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【十二の星の華】変心のエメネア

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【十二の星の華】変心のエメネア

リアクション

「正気に戻すだなんて、そうはさせないのだよ」
 様子を窺っていたシャノン・マレフィキウム(しゃのん・まれふぃきうむ)が呟きながら、物陰から出てくる。すぐさま酸性の濃い霧を発生させて、エメネアと己の周辺を取り囲んだ。
 マッシュ・ザ・ペトリファイアー(まっしゅ・ざぺとりふぁいあー)が従えた毒蛇6匹を濃霧の周りに配置させ、他の学生が近づけないようにした。マッシュ自体も構えた高周波ブレードから爆炎を放つ。
「何なんですか!?」
 急に現れたシャノンに、エメネアは怯えた様子を見せる。シャノンは彼女へと近付いて、唇を奪おうとするけれど、それは避けられた。仕方なく、彼女の首筋へと噛み付く。
「っ!?」
 血を吸うことで見せる幻は、力なく助けられてばかりだった頃の彼女の姿、だ。
 そして、ティセラについていくことで手に入れた今の力を振るう姿。
「彼女へ恩返しのために、女王器を集めるべきだろう?」
 訊ねるように言うシャノンの言葉に、エメネアは頷いた。
 酸の霧が晴れると、再び、鞭をしっかりと握っているエメネアが現れる。
「エメネアさん……」
 セラがマッシュの放った毒蛇を倒して出来た場所からフィルが駆け寄る。
 『ともだち』という言葉に揺らいだエメネアはもうそこには居ない。
 フィルへも容赦なく、エメネアの鞭が振るわれた。
「きゃあっ!」
 間に合わず、フィルは打たれてしまう。それに駆け寄ったセラは、どうにか鞭を取り落とさせることは出来ないかと、エメネアを見据えた。
「説得が無理ならば、気絶させてでも連れ帰ればいいのです。説得は後だって出来るでしょう?」
 告げる浅葱 翡翠(あさぎ・ひすい)は、学生たちの後方から構えた星輝銃で威嚇するように射撃を行う。
 怪我はさせたくないというのが翡翠の思いだ。実際気絶させるときには武器による攻撃ではない手段で気絶させたいと思っている。
「こちらが届かない位置から攻撃するだなんて、卑怯ですーーー!!!」
 翡翠に届かなくとも、周りの者へは届くと、エメネアは鞭を振るう。
「けれど、どうにかしてこの場で助けられないのか……」
 パートナーの天津 輝月(あまつ・きづき)がエメネアの説得に専念できるよう、周囲へ警戒を行いながら、ムマ・ヴォナート(むま・う゛ぉなーと)がぼやく。
「ティセラこそが女王に相応しい。それは本当に貴女の考えですか?」
 エメネアが振るう鞭を避けながら、輝月は問いかけた。
「もちろん、そうですよ!」
 頷くエメネアは自信がある、といった顔で答える。
「本当に?」
「本当です!」
 しつこく訊ねると、エメネアは声を荒げる。
 その隙を突いて、輝月は手首へと衝撃を与えるけれど、そう簡単に鞭を手放そうとはしない。
「落とそうたってそうはいかないんですから」
「では、これは……?」
 手首へと注意が向いている隙に、輝月は彼女の額へと口付けた。
「額のキスは友情のキス……ですよ」
「……友情など……!」
 一瞬、驚いたエメネアであるが、すぐに彼へと鞭を振るう。
 それを避け続け、再度、輝月は鞭を奪う機会を見計らった。
 ルイス・マーティン(るいす・まーてぃん)は真正面から盾を構えて、エメネアへと近付いていく。
 エメネアは近付いてくるルイスが何を考えているのかと疑いながら、彼に向けて鞭を振るう。
「お姫様の目を覚ますためには、王子様や王女様からのキスが必要だと、全世界の法則で決まってるわけだが、とりあえずキス……、しようか……」
 ルイスへとエメネアの気が取られているうちに円がそう言いながら近付いてきた。
「そのとおりですぅ」
 明日香も頷いたかと思えば、目映い光で目をくらまさせる。
「っ!」
 エメネアが思わず目を瞑っている間に、円と明日香はエメネアの左右に立ち、彼女の肩を抱いた。
「さぁ目をつぶってお姫様、キミの好きなバーゲンの如く唇を安売りするといい。さぁ、悪い夢は終わりだ、ボクの腕の中で目を覚ますんだ」
 円が唇を奪おうと迫ってくるところにエメネアは首を振って、拒否する。
 すると反対側から明日香も唇を奪おうと迫ってきた。
「安売りは良くないんですーー!!!」
 叫び、エメネアは2人に向かって鞭を振るった。
「……アンタら。自分の欲望に忠実過ぎやしませんか」
 楽しそうだからと2人のフォローに回るために気を引き付けたルイスであったが、その2人の様子に頭を抱えた。
「そんなことはない。ほら、エメネア……」
 鞭で打たれても負けじと唇に迫る円と明日香。
「いやですってばーーーー!!!」
 先ほどより強く鞭を振るって、エメネアは2人を退ける。更に振るわれる鞭をルイスが間に入って、盾で防いだ。
「……君がエメネアか……ふむ、可愛い!! ぜひとも、君と仲良くなりたいな!」
 最上階へと上がってきて、エメネアの姿を確認するなり、鬼崎 朔(きざき・さく)は声を上げた。
 ルイスの盾へとエメネアの攻撃が集中している隙に、朔は彼女へと飛びつこうとする。
「安売りはしないって言ったばかりですー!」
 飛びつく朔を回避して、エメネアは攻撃する相手を彼女へと変えた。
「……む、抵抗するか」
 避けられ、朔はどうしたものかと考える。
 奈落の鉄鎖を作り出し、エメネアを捕らえようとするけれど、鉄鎖にそこまでの威力はなく、捕らえることは出来ない。