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御神楽埋蔵金に翻弄される村を救え!

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御神楽埋蔵金に翻弄される村を救え!

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第五章 擬似

 季節も場所も外れている落雷や氷嵐が戦場を飛び交う。
 その殆どが綾乃へ向けられていたのだが、今や近づくものは皆敵だ、と言わんばかりに連撃を放っている。
 立て続けに攻撃を放つイーオンの後ろでは、セルウィー・フォルトゥム(せるうぃー・ふぉるとぅむ)が膨大に消費されていく精神力を補填していた。
「イオ、お気を沈めてください」
 攻撃の最中、当然反撃も受けているが、イーオンはそれを避けようともせずに落雷を生み出し続けている。
 セルウィーはイーオンに向かってくる銃弾を身代わりとなって受けていた。

「そのまま、もう少し頑張れますか!?」
 突然掛けられた声に、イーオンが視線だけを声の主に向ける。
 バリケードから飛び出してきたオルフェリア・クインレイナー(おるふぇりあ・くいんれいなー)は、傷を負うセルウィーを回復しながらも戦場の真ん中を凝視している。
「……行け」
 イーオンはそっけなく応えながら、断続的に放っていた氷嵐や落雷の方向性を絞る。開いた道の先には、傷ついた紫音達が居た。
「有難う御座います!」
 オルフェリアは真面目に礼をしてから、その前傾姿勢を基点に、猛然と駆け抜けていった。

「大丈夫ですか!?」
 戦線の中心。ならず者とバリケードの中心部で、囲まれるように戦闘をしていた紫音達を見て、オルフェリアが声を掛けながら傷を癒していく。
 オルフェリアに向けて攻撃を仕掛けようとするならず者達に牽制をしながら、紫音が応えた。
「問題ない、と言いたい所だが……正直助かる」
「お互い様ですよ」
 当面の回復を終えて周囲を見渡し、オルフェリアは不意に右目を抑える。
「……ほぇ? っと危なっ!」
 オルフェリアが瞳に刺すような痛みを覚えながら召還した不束 奏戯(ふつつか・かなぎ)は呼ばれて早々、血煙爪の餌食となりそうな所を間一髪で回避した。
「えっと……何かな?」
 引きつった笑いを浮かべる奏戯に、オルフェリアが現状をざっと説明する。その間にも飛び交う銃弾や刃が奏戯を容赦なく狙っていた。
 一通りの説明を手早く受けた後の奏戯が見せた表情は、もうそれはそれは達観したものだった。
(あ、あぁ……また、この変なタイミングなんだ)
 溜息混じりに俯いて、しばらく眉間に皺を寄せていた奏戯だったが、突然その肩が震えだした。そして、
「ま……埋蔵金なんて知るかよ! 返せ! 返せよ俺様の梅茶漬け!」
 と多少不可解な叫びと共に、ならず者達に突っ込んでいく。
 ――因みに、彼が梅茶漬けを食べようとした瞬間に召還された事は、この章とは何の関係も無いのである程度割愛させて頂く。



「何なんだ、ったくよぉ!」
 追い詰めたと思った敵が回復して立ち上がり、バリケードに近づけば落雷と氷嵐のオンパレード。
 更には戦場の真ん中で「梅茶漬け!」と叫びながら暴れまわる不可思議な敵まで出てくる始末。
 頼りにしていた綾乃は、この状況に見切りをつけて既にリーダーの下に退却をしている。
「ん? おい、あそこ……」
 正面から外れたバリケードに僅かな隙間を見つけた一人が、いやらしく笑いながら顎を上げる。
 都合の良い事に、何の攻撃も防壁も無い。
「よっしゃー! 埋蔵金は頂くぜぇー!」
 見た目に似合わず綺麗に一列に揃いながら、ならず者達がバリケードの合間を走る。
 が、その瞬間に最前を走っていたスパイクバイクが弧を描き吹き飛んだ。
 その後ろのバイクは横転し、バリケードに車体を埋めていく。
「一、二、三……四台か。思ったよりも少ないな」
 疾走するスパイクバイクのタイヤを狙撃した夜空が、スナイパーライフルを片手に、横転したバイクが重なり転がっていく台数を指折り数える。
 限定した箇所を通過するバイクのタイヤを狙って後続のバイクと同士討ちを狙う為に、皐月と共にわざと隙間の開いたバリケードを組んだ甲斐があった。
「だから、車間距離に注意って書いておいたのに。これだから人の忠告を聞かない連中は困るのだよ、全く」
 方向転換して狙撃を免れたバイクに向かって火炎を放ちながらオフィーリアが短く言い捨てる。
 後方から、バイクを降りて直接攻撃を仕掛ける者の足元を夜空が狙撃。足が止まった所を誠一が元居た場所まで蹴り飛ばす。
 皐月は、吹き飛んでいったならず者の事は気にせず、転倒して力無く起き上がるモヒカンの頭を愛用のギターで殴り倒していた。

「ちくしょう! ナメやがって!」
 バリケードに開いていた隙間がバイクの転倒で埋まった上に、黙々とギターを振りかぶって頭部を打ち据える様子を見て、ならず者達は大きく旋回し別のルートを探し始めた。
 だが、先程までバリケードが張られていなかった箇所までいつの間にかキッチリと仕上がっている。
 立ち並ぶ防壁をなぞる様に走行していたバイクが、再び派手に吹き飛ぶ。
 それは、掘り込んだ地面の中に迷彩塗装で身を隠した雪白と、上空で待機していたアルハザードの二人による狙撃だった。
 見えない敵からの攻撃に、軽いパニックを引き起こすならず者達。
「おい! あそこだ!」
 一同は、張り巡らされた防壁の一部に別の隙間を見つけて、そこに向かい始める。
 当然、狙撃や迎撃の予想はしていたが、辺りを見回してもその様子は無い、と判断した上での強行突破だった。
 そして、ならず者達の予想は的中した。そこには、狙撃や迎撃は皆無だったのだ。狙撃や迎撃は、だが。
 カチ。
 ならず者達がバリケードに差し掛かった辺りで小気味良い音が鳴り、小規模な爆発が起きた。それと同時に、一帯にしびれ粉が飛散する。
「ゴフッゴハッ! 何だこりゃ……ぁ」
 しびれ粉を全身に浴びて次第に身体の動きが鈍くなってきたならず者を、グロリアーナが捕縛して村の片隅に転がした。
「クソ! 一回退くぞ!」
 その様子を見ていたならず者達は、適当に銃弾をばら撒いてバリケードに穴を開け、後退していった。

 ――僅かの間、村に静けさが戻る。