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バレンタインに降った氷のパズル

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バレンタインに降った氷のパズル

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 そうしてチョコ作り教室で、ひっそりと、牛歩ながらもイランダと北斗の仲が進展していた頃、テスラによる恋人達へ送る唄が響き始めた。

「あーあ。僕もチョコバーなら食べたんですけどね」
 眼前で食している初花の様子を一瞥しながら、勝彦がそう呟いた。
 一仕事終えた彼らは、チラシに載っていたオブジェの見学に、夕暮れ時になって漸く訪れたのだった。
「あたしは純正品ってすばらしいと思うけどねぇ」
 そんな朝子の声が、色濃くなり始めた闇の中へと熔けていく。唄を耳にしながら、朝子が静かに目を伏せた。

 だから彼女は、すぐ傍を通り過ぎていった、ある旅人の姿を目にする事はなかった。
 それは嘗て、そして今でも冬の女王と呼称される、気ままなメイガスの女性だったのだけれど、彼女がアリス達の元へと姿を現すまでには、まだ数刻ある。
 それは、ある一日の終わりの出来事だった。

こうして無事、AMOR CAFEのイベントと、恋人達の一時は約束されたのだった。
 全ての恋をする皆に、倖せな日が訪れる事を。
 祈るように、会場ではテスラの流麗な歌声が響き渡る。

 次に朝子が瞼を開ける頃には、それはイベントの終わりであり、新しい日常の始まりを告げるのだろう。
瞼が映すのは、ただの優しい暗闇だった。それは本日の終わりでもある。
「僕にも平穏なバレンタインがこないかな」
 勝彦のそんな声は、雪の嘶きとテスラの歌声により、霧散していく。
 だから勝彦もまた、目を伏せたのだった――全てを覆い隠すように、舞い降り始めた雪の中で。


(終わり)

担当マスターより

▼担当マスター

密巴

▼マスターコメント

はじめまして、密巴です。
この度は、ご参加いただき誠に有難うございました。
また読んでくださった皆様に対しても、本当に感謝の念でいっぱいです。

少しでも楽しんでいただければ幸いです。
書いていた私はといえば、とても楽しくて仕方がありませんでした。
一体何が起きるのだろうと、頂いたアクションの数々を拝見しながら、心を躍らせていたのが実情です。

至らない点なども多々あるとは存じますが、ご参加及びご閲覧頂きましたこと、本当に御礼申し上げます。
この度は、誠に有難うございました。
またご縁がありましたら、何卒宜しくお願いいたします。