ? ちゃんと対話しないうちに行っちゃった。本当なら、放課後に屋上で励ますつもりだったのに、失敗だなぁこりゃ」 ※ ※ ※ 霜月 帝人(しもつき・みかど)は、パートナーの鏡 氷雨(かがみ・ひさめ)と一緒に蒼空学園の校舎にいたところ、落ち込んだ様子の女子生徒を見つけた。 「氷雨、あの人元気なさそうだね。ちょっと気になるなあ」 「え、だれだって? あ、あの人は愛美さんじゃないか」 「氷雨の知り合いなの?」 「うん、ちょっと声をかけてくる」 そういって歩き出す氷雨の後ろを、帝人もくっついていった。 「愛美さん、どうしたの?」 挨拶する氷雨の横で、帝人はお辞儀をした。 「そういえば愛美さん、冬休みにスキーに行ったんだってね。どうだった?」 「別に・・・・・・普通に滑ってきただけよ」 「確か、その場所は雪女がでるって噂のとこですよね、大丈夫でしたか?」 帝人が横から心配そうに聞いたが、愛美は 「雪女? そんなの知らないわよ」 と相手にしない。 「はぁ、ダメだったね。何か誘拐事件の手がかりが聞きだせると思ったんだけど・・・・・・」 このやりとりを見かねたレクス・アルベイル(れくす・あるべいる)も、彼らをフォローするように言った。 「確かに、あの様子じゃ訊き出すのは難しいだろうな。俺も、斜に構える愛美の様子が引っ掛かるぜ」 霧島 春美(きりしま・はるみ)もこれに同調して言った。 「彼女には、なにか言えないわけがあるのかな? 今はとにかく、彼女のまわりを注意して、彼女が危なくなったら助けてあげられるようにしようよ。もしかしたら、これをきっかけに友達になってくれるかもしれないしね。お互いがんばろう」 結局、愛美から直接何かを聞き出そうという生徒たちの試みは、あっけなく潰えたのだった。 こうなったら愛美を追跡するしかない。生徒たちの思惑は一致した。 |
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