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【S@MP】シャンバラ復興チャリティー音楽祭

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【S@MP】シャンバラ復興チャリティー音楽祭

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 御神楽音楽堂、楽屋。
「……ってことで、まあ、会場で戦闘は危ないから生中継でもと思うんですけど、どうでしょう?」
「チャリティーコンサートを開くのはわかった。近くの山にゴーストイコンが出るのも聞いたよ。だからといって何で二つを一緒にやろうとするんだあんたたちはっ。まったく校長はこのことも知ってるの? ばれたら大目玉だよっ!」
 蘇芳 秋人(すおう・あきと)フレイ・アスク(ふれい・あすく)の言葉に怒鳴る。
「いや、だからこの会議で決めてから校長に相談しようと思ってたんだけど……」
 フレイはしょぼーんとなる。
「プロパガンダ自体を否定する気はありませんが、観客の安全を蔑ろにし怪我をさせちゃえば逆効果ですよね。シャンバラ人も地球人もイコンの前では無力な「人」です。イコンの攻撃を食らえば死ぬただの人です。出来れば戦闘シーンも生中継させたくありません。戦闘機のイメージを植えつけるだけでメリットないですし」
「えー、でも今回の戦闘はショーみたいなものでしょう? せっかくウサちゃんを痛イコン仕様にしたんだし、目立たせたいな」
 葉月 可憐(はづき・かれん)の言葉に対して葦原 めい(あしわら・めい)がそう言うと、
「音楽祭全体はシャンバラ全土に放映するんやろ? 僕らは裏方としてカメラとかやりますけど、たしかにコンサート会場を戦場にするのは観客に対しての安全確保の問題もありますし生中継に反対する人がおるんのもわかる。でも、反帝国、反寺院、そして復興のイメージのためにも敵を倒すのを見せるのはいいと思いますのや。やりたいって人もおることですし。で、生中継がまずいんやったら録画、編集して上映ってのはどうやろ?」
 大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)が折衷案を提案する。
「音楽祭自体は各報道やマスコミに根回しを行って大陸全土に周知させるようにするつもりだ。最初はコンサートの上映権を売りつけるつもりだったが、そう言うのなら、戦闘もコンサートも録画して編集してテープを買ってもらうのがいいかもしれんな。それから、大陸の民が垣根を越えて手を取り合い、共存共栄できる未来を迎える事を願う。反鏖殺寺院を過剰にPRしたり、攻性の高いプロパガンダは好まない。平和路線を希望する」
 ガイウス・バーンハート(がいうす・ばーんはーと)がそう言うと、アポロン・サン(あぽろん・さん)が同意した。
「そうですね、私としても音楽祭でまた不測の事態が起こると困るので、生放送はやめたほうがいいかもしれないと思います。校長の話によるとミレリアがゴーストイコン討伐に参加するそうですし、ミレリアを取り戻そうとする寺院の勢力がやってこないとも限りません」
 と、そこにコリマ・ユカギール(こりま・ゆかぎーる)とミレリア・ファウェイ、リリア・シュレイン、設楽 カノン(したら・かのん)、そして強化人間部隊を伴って入ってきた。
(そのミレリアを連れてきた。念の為に注意しておくがミレリアが鏖殺寺院の幹部だったことは一部のコントラクターしか知らん。逮捕され、収監されたことも知らん。民衆にとってはミレリアはアイドルなのだ。決して表沙汰にしないように)
「了解っす。ミレリアちゃん、復帰できそうなのかな。ちょっと道を間違えちゃったけど、俺は今でもミレリアちゃんのファンっすよ。
 ミレリアちゃんと一緒に飛べるなんて光栄っすよ。皆ミレリアちゃんが戻ってくるの待ってるっすよってね。あと、出来れば後でサインを。
 さて、ミレリアちゃんの再出発にケチつけさせる訳にはいかねぇから任務は成功させないとな。頑張ろうぜ、昇」
 デビット・オブライエン(でびっと・おぶらいえん)はそういうが、心のなかでは別のことを考えていた。
(なんてな。恩赦餌にされて尻尾振って擦り寄ってくるとか、これだから女は信用できねぇ。寺院の屑が…その罪の償いをする前に、楽には死なせねぇよ)
 彼は寺院も女も嫌いなのだ。表面的には女好きでそれを装っているが、実際には女を信用していないので遊んで捨てるだけである。
(デビット・オブライエンだったか……そう思うのは構わんが、それを表情にも行動にも出すなよ)
 コリマが念話でデビットに語りかける。
(校長、心を読んだっすか!? 卑怯ですよ!)
(私は意識していなくても皆の思念が心に入ってくるのでな……特にお前のように強い意志を持っていると読み取りやすくなる)
(わかりました)
(彼女が鏖殺寺院に組みしていたのは事実だが、やむにやまれぬ事情があったのも事実だ。そこのあたりを履き違えるな)
(了解)
「どうしたデビット、難しい顔して」
 パートナーの笹井 昇(ささい・のぼる)が相棒を心配して声をかける。
「いや、なんでもない」
 デビットはバツが悪そうに言葉を濁した。
「そうか、ならいいんだが……」
「ミレリア、カノン、そして強化人間達……まあ、恩赦があるとは言えよく私たちの前に顔を出せたわね。一応受け入れるけど、後ろからズドーンって事だけは勘弁してもらいたいわね」
「あわわ……」
 葛葉 杏(くずのは・あん)がいきなりケンカを売るようなことを言ったので、パートナーの橘 早苗(たちばな・さなえ)が慌てる。
「ふん。あんたが、葛葉 杏ね。戦場ではお世話になったわね。まあ、安心して。私の故郷はアルコリアおねえさまのおかげで救われたんだから、おねえさまの顔に泥を塗るようなことはしないわよ。まあ、今まで敵だった相手をいきなり信用しろってのも無理な話だろうけどね」
「私も撃墜されて入院するはめになったので、いきなり仲良くっていうのは無理ですけど……その、よろしくお願いします」
 早苗がそう言うと、リリアが会話に入ってきた。
「ああ、あなたが貧乏で強化人間手術を受けた人ね。私にあんな強い言葉を言った人には見えないわね。人は見かけによらないのね。リリア・シュレインよ。私はこれでも日本が好きなの。私たち黄色人種の母親的存在だったから……」
「そうですか……まあ、よろしくお願いします」
 早苗がそう言って頭を下げたところで、カノンが言葉を発した。
「ねえ、涼司くんはどこ?」
 それに対して、山葉 聡(やまは・さとし)が答えた。
「あいつはゴーストイコン退治には参加しない。コンサートには客としてくるそうだけどな」
「ふうん……残念。あ、レオ。元気?」
 カノンは会議の会場に平等院鳳凰堂 レオ(びょうどういんほうおうどう・れお)を見つけると、表情を明るくして手を振った。それを見て強化人間部隊が忌々しそうな顔を見せる。
「あ、カノン……元気だよ。僕はカノンの騎士として君を守る。戦場でもね。そうだカノン、一緒に歌わないかい? せっかくS@MPもいるんだし」
「あ……私が? えっと、アザゼルたちと一緒なら……」
「カノン様、我らに見世物になれと?」
「でも、みんなと歌えば楽しいんじゃないかな。涼司君にも見せたいし……」
「おい、アザゼル、カノン様に逆らうな。それに、せっかく命を助けられて身分も保証されたのだ。裏切り者の我らがこの先生きて行くためにも、なんとか融和していかねばなるまい」
 グリモワールがそう言うと、アザゼルは頭を振って
「それもそうだな。諸君、よろしく頼む。ただし、カノン様に危害を加えるものがいたら我らは容赦せんぞ」
 と牽制した。
「大丈夫だよアザゼル。ここにそんな性根の腐った人はいないよ」
 レオがそう言うと、アザゼルは
「そうであることを願う」
 と短く答えた。
 そうこう会話している間に、ミレリアは見知った顔を見つけた。
「あ、シーマさん、ハロハロ。あなたがいるってことはアルコリアおねえさまもいるの?」
「久しい、という程でもないか。アルよりミレリアの警備を命じられている。都合が悪くなければ許可を」
「それはいいけど……おねえさまは?」
「アルの居場所は知らん。ボクがいるからそう遠くはないだろうが……そういえばアルから手紙を預かっていたな」
 シーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)の手紙を取り出しそれを開く。
『お礼は体でいいよ』
 ……
 …………
 ……………………
 ビリビリ。
「あ、ちょっとなんで破くのよ」
「そんなモノは知らん。アルめ……」
「ふふ……まるで漫才だね」
 夏野 夢見(なつの・ゆめみ) が笑う。
 二人のやりとりで場内の緊張が一気に薄れていた。シーマは真面目な性格ゆえに三枚目を演じることもあるようだった。
「ねえ、強化人間のみんな、ゴーストイコン退治のあとはコンサートを見に行かない? あと、一緒の部隊を組まない? 。上層部に翻弄されてばっかりだけど、せめていい思い出にしてあげたいよ」
「夏野だったか……申し出はありがたいが貴君の鋼竜と我らのイーグリットカスタムとでは機体特性が違う。我らはカノン様を含めた強化人間部隊だけで隊を組んだほうがいいかと思うが……」
 ルシフェルがそう言うと、レオが
「まあまあ、ひとつの部隊が全部同じ装備という規則はないさ。見たところ彼女のイコンは遠近両用のようだし、突撃する際の後方支援でもやってもらえればいいんじゃないかな?」
「ふむ……それもそうか。それから、コンサートは我らも参加するつもりだ。平等院鳳凰堂の策略でカノン様が歌われるようなので、我らもバックコーラスぐらいはしよう」
「そっか、じゃあさ、私が御神楽音楽堂の特等席を用意しておくから、出番が終わったらみんなで一緒に見ればいいよ」
 そう言ったのは小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)で、それに対して強化人間の一人マギウスが美羽に尋ねた。
「気持ちはありがたいが特等席など手に入るのか?」
 と。
「うん。御神楽音楽堂は蒼空学園の設備。そして私は蒼空学園生徒会副会長だよ。特権乱用になるかもしれないけど、みんなのために特等席を手に入れておくよ」
「そっか、ありがと美羽さん」
 カノンが礼を言う。
「いいのよ。カノンは涼司と一緒に音楽祭を楽しむといいよ。加夜さんも一緒にね」
「あ、うん」
 突然話をふられた火村 加夜(ひむら・かや)が慌てて返事をする。
「……あなたが涼司君の彼女さん?」
 カノンは加夜をまじまじと見る。
「あなたになら涼司君を取られても仕方が無いわね……美人すぎ。ずるい」
「そ、そんな……それに、私が涼司君の隣をたまたま射止められたのは、色仕掛けとか、そう言うのじゃないよ」
「わかるけど……でも、やっぱり美人。それに優しそう。加夜さんって言ったっけ? あなたも私にいろんな言葉をかけてくれたよね。助けてくれてありがとう」
「うん。カノンちゃんとは、いつか友達になりたいな……」
「ねえ、カノン。涼司はカノンのことを妹として大切な存在って言ったよね。ってことは涼司の恋人の加夜さんは、あなたのお姉さんみたいなものよ」
「……そうだね。じゃあ、加夜さん、お姉ちゃんって呼んでいい? 涼司君のことはこれからお兄ちゃんって呼ぶ」
「いいの?」
「うん。私にはアザゼルたちやレオがいるし、私はもう独りじゃない。花音・アームルートももう憎くない。洗脳の機械が壊れたときに、私の過去も壊れたの。これからは今までのことを全部捨てて、新しい自分をやり直す」
「大丈夫かい、カノン?」
 レオが心配そうに尋ねる。
「大丈夫だよ、レオ。あなたも、助けてくれてありがとう」
「うん」
 そうして会話が弾んでいるところに、茅野 茉莉(ちの・まつり)がコリマ校長に声をかけた。
「校長、ミレリアと音楽祭で共演したいのですが、許可をいただけないでしょうか?」
 そうすると赤城 花音(あかぎ・かのん)も同様に許可を求めた。
「ボクたちS@MPもミレリアさんと共演したいです。お願いします」
(……まあ、いいだろう。ただし、彼女をメンバーに加えることによるコントラクターとの摩擦は自分たちで解決するように)
「了解です」
「わかりました!」
(よいか、ミレリア? 共演するなら刑期を5年短くしよう)
「刑期の減免に釣られるわけじゃないけど、OKよん。あたしも色々と歌いたいし」
「ほな、そろそろコンサートの打ち合わせに入らんか? 参加するメンバーと曲目と使用する楽器を申請して欲しいんや。スケジューリングの都合上」
 音楽祭の監督を自認する泰輔がそう提案した。
「そうじゃの。では、一旦休憩してから打ち合わせに入ろうか」
 泰輔のパートナーの讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)がそう言うと、休憩に入った。そして、打ち合わせが続く。