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温水プール爆破予告!?

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温水プール爆破予告!?
温水プール爆破予告!? 温水プール爆破予告!?

リアクション


(5)13:30 採暖室の喜劇

 宇佐木 みらび(うさぎ・みらび)セイ・グランドル(せい・ぐらんどる)と共に、比較的人のいない採暖室で爆弾や怪しい人物を探していた。というより、本当はたまたま来ていた蒼空学園で、たまたま温水プールのほうに迷ってしまい、たまたま爆弾騒動が起きてしまっただけのようだ。
「セイくん、気合い入れて探しますよ!!」
 気合いにあふれ、普段と様子の違うみらびに対してセイは少々驚いていた。
「宇佐木、なんかあったか?」
 みらびは振り向くと拳を天高く着き上げ、高らかに宣言した。
「この事件はうさぎが解きます!おばあちゃんの名にかけて!」
「おばあちゃん、魔法使いじゃねえか……」
「だ、だって日本にいたころは探偵さんのテレビが大好きだったんです! 魔法使いにもなりたいけど、探偵さんにも憧れているんです!」
 キラキラとした目でいわれてしまい、セイはウグッと詰まってしまった。
「だからお願いしますよワトソン君〜」
「だれがワトソンだ!」
 セイはみらびの頭をボカリと殴った。その横をスタスタとエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)が歩いている。ちょうど迷っていたのもあり、2人は彼に声をかけることにした。少々威圧的な外見のエヴァルトに、みらびは戸惑っているようだ。
「あ、あのぅ……」
「ん? 他校生か。この辺は危険だぞ」
 悪い人ではないと思ったが、セイはみらびを庇うように前に出た。
「爆弾騒ぎがあるらしいが、詳しいことを知らないか?」
 セイの問いかけにうぅむと考えると、エヴァルトは重い口を開いた。
「この学校には、残念なことにのぞき部が存在する」
「ほぇ?」
「は?」
「続けるぞ。
 温水プールの更衣室は、奴らにとって冬における絶好の狙い目だ。
さらに、プールが爆破されると水泳が出来ない。それで得するのは誰か?」
 淡々と推理を展開するエヴァルトだが、みらびとセイはのぞき部という存在に気圧され気味のようだ。
「犯人像は『非のぞき部員で水泳が嫌いで、普段はおとなしいが色々溜め込んでそうな女子生徒』に絞られるッ!
 …でもあくまで俺の推理だし、参考程度に」
 みらびとセイは目を合わせるとお互いに首をかしげた。
「じゃ、じゃあ爆弾は本当にあるかもしれないんですね? 心当たりのあるところを探さないとっ」
「いや、俺そーゆーの苦手だからパス!!」
 エヴァルトは一応、女子更衣室を調べようかと思っていたのだ。しかし調べに来た人があまりにも多いので採暖室に来たらしい。


 3人が喋っているとき、爆弾もどきをいろいろな所に置いていた真菜華が通りかかった。
「あちゃー、そろそろ人が集まっちゃったかな?」
 真菜華は3人のところに行くと慌てている風を装って助けを求めた。
「ねぇねぇ、大変なんだよぅ! さっきこの部屋の植木鉢の裏に嫌なにおいのするゴミ袋を見つけたんだよ! 男の人が置いて行ったみたい。あたし、先生とか呼んでくる!」
「ええっ、セイくん。どうしましょう〜!」
 エヴァルトは少し考えた後、みらびとセイにここを見張っているように指示を出した。真菜華はそのまま逃亡してしまい、誰にも捕まらずに済んだようだ。
「ふわああ、よく寝たぁ」
 採暖室の奥からは校長の命令をさぼって先ほどまで眠っていた一が現れた。みらびとセイはぎくりとした様子で立っている。
「おい、悪いがしばらくここで待機しててくれ。爆弾犯が近くにいるらしいんでな」
「ん? いや、俺もそれ校長に聞いて知って……」
 一が言い終わらないうちにエヴァルトが援軍を連れて戻ってきたようだ。女子更衣室から美少女戦士部の面々を連れてきたらしい。透乃と女装した泰宏が一番最初に訪れた。
「あわわわーっ!?そこどいてくださいですーっ!?」
 転倒しかけたファイリアを一が支えたが、ありがとうございますですー!と叫んですぐに透乃のもとに向かっていった。ウィノナ、ウィルヘルミーナ、刹那もパタパタと集合し、最後に隼が到着した。
「び、美少女戦士部が来た!!これでもう大丈夫っスね!」
 刹那のセリフを合図にあちこちから効果音が聞こえてきた。どこからかドライアイスのような煙が出てきて、採暖室をもくもくとおおっている。その白い煙の中から黒い影が躍り出てきた、急展開についていけない一、みらび、セイの横にエヴァルトが落ち着いた様子で歩いてくる。
「適当に呼んだら、彼らが来てくれたんだ」


「不埒な企みで不幸に陥れる悪党を魔術でお仕置き! ハッピー☆シスターズ長女【ハッピー☆ウィッチ】! 参上っ!」
「大騒ぎさせて不幸にする悪い人は綺麗にお掃除! ハッピー☆シスターズ次女【ハッピー☆メイド】! です〜!」
「不幸を与えようとする悪意から人々を守り抜く幸運の騎士!ハッピーシスターズ三女【ハッピー☆ナイト】! ……うう、はずかしいです」
 続いて次の部員が名乗りを上げる。
「熱い拳に想いを乗せて! 殴るっ、燃やすっ、ぶっ壊すっ!! 烈火の拳姉(れっかのけんし)、ここにさんじょー☆」
 カラフルな光をまといながら、一瞬で左右非対称の色っぽいドレスに変身する。透乃ちゃんが烈火の拳姉か……それなら! 泰宏も他の美少女戦士部部員たちに圧倒されながらも名乗りを上げた!
「刻みし業は守りの極意、その身に宿るは不屈の闘志。不崩の壁弟(ふほうのへきてい)、いくぜ!
 ……って、意外とすらすら名乗れちまったなぁ」
 一瞬でバトルスーツに変身し、女装も解除された泰宏はそれらしい決めポーズを作った。隼はチャイナドレスに着替えていたため少し遅れたらしい。スリットを強調したポーズを作って部員に合わせた。
「磨きし技は光の奥義、槍を振るうは人のため。紫電の騎士、ここに推参!」
 派手な演出がなされたが敵は出てこない。
「あ、あれぇ、敵はどこですー?」
 困った様子のファイリアに対して一はポリポリと頭をかいた。
「いや、女の子が1人ごそごそやってたくらいだよ」
「騙されたようですね……まぁ、本当に爆発するよりいいですが」
 隼は苦笑しながら爆弾もどきの場所を探すと、中から大量の醤油が入ったビニール袋が出てきた。透乃は地団太を踏んで悔しがっている。
「もー、犯人が見つかったらタダじゃおかないんだから!!」
 その場にいた全員は念のため。全員で爆弾探しと愉快犯対策で15時まで採暖室にいることにしたようだ。温かい部屋では昼寝をするものもおり、和やかな午後が過ぎて行った。