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【2020春休み】パーティへのお誘い

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【2020春休み】パーティへのお誘い

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序章


・パーティ前日のこと


「ふんふんふ〜ん♪」
 鼻歌交じりに上機嫌な様子で、エミカ・サウスウィンド(えみか・さうすうぃんど)はコンサートと料理コンテストの参加者、そして連絡があった運営スタッフ希望者の名簿をまとめていた。
「たっくさん来るんだねー、楽しみ楽しみ〜」
 彼女がいるのは蒼空学園大学部内にある司城 征の研究室だ。彼が不在の時は決まってここを私室化している。
 その時、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。
「どーぞー」
 エミカが答えると、一人の男が入って来る。
「司城せんせ〜い、これって会費いくらですか……あれ、先生は?」
 黒脛巾 にゃん丸(くろはばき・にゃんまる)は『パーティへのお誘い』のチラシを片手に、研究室を見渡した。しかし、司城の机に腰かけているエミカ以外の姿は目に入ってこない。
「先生ならいないよー。四月から空京大学の客員講師も兼任するからって、しばらく向こうに行ってるって。あ、会費ならタダだから心配いらないよん」
 笑顔のままで答えるエミカ。
「へぇ、タダなのかい? それよりこれ明日になってるけど、会場設営は終わってるんだよね……?」
「ん、まだだよー」
 パーティの規模を考えれば前日から準備をしていて然るべきなのだが、まだのようである。
「受付は設置したんだよね……?」
「そんなのすぐ終わるから大丈夫〜」
 にゃん丸の顔に戸惑いの色が浮かび始める。
「会場の警備は万全なんだよね……?」
「えー、必要ないよー。いざという時はみんなに手伝ってもらうから。コンサートや料理コンテストの参加者には戦い慣れてる人も多いしー」
 非常に楽観的な考え方をしていた。
「あ、いざとなったらあたしがぶっ飛ばしに行っちゃお〜っと。いいストレス解消になるかもー」
 むしろトラブル大歓迎、といった感じでエミカは心躍らせているようだった。
(ダメだこの娘……早くなんとかしないと)
 ぼそりと呟くにゃん丸。
「……ところで、運営スタッフはまだ募集してるかい?」
 にゃん丸はスタッフを買って出た。
 少し前には有志による合同歓迎会、薔薇の学舎主催の新歓&卒業パーティ、百合園女学院でも新しく転入してくる人のために歓迎お茶会と、パーティ系の催しが行われており、いずれも好評だったらしい。
 今回は主催者が蒼空学園の生徒、となればパーティがグダグダになってしまうと、蒼学は駄目学校の烙印を押されてしまう。エミカの適当さを見ていると、それが現実になりかねない。彼が手伝いを申し出た背景にはそのような事実があったのである。
 無論、エミカはそんな事など露も知らないためにヒマそうにしていたのだが……
「うん、お手伝い大歓迎だよー。ありがと」
 ニコニコと微笑みながら、エミカはにゃん丸を見上げていた。そのまま彼女はおもむろに司城の机にあった書類の束を彼に渡した。
「じゃあ、はい」
「何これ?」
 いきなりの事に目を丸くした。
「そこにあるコンサート出演者に集合時間を連絡してちょーだい。ケータイからメールで一斉送信すればすぐ終わるよ」
 早速仕事を押し付けられたにゃん丸であった。
「ちなみにスタッフの集合は明日の朝六時だよ。遅刻したらコンサートの休憩時間中にステージ上で恥ずかしい罰ゲームだから、よろしくー!」
 彼は研究室に顔を出した事を心底後悔した。