蒼空学園

リアクション

（１０）１５：３０　事件後の風景

　プールサイドにいた校長は脅迫文を眺めていた。実は脅迫文は２枚存在し、幻の２枚目には「犯人はこの中にいる！」というセリフと猫の足跡らしきものが付いていた。もしかしたら校長はそのセリフを言ってみたかっただけなのかもしれない。
「環菜は普段から働きすぎなんですよ、休みなんですし泳ぎましょう気分転換になりますよ？」
　さりげなく脅迫文を隠して顔を上げると刀真と月夜がそばにいた。
「環菜、一緒に泳ごう」
　くいくいと手を引っ張る月夜に対し、校長は水着にはならなかったがプールサイドに近付いて生徒たちの様子を見ることに決めたらしい。
　のぞき部の部員たちは例外なくお仕置きの刑に処された。（むだに）あつい部と美少女戦士部による必殺技の餌食になり、お仕置き終了後には全員ぷすぷすと黒こげ状態で煙を上げていたとか。


　涼司が今回の事故に対し無実であることは、メガネを盗まれた件も含めて裏を取った凶司がネット内で広めてくれたらしい。しかし、道を歩くだけで女子が嫌な目を向けた事実、もうこいつが犯人でいいや的な空気は彼の心に傷を負わせた。花音は落ち込んだ涼司をはげまそうとプールサイドの隣にちょこんと腰かける。女子更衣室に入った事実に対して怒ってはいるが、やっぱりこの人を支えるのはあたしだけだな。そんな風に考えているようにも見えた。


　プールサイドわきのテーブルでは自由にくつろいでいる人々の姿もあった。
「オチが甘い！！」
　雪華はハリセン片手にバタバタしている。先ほど犯人の寛太をばしばし叩いていたのだが、くらいばかりなので飽きてしまったようだ。
「蒼空学園、御神楽環菜。お甘いことで・・・」
　千代はシャンバラ教導団法務科への報告書を作成しながら、先ほど厚意で神楽坂が淹れてくれた緑茶を飲んでいる。
「ものすごく疲れました」
　そう呟く神楽坂の前ではレイスがバシャバシャと泳いでいた。


　エメはどこから持ってきたのか、男子更衣室の窓に無理やり付けたブラインドの隙間からプールの様子を見てにっこりしていた。
「ミミ様、おやつの発表ですよ。今日は紅茶風味のスコーンにバニラ風味を効かせた苺ジャム。ブルーベリージャム、甘さ控え目生クリームを添えたものを用意しております」
　ミミはバスティアンと一緒にねこじゃらしで遊んでいる。今行くよー！　という元気な声が２人分の足音と共に近付いてきた。
「ミミ殿、私が書いていた刑事小説の一部を知りませんか。爆弾犯が警察に宛てて予告文を書いた辺りにゃのですが見当たらにゃいのです」
「えー、知らないよー？」
　バスティアンは残念そうにしていたが、２ページだからまぁいいか！　と自分もおやつをもらいに行った。



　おしまい