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新年祝祭舞踏会~それより私と踊りませんか?

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新年祝祭舞踏会~それより私と踊りませんか?

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 第一章


 1

「当然っちゃ当然だが」
 シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)がLEDランタンの灯りに照らされた天井を見上げて口を開いた。
「コッチは静かだな」
「なんだか……底の知れない雰囲気がしますね」
 吸い込まれてしまいそうな程に黒い闇を、いくつにも枝分かれした通路を眺めてリーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)が答える。
 何かが隠されていそうで、何かが住んでいそう――そんなことを、探索の為に巨大ホールの地下に降り立った皆が思っていた。
 そもそも、何も無いのであればこんな空間は存在しない。この静かで暗い、空気の湿ったこの迷路自体が。
「ああ、早いところ『底』を覗かせて貰っちまおう」
 シリウスが暗闇に不釣り合いな快活な笑みを浮かべる。
「それじゃ、当初の予定通りに二手に分かれるぜ。翠、ソッチは大丈夫か」
「もっちろん、大丈夫なの」
 及川 翠(おいかわ・みどり)は答えながらも、光術で照らし出した壁面を背伸びしながら眺めていた。
「なんだろ、この感じ。何か物足りないの」
「物足りない?」
「地下だから、といえば元も子もありませんが……屋敷やホールと比べると、装飾や壁紙や――ちょっと質素ですわね」
 翠の後ろから壁を覗き込むシリウスに並んで、リーブラが呟いた。
「見た所、迷路とはいえ人が出入りしていた場所のようだし、照明もあるにはあるみたいね」
 機能しないみたいだけど――と、ミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)が質素なシャンデリアと壁に取り付けられた燭台に視線をやりながら言う。
「足りない――気がするの」
 翠が、両手の親指と人差し指で四角を造って、その窓を覗き込む。
 朧に浮かぶ通路の先には、壁から僅か飛び出た台のような空間があった。
「確かに、何かが置いてあった――飾ってあった、って感じだな」
 シリウスが何の気なしに視線を上げると、その壁に、ところどころフックが取り付けられてあるのが見てとれた。
 もっとも、それ以上に気にかかったのは天井近くに張り巡らされた蜘蛛の巣だったが。
「ねーねー、探検まだー? けも耳の女の子に早く会いたいなー」
「っと、そうだな」
 朗らか言い放ったアリス・ウィリス(ありす・うぃりす)の頭をシリウスが優しく撫でる。
 くすぐったそうに肩をすくめたアリスを微笑ましく眺めてから、【SIRIUSγ】のマッピングアプリを起動して『底の知れない』迷路の概要を参照する。
 事前調査で明らかになった部屋の位置をチェックしながら、未だ明らかになっていない全貌に思いを馳せる。
 何か厄介な施設じゃなければいいが――
「……ま、気になる事は多い位で丁度良いさ。兎に角、こうして探索を任された以上、やる事はキッチリやらねえと。校長達も忙しいみたいだしな」
「定期的に連絡を取るようにしましょう。マッピングデータなども共有できた方が心強いですし」
 銃型HCを確認しながらミリアが言う。
「オッケー。その方が安心できるな。それじゃ、ソッチは翠たちに任せるからな」
「うん! 頑張るの!」
「おう、健闘を祈る」
 シリウスが悪戯っぽく笑って、親指を立ててみせた。