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輝く夜と鍋とあなたと

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輝く夜と鍋とあなたと
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リアクション

「あ、ちょっと待ってて!」
 カマクラへと向かう途中、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は紅月のカマクラの中へと入って行った。
「どうしたんだ?」
「チョコフォンデュやるって聞いてたから差し入れ置いて来たの」
「ふ〜ん」
 疑問を口にした夏侯 淵(かこう・えん)にルカルカが答えた。
「あ、ちょっと待ってて!」
「またかよっ!」
 今度はなんだろうと、ルカルカを見ているとキョロキョロと辺りを見回していた神楽坂 紫翠(かぐらざか・しすい)橘 瑠架(たちばな・るか)に話しかけていた。
「どうしたの?」
「えっと……その……カマクラがもういっぱいみたいでして……」
 紫翠が真っ赤になり小声で答える。
 気があるのではなく、人と話すのが恥ずかしいようだ。
「どうしようかと思っていたのよ」
 瑠架が補足をした。
「そっかぁ……じゃあさ! ルカ達と一緒に鍋しない? きっとリアちゃんも喜ぶだろうし」
「でも……良いのですか?」
「うん!」
「お世話になりますね」
 紫翠にルカルカが元気に答えると瑠架がにこりと微笑んだのだった。

 しばらく歩き、カマクラに到着すると、中にはもうリアトリス・ウィリアムズ(りあとりす・うぃりあむず)スプリングロンド・ヨシュア(すぷりんぐろんど・よしゅあ)がいた。
「リアちゃん〜。途中で一緒になったこの2人も一緒で良いかな?」
「うん! 宜しくね!」
 ルカルカに紹介され、紫翠と瑠架がぺこりと頭を下げると、リアトリスが笑顔で挨拶をした。
「宜しくな」
 狼の姿のままのスプリングロンドも挨拶をする。
「そっちのかわいいおチビちゃんも、な」
「おチビちゃん言うなー! それに可愛いって俺は男だ! 嬉しくない!」
「え……!?」
 淵の言葉にルカルカ以外がびっくりした顔をする。
「ご、ごめん。僕、てっきり……」
「女じゃなーい!」
 リアトリスが謝ると懸命に否定する。
「リアトリスだって、女性みたいじゃないか!」
「えっと……男性なのですか……?」
「うん、僕は男だよ」
 淵の言葉に驚き、紫翠が聞くとリアトリスは頷いた。
「えーっと……女性だよね?」
「その……男です……」
「あ、私は女よ」
 リアトリスが恐る恐る聞くと、紫翠が男で瑠架の方が男だと言う事が判明した。
「……なんか、ルカと狼さん以外は間違われる人が集まっちゃったみたいね」
「そうみたいだな」
 ルカルカとスプリングロンドは苦笑いをした。
 挨拶が済んだところで鍋作りが開始となった。
 人数が増えたこともあり、鍋は2種類、淵が作るキムチ鍋と紫翠が作る寄せ鍋だ。
「ルカは料理苦手だから味付けは任るね。味見と食べるのは任せて♪」
「ルカ。苦手ってのは、もう少しマシな物を作れる事であろう」
 淵は家で下ごしらえしてきたホルモンや野菜、つみれを鍋の中に入れながら言う。
「淵のバカタリ。ちみっこー」
「ちみっこ言うな」
 ルカは頬を膨らませ、スプリングロンドを撫でに行ってしまった。
「淵が酷いんだよ」
「そうか」
 撫でられると、スプリングロンドは尻尾をVの字に振る。
「ちみっこ言う、ルカの方が酷いだろうが!」
 抗議した淵を見て、ルカルカが笑うと、他の人達も声を出して笑った。
 そうこうしているうちに2種類の鍋が完成した。
「なんか寄せ鍋の量多いね」
「ああ、私がよく食べるから」
「そうなの?」
 質問したリアトリスは不思議そうに細い体型の瑠架を見た。
「やせの大食いって言われるわね」
 ははっ、と瑠架は笑う。
 とにもかくにも、鍋パーティーは始まった。
「狼さん、器用だね! その姿のままキムチ鍋食べるなんて!」
「慣れているからな」
 ルカルカは感心すると、スプリングロンドの中身がなくなった器にお代わりを入れる。
「すまない」
 お代わりを入れると、ルカルカはもふもふっとスプリングロンドの背中を撫でた。
 撫でられ、気持ち良さそうに目を細めた。
 こちらはリアトリスと瑠架。
 だいぶ、話しが盛り上がっているようだ。
「瑠架さんは、女ものは着ないの?」
「着たくないわけじゃないんだけど、この長身でしょ? サイズがないし、似合わないと思うから……」
「サイズはわかんないけど、似合わなくはないと思うよ?」
「そ、そうかな?」
 少し照れながら、頬をかいた。
「あそこはなんだか良い雰囲気なんじゃないか?」
「……えっと……そうですね……あ、お代わりいりますか?」
「ありがとう」
 紫翠は淵にお代わりをよそった。
 楽しく鍋の時間は過ぎ、あっという間に食べきってしまった。

 食べ終わると、リアトリスと瑠架がコタツを脇に寄せ、ルカルカと淵で床にもとから敷いてあるビニールシートの上にもう1枚ビニールシートを敷き、毛布を敷いて、敷布団にしてしまった。
 紫翠とスプリングロンドで寝袋のチャックを下ろし、広げて掛け布団の用意。
 枕はなんとスプリングロンドのもふもふした体だ。
「じゃ、お休みなさいー! と、見せかけて! 夜はこれからだよ! 恋バナ!!」
 ルカルカは楽しそうに笑った。
「……えっと……ちょっとだけ外で冷気に当たってきますね……先に布団に入っててください……寒いですから」
「ん、了解! 早く戻って来てねー!」
 紫翠は少し、このメンバーに慣れてきたようだ。
 口数が増えている。
「あ、ねね!」
「どうしたの?」
「この間、空京で新しいスイーツのお店見つけたの!」
「どんな?」
「それがね! ケーキで色んな可愛い物を再現してるお店なの! くまさんとか、薔薇とか……あと……面白いのではゲーム機とかお風呂とか!」
「すごいね! でも美味しいのかな? 見てみたい気は凄いするけど」
 ルカルカとリアトリスが会話をしていると、いつの間にかスプリングロンドはうとうとしだしていた。
「御主は安心できるな」
 こっちも眠いようだ、淵が尻尾をなでながら言った。
 そのままルカルカ達の会話を子守唄に2人はさっそく眠ってしまった。
「あれ? 瑠架さん?」
「あ、いないね! 紫翠ちゃんを見に行ったのかな?」
「心配だし、ちょっと外見てくるね」
「了解ー! 待ってるから早くねー!」
「うん!」
 リアトリスが外に出ると、丁度、星を眺めて絵になっている紫翠と、それを見ている瑠架を見つけた。
「風邪ひいちゃうよ?」
 リアトリスは持ってきた上着を瑠架に掛ける。
「ありがとう。翡翠も風邪ひいちゃうわね」
「絵になってるから思わず見惚れちゃうよね」
 瑠架が見惚れていて声を掛けるのを忘れていたのを感じていたようだ。
 翡翠に声を掛け、カマクラに3人で戻る。
 冷え切ってしまった体を温めるように、みんなで団子状態になって眠ったのだった。