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【十二の星の華】変心のエメネア

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【十二の星の華】変心のエメネア

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第3章 説得、そして…

「女王器の情報は、あたしがティセラさんのために持ち帰るって決めているんですーーー!!!」
 学生たちを見回しながら、エメネアはそう口にして、鞭を構えた。
 集まった学生たちもまたそのエメネアを止めるため、応戦するためにそれぞれの武器を構え始める。
「ちょおっと、まったー! まずはエメネアの話を聞こうよ」
 叫ぶように大きな声で言いながら、学生たちとエメネアの前へと駆けつけたのはメイコ・雷動(めいこ・らいどう)とパートナーのマコト・闇音(まこと・やみね)だ。
 それぞれが武器を構えるだけで、まだ振るおうとしないのを確認してから、メイコは口を開く。
「ティセラって、そんなに女王にふさわしい人なの? あたしは、十二星華である彼女がどうして立候補するのか、どんな人なのか知らない。あんたが気持ちを変えるくらいなら、その素晴らしさを皆にも教えてくれよ!」
 女王候補宣言のときのことも、エメネアが連れ去られたときのことも、メイコは話でしか知らない。
 だからこそ、ティセラがどういう人物であるのかが知りたいのだ。
「ティセラさんは素敵な方なのです。複数人相手に、1人で戦う術も持っているくらい力だってあります。そんなティセラさんこそ、女王に相応しいのですーー!!」
 言うなり、エメネアはメイコに向かって鞭を振るう。
 けれど、その間に入り、メイコの代わりに一撃を受けたのは、マコトであった。
「ここには情報はあるかもしれないが女王器はないのだろう? 休戦して共に探索しないか? 情報は共有する。焦らずとも、女王器は自ずと相応しい者が手にするはずであろう?」
 マコトは真っ直ぐとエメネアを見つめて告げる。
「そう口にはしても共有するつもりなどないのでしょう? だから、貴方たちには黙ってもらって、あたし1人で探すのです!! ティセラさんに女王となってもらうために……!」
「そうねぇ、女王器を手に入れるのはティセラよねぇ。こんな奴らに渡しちゃだめよねぇ」
 強く言うエメネアへと同意する声をかけたのはメニエス・レイン(めにえす・れいん)だ。隣には、パートナーのロザリアス・レミーナ(ろざりあす・れみーな)も居る。
 空飛ぶ箒に乗って天井すれすれを移動してきたメニエスは最上階に辿り着くと箒から降りて、エメネアの言い分を聞いていた。
 エメネアへと歩み寄ると、彼女の耳元へ唇を寄せる。
「あいつらはティセラが手に入れる女王器を奪おうとしている敵よ。今ここで倒しておかないといけないわ」
 囁いたメニエスの言葉に、エメネアは小さく頷く。
「一緒にやっつけちゃいましょ」
 言うなりメニエスは氷のつぶてを涼司へと向けて放った。咄嗟ながら涼司はその一撃を避ける。
「遊ぼうよー」
 空かさず、ロザリアスが涼司へと近付いて、彼の腕へと自分の腕を絡ませた。
 武器を持たぬロザリアスであるが、いきなり攻撃されたことを警戒してか、早々隙は見せないようだ。
(巫女として自由のない生活をしていたエメネアは、きっと洗脳されて不満なく良い子を演じていたのですね。きっと今の彼女が真の姿なのでしょう)
 そう思いながらこくりと1つ頷いたガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)もエメネアの傍へと近付いていく。彼女を支援するつもりだ。
「祝福を貴女に――」
 ガートルードは祈るように告げて、エメネアを祝福する。
「ありがとうございますー?」
 自分を支援する学生たちが現れたことを不思議そうに首を傾げながらも、その祝福をエメネアは受け入れる。
(クイーンヴァンガードの学校での傲慢な態度を見てると……あの人たちに女王器渡したら余計増長しそう。それだけは阻止しないとね。蒼空学園の平穏のためにも……ね)
 女王候補だの女王器だのには興味のないリース・アルフィン(りーす・あるふぃん)だが、クイーンヴァンガードに対しては不満を持つ。
 女王器の情報を求めてやって来た学生の中には、そのクイーンヴァンガードとしてやって来た者も居るだろう。
 リースは敢えてエメネアへと近付くのではなく、エメネアを止めようとする学生たちに混ざったまま、決意する。
 学生たちを援護する振りして間違うことで、エメネアを支援しようと――。
(例え洗脳されていたとしてもエメネアの根の部分は変わってないハズ……)
 やや自信無さそうにそう思いながら、ミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)はエメネアの方へと進み出る。
「エメネア、私、この遺跡の管理人を名乗る幽霊にあったぜ」
「それはすごいですねー」
 ミューレリアの話し出す言葉に、関心を示すエメネア。
「どうやら、この遺跡には女王器が悪用されないよう、特殊な封印がしてあるらしいんだ。そして、それを解けるのは十二星華の力だけらしい」
「……この遺跡には、女王器の情報はあれど、そのものはありませんよー?」
 黙って耳を傾けていたエメネアであるが、話の中に女王器があるような言い回しを聞くと、不意に冷静そうな顔になって告げる。
「何か、騙すつもりでしたか?」
 訊ねながらエメネアは笑むと、ミューレリアへと鞭を振るった。