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先生、保健室に行っていいですか?

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先生、保健室に行っていいですか?
先生、保健室に行っていいですか? 先生、保健室に行っていいですか?

リアクション

 どうしたものかと考えていると、隣のベッドに刀真と呼ばれていた男子生徒が横になったようだ。
 もぞもぞと動く気配を感じつつ、状況打破を試みようとするがルオシン達の願いは届くことはなかった。
「さてっと……玉藻、何しているの?」
「何、この白衣なるものを一度着てみたかったのじゃ。ふむ、中々しっくりくるではないか」
「ちょっと、あんまり変なことしないでよ?えっと使った備品は……」
「ごほっごほっ、失礼しま〜す……」
「あれ、誰か来たみたい……玉藻、お願い相手してあげて。今ちょっと手が離せないの」
「あぁ、って沙幸ではないか?何じゃ、顔が赤いではないか?」
「あれ、玉藻さん?先生っているの?」
 月夜が使った備品の確認をしている時、保健室に誰かが訪れる。
 暇していた玉藻が出迎えると、久世 沙幸(くぜ・さゆき)が立っていた。
 具合が悪そうで顔を紅くして虚ろな目で焦点が定まっていないようで、ふらふらとよろついている。
「ふむ、かなり熱があるの。よし、我が治療してやろう。そこのベッドに座れ。月夜、氷枕を用意してくれ」
「ちょっと、勝手に治療する気?あんまり変なことしたらだめよ、今持っていくからちょっと待ってて」
 玉藻はとりあえず具合の悪い沙幸をベッドに腰掛けさせる。
 月夜に氷枕を用意するように指示した後、沙幸の治療に取りかかる。
「かなり体温が高いようじゃの。よし、よく効くマッサージをしてやろう!」
「ふぇっ??」
「とりあえず服をはだけさせてもらうぞ、肩から胸にかけて揉んでいくのじゃ」
「ふにゃぁっ!?くっくすぐったいのぉ〜……」
 玉藻は沙幸の合意を基にと服をはだけさせて、怪しげなマッサージをする。
 最初は肩をゆっくりと揉んでほぐれた後、胸を優しく揉みし抱く。
 傍から見ればただのセクハラ行為にしか見えない。
 しかし頭がぼやけている沙幸は抵抗すること叶わず、玉藻の思うがまま体を自由にされてしまう。
「玉藻、持って来た……って何してるのよ!?」
「マッサージじゃよ、新陳代謝を上げるものじゃ。中々聞くのでなこれは」
「だからってそれは……」
「月夜?どうかしたのか??」
「!!刀真、見ちゃダメ!」
 月夜が玉藻のマッサージを目撃すると、無抵抗な少女が痴女に襲われているとしか見えなかった。
 しかし玉藻は悪気があってやっているわけではなく、あくまで沙幸のためを思ってしているのだ。
 そこへ寝つけずにいた刀真が何事かとカーテンを開けようとしたため、月夜は外側からカーテンを飽かないように押さえる。
 何が起こっているのだろう、と不思議に思う刀真とその隣にいる二人。
「沙幸さ〜ん?お加減はいかが……た、玉藻さん…??」
「ん?美海か、どうかしたか?」
「なっなっな……!!」
「美海?丁度よかった、玉藻を……」
「なんて面白そうなことをしていますの!!」
 追加で現れたのは藍玉 美海(あいだま・みうみ)、沙幸のパートナーだ。
 扉を開けた先には玉藻が沙幸にセクハラしているという何ともショッキングな場面に出くわしてしまった。
 月夜は玉藻を止めるように美海に頼もうとするが、彼女はかえって玉藻のしていることが面白いと評価してしまった。
「なんですの、一体何をしていらっしゃるのかしら?」
「勘違いするでない、マッサージじゃ」
「マッサージ……でしたら胸は私が揉みますわ!玉藻さんはほかの部位を!」
「そうか?助かるの、意外と疲れるのでな」
「って!!あなた達いい加減にしなさい!」
 普段から沙幸には過度なスキンシップを取っている美海にとってこれほど絶好な機会はないと勢いづく。
 胸は代わりに揉むという美海の言葉を、一言返事でお願いしてしまう玉藻。
 このままでは何だかとんでもない場面に出くわしてしまう、と考えている月夜だが彼女の願いは届かない。
 いや、この場にいる全員の願いが打ち砕かれたのは次の瞬間だった。
「さて、これで後は発注すればいいですね……あら?保健室に誰かいるんですか……?」
「ほらほら、気持ちいいですか沙幸さぁん?」
「ん?おぉ、泪先生ではないか。待っておりましたぞ」
「そうそう泪先生……って、卜部先生??」
 楽しそうにに焼けながら沙幸の胸を揉んでいた美海の前にいた玉藻がとある教師の名を呼ぶ。
 美海は一瞬分からなかったものの、後ろにある気配で恐る恐る後ろを振り向く。
 紫を基調としたスカートタイプの女性用スーツに、頭に可愛らしい帽子を乗せた卜部 泪先生がそこにはいた。
 突然の登場に言葉を失くしてしまう美海と、気にせずマッサージを続けている玉藻。
 泪の表情がだんだんと堅くなり、隣にいた月夜がカーテンを持って隠していたものを確認する。
 そこには何が起きていたか分からなかった刀真がキョトンとした表情を浮かべていた。
 そして刀真の遠く隣にあるベッドの敷居を開けて、盛り上がっているベッドから掛け布団を奪う。
 そこには明らかにあんなことをするための姿勢になっているロオシンとコトノハがいた。
 全員が全員、気まずい空気に満ちていく。
 そんな中、泪は静かに口を開く。
「一応、聞いておきましょうか。ルオシンさんたちは何をしていたのですか??」
「ま、マタニティエクササイズをしていました!」
「た、胎動を感じていたんだ!」
「そうですか。それでは、あなた方は?」
「怪我をしたので、治療をしたくて……」
「その付添いです……」
「我もじゃ。その時に沙幸が来たのでな、こうしてマッサージを……」
「わたくしもですわ!決して、あら玉藻さんずいぶん楽しいことしていますのねグフフ……!なんて考えておりませんのよ!」
「……」
 三者三様も良いわけを聞いて、黙りこむ泪。
 そっと、買ってきた荷物を作業台に置いて扉に向かう。
 静かだった。
 鍵を掛けて、出入りを困難にする。
「さて、みなさん覚悟は良いですか?」
「……え、いや、何の?」
「保健室は淫行する場所ではないのですのよぉ!!」
 明らかにそれ目的だった者、悪気などなかった者、知らぬ間に怒られる羽目になってしまった者と三つに分かれた。
 刀真と沙幸に関しては、何が何だか分からないまま罰当番まで受けさせられることになってしまった。
 単純に、タイミングが悪かった。
 そうとしか言いようがなかった。

 何だか大変なことがあった日の放課後、泪は一人保健室で雑務をしていた。
 幸いにも部屋の片づけに関しては昼間に全て片付けさせたので、彼女は楽ができた。
 後は書類を整理すれば帰宅できるということで、必然とペンが早くなる。
 残り間近、というところで保健室を尋ねる生徒が現れた。
「失礼します、あの……卜部先生いますか?」
「あら?はい、どうぞ」
 ご丁寧に自分を指名する声なので、答える。
 扉を開けた先にはエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)が少し影を落とした雰囲気で立っている。
 怪我ではなく、カウンセリング希望と直感で判断した泪はすぐにエヴァルトに腰かけるように言う。
 どうやらかなり思いつめたような表情なので、余程深い悩みなのかと心配する。
 彼は暗い表情のまま、その重い口を開いた。
「すみません、どうしても誰かに聞いてもらいたくて……」
「構いませんよ。で、どうしましたか?」
「パートナーの事で……」
「確かミュリエルさん、でしたわね。喧嘩でもしたんですか?」
「いえ、違うんです。いやもう、なんて言うか……」
「……?」
「俺、そんなにロリコンに見えますか……?!」
 思いつめた表情でエヴァルトが泪に詰め寄る。
 彼のパートナーミュリエル・クロンティリス(みゅりえる・くろんてぃりす)との関係について悩んでいるようだった。
 話を聞くと、普段からシスコンやらロリコンやらと周りから散々言われ放題だと話す。
 初めは言い返していたが、段々疲れしか感じなくなり反論するのも面倒くさくなってしまったようだ。
 それでもなお周囲はいまだにそうからかい続けるので、どうしたらいいのか分からないという。
「確かに、ミュリエルは大切な妹分です。種族だってアリスですが、あいつはパラミタが出現した頃に俺のところに来たんです!」
「ええ、それで?」
「実は俺、二卵性の双子の妹が地球にいるんですが、妹は剣の腕は俺より才能あったりして少し劣等感を抱いたりしていたんです」
「なるほど、それでは……」
「なんて言うか、もう少し可愛げがあったり、なんて考えたこともありましたけど、最近になってこんな感情を持ったわけじゃないんです!!」
「それで、あなたはどうしたいのですか?」
「ロリコンじゃないことを分かってほしいんです!!」
「そうですか……」
 こうした質問はよくあることなのだ。
 パートナーを持つことによって親密な関係性を抱くことによって、今までとは違う自分に目覚めたりする者も大勢いる。
 同性に対して恋慕の情を抱く者、異種のもの、そして年の離れた者、様々だ。