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第八章 完治

「さあ、薬だ! サニー、俺様と付き合おうぜ!」
「こんな時に何言ってるんだ!」
 サニーの元に走って行くと手を握るソルを、レインが怒って引き離す。
「薬候補、こんだけ全部揃ったんだけど、どうしたらいいのかなぁ?」
 怒るレインに代わって、北都が医者に質問する。
「おぉ、すばらしい! これだけあればすぐに完璧な治療薬ができるはずだ」
 医者は薬候補を受け取る。
 キック鳥の羽の付け根部分をすり潰し、ニオの木の実を一かけら混ぜ、ミー豹のヒゲを刻み、ショク草の根を刻み、そして最後にミルミル草の花の露で混ぜる。
「できた! これを飲ませればたちどころに病気は改善するはずだ」
 完成した薬を震える手でサニーに飲ませるレイン。
「ん……」
 それは、劇的な変化だった。
 青白かった少女の顔が、みるみるうちに薔薇色に染まる。
 生気のなかった瞳に、輝きが戻ってくる。
「姉さん!」
「レイン……クラウドも。そしてみなさん……どうも本当にありがとう」
 まだ弱々しいが、サニーの顔に笑顔が浮かんだ。
 それは、今まで無理に浮かべていたものではなく、本当の笑顔。
「さあみんな! ちょっと遅くなっちゃったけど、チャーハンができたよ! 皆の分も作ったから、よかったら食べてね!」
 ルカルカが台所から声をかける。
「食べ過ぎちゃ駄目だよ。デザートもあるんだから。ちゃんとその分は、お腹を空けておいてね」
 詩穂が慌てて付け足す。
 その手には、大きな大きな赤い実のケーキ。
「わ、どっちもおいしそう」
「大サービス、お茶もつけてあげるよ。お茶菓子と一緒に皆で楽しんでね」
 嬉しそうに微笑むサニーに、詩穂はにっこり笑顔を返す。
 そして、悪戯っぽく付け足した。
「でも、サニーさんにとって一番のお茶菓子は、クラウドさんだよね」

 窓の外では庭の木の花が満開になっていた。
 リクトが、鏡で光を当て続け、やっと今日咲き誇った花。
 家の中の騒ぎを余所に、美しく美しく。