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第七章 悪化

 しょりしょりと、三月がリンゴの皮をむく音がする。
「元気になったら、どこか遊びに行きたいね。サニーさんが行きたい所はどこ?」
「……」
「遊園地とか、どうかな?」
「……りがとう」
「サニーさん?」
「みつき、さん。みんなも……どうも、ありがと」
「そんな事言わないで。皆、サニーさんの笑顔が見たくてやってるんだから」
 そっとサニーの頭に手を置く三月。
 だが、触れてみてそのあまりの熱の高さに眉をしかめる。
「……いい匂いだね。もうじきおいしい昼食ができるよ。デザートもある」
 熱の事に触れたくなくて、話題を変えてみる。

 台所では少し前からずっといい匂いと、おいしそうな音が充満している。
 セレンフィリティ達が大冒険の末やっと手に入れた赤い実。
 フリフリかつ攻撃的なエプロンをつけた騎沙良 詩穂が、お菓子屋で聞いたレシピを元に、それを使って赤い実のケーキを再現していた。
 隣では、ルカルカ・ルーとダリル・ガイザック、そして笹奈 紅鵡が協力してチャーハンを作っている。

「サニーちゃん、出来たよ!」
 筑摩 彩が出来上がったばかりのワンピースを持って飛び込んできた。
 サニーの目の前でひらりと広げるそれは、コットンのワンピース。
 シンプルだが、可愛らしい作り。
 ベッドに横になっている少女がこれを着ればとても似合うだろうと誰もが思える、ぴったりなデザイン。
「ほら、見て! サニーちゃんのイメージで作ったんだ。早く元気になって、これを着ている所を見せてね」
「素敵…… とても、嬉しい。でも、せっかく作ってくれたけど、あたし、もうこれを着ることはできないかも……」
「何言ってるの! そんな悪いイメージなんてポイだよ、ポイ! これ着てくれなきゃ許さないんだから!」
「ごめんね……その服は、弟のレインに着せてあげて……」
「これ女物なんだけどー!」
 彩の声にも、反応しなくなるサニー。
「サニーちゃん、ちょっと」
「大丈夫ですか、サニーさん」
 柚と雅羅が駆け寄ってくる。
「サニーさん!」
 柚の手がサニーに伸びたその時。
 ばたりと、扉が開かれた。

「遅くなってすまなかった! 姉さんの薬を持ってきた!」
「姉貴ー、帰ってきたぜ!」
「……レイン……クラウ、ド……!」
 センス山に行っていた一行が帰ってきた。